とうとう善太は笛を手に入れた。その代り惜しい小刀をケンチャンにやってしまった。それでその笛は飛行機の絵葉書五枚、明治のおカネ五つ、小刀一丁と取り換えっこしたことになった。そんなに大切なものと取り換えた笛なんだ。こん度こそ大切にしなければならない、めったに吹いたりなんか出来ることでない。ウカウカ持ってる処をお母さんなぞに見つかろうものなら、きっと、気味が悪いなぞ云われて、取り上げられてしまうに決っている。だから、こん度は机の抽出しの奥深く紙に包んでしまい込んでしまった。でも、折々人のいない時を見て、大急ぎで出しては眺め、口にあててそっと吹く真似をして、また直ぐ大急ぎでしまい込んだ。でも、しまい込むと直ぐまた見たくなり、見ると口にあてたくなり、口にあてると、吹きたくなり、ソロソロ息を入れていると、ついピリピリ——と鳴りそうになって来て、あわてて机の抽出しにしまい込まなければならなかった。何にしてもよく鳴る笛だ。
善太はビワの木の下に立っていた。手には笛を握っていた。善太は考える。この笛を思うさま吹くことが出来たらなあ。そしてビワの木を見上げて考える。あの上の葉の間に隠れて吹こうかしらん。そうだ。それはいい思いつきだ。
ピリピリと不思議な笛の音が起って来た。夜のことだ。みんなはビックリして外に出る。笛の鳴る方へ集まってくる。しかし何処で鳴ったのか解らない。
「何処だろう、何処だろう。」
と、ウロウロその辺をさがし廻る。すると、またピリピリと笛の音だ。
「この辺だったらしい。」
と、ビワの木の下へ集まって来る。しかし何処だか解らない。みんなはまた行ってしまう。と、また笛の音だ。激しい、長い、いつ迄も続く音だ。
考えてみるだけでも、善太は面白い。
善太はビワの木の下に立っていた。手には笛を握っていた。善太は考える。この笛を思うさま吹くことが出来たらなあ。そしてビワの木を見上げて考える。あの上の葉の間に隠れて吹こうかしらん。そうだ。それはいい思いつきだ。
ピリピリと不思議な笛の音が起って来た。夜のことだ。みんなはビックリして外に出る。笛の鳴る方へ集まってくる。しかし何処で鳴ったのか解らない。
「何処だろう、何処だろう。」
と、ウロウロその辺をさがし廻る。すると、またピリピリと笛の音だ。
「この辺だったらしい。」
と、ビワの木の下へ集まって来る。しかし何処だか解らない。みんなはまた行ってしまう。と、また笛の音だ。激しい、長い、いつ迄も続く音だ。
考えてみるだけでも、善太は面白い。