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日本むかしばなし集181

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:どろぼうおばあさんのことを、いつも善太は、ただおばあさんおばあさんと呼んでいて、名前のことなど気がつかないでおりました。
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どろぼう

おばあさんのことを、いつも善太は、ただおばあさんおばあさんと呼んでいて、名前のことなど気がつかないでおりました。けれども、聞いてみると、やっぱり名前はありました。松山お米というのでした。お米と書いても、およねと読むのだそうであります。ふしぎな名前と思って、聞いてみますと、これには訳がありました。
おばあさんの生れたのは、万延《まんえん》元年三月、ちょうど井伊大老が桜田門の外で水戸の浪士に殺されたあの年あの月だったそうであります。あの頃は世の中がとても物騒で、町にも田舎にも方々にどろぼうが出たりしました。
それである夜のこと、おばあさんのお父さん松山甚七はふと目をさまし、遠いお寺の鐘の音を、何時《なんどき》になるかと数えていました。まだそのときはおばあさんは生れていなかったと言いますから、安政六年という年でありましょう。松山甚七は門の方で重い足音がするように思えて、床の上に起き上りました。こんなとき、昔の人は心持を静めるため、まず|きせる《ヽヽヽ》で煙草を吸うたものであります。それで甚七爺さんも手さぐりで火打ち石を取り上げ、カッチカッチとすりました。火打ち石には必ずほくちというものがついております。
石と石とすれ合って出る火花が、その|ほくち《ヽヽヽ》という布切れのようなものにつくのであります。そしてそれは枯芝についた火のように静かに燃え出すのでありました。で、甚七爺さんは今そのほくちから煙草を吸いつけ、パッパッと二三服吸うと、煙草盆の灰吹きの上でコッチコッチと叩きました。それでお爺さんは気が静まって、首を傾けて、外の物音に耳をすましました。どうやら米倉にどろぼうが入ったらしいのです。
お爺さんは立上って、敷居の上にかけてある弓張|提灯《ぢようちん》に手をかけました。けれども、その夜が九月の十七日で、まだ空にお月さまが照ってることを思うて、提灯をとるのをやめました。それから床の間にかかっている長い刀を手にとり、それを提げて玄関の方へ出て行きました。途中で、次の間にねているおばあさんのお母さんを起しました。
「おみね、おみね、ちょっと米倉を見てくるぞ。後で栄三を起しとけ。」
玄関に行くと、お爺さんはまず格子になっている玄関脇の窓の戸をあけました。そこから月の光に照らされた門の方を眺めました。すると、門の戸があいております。その上、ちらっとその戸の陰へ、隠れて行く人影が見えました。そこでお爺さんは大急ぎで、玄関の大戸を開きました。門の方へ駆け出しました。門を出てみると、どうでしょう、彼方へ沈みかけた月の下の田圃《たんぼ》道を、三人の男が駆けて行きます。しかも三人が三人とも一俵ずつの米俵を荷《かつ》いでおります。これを見るとお爺さんは思わず、右手を刀の|つか《ヽヽ》にかけて、五六間も勢いこんで駆け出しました。それから大変な大声でその三人のどろぼうにさけびました。
「こうらあ、どろぼうめい。米を盗むとは何のことじぁ。」
すると、どろぼうは思いがけない大声にあわてふためき、まるで今にも転びそうに、ひょろひょろして、互いにかち合ったり致しましたが、それでも俵を捨てもせず、まだどんどん逃げて行きました。そこでお爺さんがまたさけびかけました。
「こうらあ、米どろぼう。俵をそこへ置いとけえ。置かんと馬で追いかけるぞう。追いかけて、刀でぶち切るぞう。」
すると、どろぼうも正直ものと見えまして、一番後の男が俵を道に投げすてました。前の二人はしかしまだ俵を荷いで、とっととっとと逃げて行きました。それでお爺さんはまた大きな声で呼びかけました。
「こうらあ、まだ置かんかあ。置かんと、鉄砲で打ち殺すぞう。」
馬や刀に怖《おそ》れなかったどろぼうも、鉄砲は怖ろしいと見えまして、次の男がまた俵を道の上に投げました。それでも残る一俵だけは惜しいと見え、三人でそれを担ぐようにして、とっととっとと逃げて行きました。お爺さんはそれでまた声をかけました。
「こうらあ、こんなに言ってもまだ置かんかあ。命が惜しいのか、惜しゅうないのかあ。」
どろぼうも、一俵だけは命にもかえられなかったのでしょうか、もう何と言っても捨てもせず、三人で代る代る担ぎ上げ、次第に遠くなって行きました。しまいには「よっ、ほっ、よっほっ。」などと掛声をかけているのが幽《かす》かに聞えました。
そのとき、お爺さんの家の作男、栄三が起きて出て来ました。
「旦那、どうしました。」
「うん、どろぼうを逃がした。おしいことをしたわい。」
「どの辺まで逃げました。」
「うん、あそこだ。俵をかついで行くだろう。」
二人は月の光に手をかざして、遠い彼方の村の方を眺めました。
「あ、あれなら旦那、馬で追っかけりゃ間に合いますぞ。」
言うか言わないに、もう栄三は門の中へ駆け込んで、鞍《くら》も置かない裸馬を引出して来ました。
「どうどうどう。」
はやり立てる馬をなだめ、栄三はそこで馬に飛び乗ろうと致しました。
「待て待て、待て。」
お爺さんは尻からげをし、手に下げていた刀を腰にさしました。それから栄三の手綱をとって、ぴょんと馬に飛び乗りました。
「一追いして来る。」
こう言いますと、栄三が馬の口をとらえて、
「旦那、それは危のうござんす。」ととめました。
「何を、三人や四人の米どろぼう、お前は後から走って来い。」
こう言うと、馬の腹を両足で蹴《け》って、道の上に駆け出しました。馬の背中で体をすくめ、前の方をすかすようにして見ているお爺さんの姿は、中々勇ましいものだったそうであります。馬は風のように走りました。栄三も後から一生懸命に駆けました。どろぼうはそのときもう隣村の家の陰へ入っていて、影も形も見えませんでした。
ところで、お爺さんが隣村へ馬の足音高く駆け込んで、そこの村端れへ出ようと、川の橋の近くへやって来ますと、ちょうど橋の彼方のたもとで休んでいる三人の男があります。俵のようなものを真中に何か話し合っているようです。それでお爺さんはまた大きな声をあげました。
「こうらあ、どろぼうめい。」
しかしどろぼうは少しも逃げようといたしません。まるでお爺さんの来るのを待ってるようにじっとしております。それでお爺さんは、どろぼうがもう動けなくなったので、お爺さんにお詫《わ》びでもするのかと考えました。それで馬を少し静かにして、歩かせながら橋を渡って行きました。馬がちょうど橋の真中に行ったとき、お爺さんはどろぼうに、声をかけようといたしました。
すると、そのときでした。橋の下の水の上にとても大きな音が起りました。そして|しぶき《ヽヽヽ》がどっと上に上って来ました。それで馬がびっくりして、とっと棹《さお》を立てたように前足を上げて立上りました。立上ったと思うと、それなり、くるりと後ろ向きになり、それから今来た家の方をさして、鉄砲玉のように走り出しました。止めようにも、どうしようにも馬はこうなっては、力に及びません。
「どうどう、どうどう。」
お爺さんは一生懸命手綱を引き引き、何度も何度も叫びつづけました。それを見て、どろぼうたちはハッハッハッハッと腹をかかえて笑いました。
お爺さんの馬はそれでも後から来る栄三のところまで駆けて来ると、そこの道に両手を拡げて突立っていた栄三にとめられました。
「どうどうどう。」
何度もそう言って、首のところを叩いて、栄三とお爺さんとで、まだ怖れてたじたじする馬をなだめました。それから馬には乗らず二人で両側から手綱を引いて、また橋の方に引き返しました。
「どろぼうの奴、とうとう俵を川の中へ捨てて行ったよ。仕方のない奴だ。置いてくなら道の上へ置いとけばいいものを。」
二人はそんなことを言い合いながら、橋のところに来てみますと、もうどろぼうはおりません。川の水も静かになっております。水の中を月の光ですかして見ますと、ちょうど俵のようなものが、その底の方に転がっております。しかし何だか少し小さく見えるようで、栄三が竹の棒を拾って来て、上からそれを突ついて見ました。コチコチと堅い手答えがいたします。
「旦那、こりゃ石ですぜ。」
栄三が言いますので、お爺さんも突ついてみました。頭の方や胴の方や、どこをついても堅い石の手答えです。
「ほんとうだ。こりゃ、どろぼうに一杯くわされた。」
そう言って、ふと橋のたもとを見ますと、そこにいつも立っていたお地蔵さまが見えません。
「やっ、これだこれだ。お地蔵さまも御迷惑に。」
お爺さんも栄三もついおかしくなって笑いました。どろぼうにとうとう旨くだまされた訳であります。それで仕方なく、二人はそこから引返し、道で二俵の米を拾い、それを馬の背中につけて帰りました。
ところで、翌日のことであります。一人の植木屋が板の上に沢山鉢植の牡丹《ぼたん》を載《の》せて、それを担ぎ棒で前後にかついでやって来ました。側にはその親方のような植木屋がついております。その男は襟《えり》に芳翠園と書かれた法被《はつぴ》を着ていました。
「へい、今日は、町の香蘭園さんで聞いてまいりました。こちらの旦那様は牡丹が大変お好きだそうでございまして。上方の牡丹商人でございます。今日は珍種、上もの、飛切りの種類をそろえて持ってまいりました。お買上げが叶《かな》いませんでも、ただ旦那さまの御覧を戴くだけでも結構でございます。」
植木屋は玄関でそう口上を言っておりましたが、庭の開き戸の開いているのを見ると、もうずんずん庭の方へ入ってまいりました。
「おおお、これは結構なお庭だ。おい、きさまもこちらへ入れ。入って、お庭を拝見するがいい。何とあの滝口のこしらえから、築山の雪見|燈籠《どうろう》のあたり、何とも言えない眺めじゃあないか。石の色といい、松の寂《さ》びといい、どうしても庭をこれだけにするのには百年がとこはかかるだろう。」
親分らしいのは、一人で感心し、一人でしゃべっております。そこへお爺さんが縁側に出て来ました。すると、植木屋はまた何度かお辞儀をして、庭をほめたり、牡丹の効能を言ったり、長長としゃべり立てました。そしてお爺さんにはろくろく話もさせないで、庭の踏石の上や、松の木の根元、岩の陰などに牡丹の鉢を列べました。牡丹はみんなで十鉢ばかりでしたが、その青々とした葉陰から少し色づきかけている莟《つぼみ》をのぞかせていました。
植木屋はその一鉢一鉢に就いて、花の美しさからその木の名前などをまた上手にしゃべり立てました。「狂い獅子《じし》」というのは乱れ咲きの花で、花びらが房のようにたれるのだというのでした。「蜀江《しよつこう》の錦《にしき》」と言いますのは真紅な花で、そのさし渡し五寸からある大輪だと言いました。「雪山」と言うのは、雪のように白いのだそうであります。
お爺さんはその間ただ「ふん、ふん。」と言うきりで、むつかしい顔をして聞いていました。ほんとうはお爺さんはそれらの牡丹がほしくてならなかったのです。しかし上方から来た商人ですし、それにその牡丹の植わっている鉢を見るとみなそれがシナ焼の上もので、鉢だけでも中々大変な値打に思われました。それで値段を聞いてやめるよりはと思って、植木屋のしゃべるに任せて、いつまでも黙っていました。
すると、おしまいになって、とうとう植木屋は自分の方から値段を言いました。ところが、その値段の安いことと言ったら、それは鉢の値段にも足りない位に思えました。お爺さんはそれで直ぐにも、その十鉢全部を買いとりたいと思いましたけれども、何だか不思議な気がして考え込みました。牡丹のはやっているときでしたから、そんな値段のある筈がないと思われたのであります。それで、もしかしたら、これはどこかで盗んで来た牡丹かも知れない。そんなことがふと考えられたのであります。それでまた買おうと言い兼ねて、ふうん、ふうん、言いながらしきりに煙草を吸っておりました。おしゃべりの植木屋もこれには困ったと見えまして、とうとう少し腹を立てたような顔になって言いました。
「旦那は牡丹のよしあしがお分りにならないんじゃあありませんか。これ程の名木を一たいどんな値段でお買いなさろうというのです。菜っ葉や人参とは違いますぜ。」
そう言うと、腹だたしそうにどんどん鉢を片づけ、また板の上に乗せ始めました。これを見ると、お爺さんは盗んで来たなどという疑いもなくなり、初めて煙草をやめて声をかけました。
「まあそう立腹しなさんな。それじゃあ、お前さんの言い値で、この鉢全部買いとろう。折角だから置いて行きなさい。」
植木屋は愉快そうな声を上げました。
「いや、有難う存じます。やっぱり旦那は目がおありです。いずれ、私もこの花の咲く頃にもう一度まいりまして、花つくりの秘伝とでもいうようなものを申上ることに致しましょう。」
こんな有様で、植木屋はお金をもらうと喜んで帰って行きました。
ところが、それから四五日して、牡丹の花が美しく開き始めた朝のことでした。お爺さんが屋敷の中を見廻っておりますと、米倉の前に短冊が一枚落ちていました。それにはこんなことが書いてあります。
「花の秘伝、何事も用心第一、用心第一、あした嵐の吹かぬものかは。」
お爺さんがふしぎそうにしてこれを見ていますと、外から門内に駆け込んで来たものがありました。
「旦那旦那、米倉が空ですぜ。」
栄三がうろたえて呼んでおりました。
昨夜の間に、どろぼうは米倉の外側を流れている川に一|艘《そう》の船を引いて来て、倉の壁を切り破り、そこから五十俵もの米を盗んでしまったのでした。さて、その夜のことお爺さんの子に、松山お米、即ち善太のおばあさんが生れました。お米をとられたというので、こんな名をつけたのだそうであります。

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