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日本むかしばなし集174

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:笛    一 夜はふけていた。何処《いずこ》ともなく激しい笛の音が起った。ピリピリ。とても激しい呼子笛の音である。それは
(单词翻译:双击或拖选)

    一
 夜はふけていた。
何処《いずこ》ともなく激しい笛の音が起った。ピリピリ——。とても激しい呼子笛の音である。それは一つ処《ところ》で起ったと思うと、非常な速さで他の方へ移って行った。直ぐ側で高く響いたと思うと、もう遠くでかすかに鳴っていた。笛の音が高いせいか。夜が静かであったせいか。耳をすませば、十分も二十分も遠くかすかに、絶え絶えに聞えていた。どうしたのだ。何が起ったのか。人々は床の中で耳をそば立て、暗闇の中で眼を見開いた。後から起る事件を待っていた。しかし笛の音が聞えなくなった後は、四辺《あたり》は闇が深いばかりであった。それから何時間たったであろうか。暁方《あけがた》のことである。笛の音は近づいて来た。そしてまた元の方へ駆け去った。不思議な呼子。奇妙な警笛。
トラックの運転手に聞かせて貰ったこの探偵小説の一節が、とても深く善太の頭の中に残って、どうしてもこの呼子が買って貰いたくてならなくなった。人の寝静まった深夜、不思議な呼子を吹いてみたくて堪らなくなった。だから、それからの夜々、善太はよく眼がさめた。何だか微《かす》かに遠く呼子の音がきれぎれに聞えて来るような気がする。そこで闇の中に目を開き、枕から頭を上げて、じっと耳をすませたりした。やはり笛の音はしていない。すると、彼は口の中でピリピリ——と云ってみる。そして耳を傾ける。何度聞いても笛の音はしていない。で、やっと彼は枕に頭をつける。そんな時、もし側の三平が眼をさましているものなら、何時であろうと構わず、彼は三平に話しかける。
「三平チャン、何が欲しい? ウン?」
「何も欲しくない。」
夜ふけに三平何が欲しかろう。しかし善太は云うのである。
「ボク、笛が欲しいや。呼子笛だ、ピリピリ——って鳴るんだぞ。」
このピリピリが大きいもので、側のお母さんが驚いて目をさまし、
「何云ってるんだ。」
と叱りつける。
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