一
お爺さんは煙草《たばこ》が好きで、いつもよく日のあたる椽側《えんがわ》で、ながながと煙草をふかしておりました。椽側の前には一本の年とった樫《かし》の樹があって、お爺さんの煙草の煙を見ていました。いいえ、お爺さんの方でその樫の樹を気永にながめていたのです。でも、お爺さんは煙草の煙が煙草盆からスウと、高くのぼっているそばで、よくコクリコクリと居眠りをしていましたので、やはり樫の樹の方でお爺さんを見ていたのでありましょう。
さてある日のことです。お爺さんはそうして居眠りをしていて、不思議な夢を見たのです。どこから来たのか、一人の子供がやって来て、その樫の樹の下の土をしきりに掘りかえしておりました。どうするのかと見ていると、子供はそこに大きな一つの穴を掘りました。穴が出来ると、どこから持って来たのか、色々なものを、子供はその穴の中にかくしました。そして穴の上には一枚の板を蓋にして、それに土をかぶせてしまいました。土をかぶせると、ふところから小刀を出して、樹の幹に何か彫りつけにかかりました。
「この樹の下に宝あり。」
久しくかかって、子供はその幹にこんな字を彫りつけたのであります。これを見ると、お爺さんは不思議でなりません、夢の中でもはずれそうな眼鏡をかけなおして、この樹の下に宝あり、と読みなおしました。
それから、フーンと、首をかたむけて考えこみました。ところが、不思議がって余り首をかたむけたものですから、その拍子にハッと眼があいてしまいました。が、眼がさめて見れば、樫の樹には何の変りもありません。でも、お爺さんはどうも不思議でなりませんので、この樹の下に宝あり、としきりにくり返しておりました。
さてある日のことです。お爺さんはそうして居眠りをしていて、不思議な夢を見たのです。どこから来たのか、一人の子供がやって来て、その樫の樹の下の土をしきりに掘りかえしておりました。どうするのかと見ていると、子供はそこに大きな一つの穴を掘りました。穴が出来ると、どこから持って来たのか、色々なものを、子供はその穴の中にかくしました。そして穴の上には一枚の板を蓋にして、それに土をかぶせてしまいました。土をかぶせると、ふところから小刀を出して、樹の幹に何か彫りつけにかかりました。
「この樹の下に宝あり。」
久しくかかって、子供はその幹にこんな字を彫りつけたのであります。これを見ると、お爺さんは不思議でなりません、夢の中でもはずれそうな眼鏡をかけなおして、この樹の下に宝あり、と読みなおしました。
それから、フーンと、首をかたむけて考えこみました。ところが、不思議がって余り首をかたむけたものですから、その拍子にハッと眼があいてしまいました。が、眼がさめて見れば、樫の樹には何の変りもありません。でも、お爺さんはどうも不思議でなりませんので、この樹の下に宝あり、としきりにくり返しておりました。