花のさいている木の下です。三平が大きな木の箱に向いて、てじなをやっております。友だちがたくさんけんぶつしております。
「えへん。今ここに小さい紙の箱があります。中には何もはいっていません。そこから白いちょうを出します。」
三平は、紙箱をだいの木箱の上にふせました。
そのそこのあなから中をのぞきました。
「出ろ、出ろ。白ちょう出ろ。あれ、白といったのに、黒が出て来ました。しかたがありません。」
三平が紙箱をあけると、ほんとうに黒いちょうが、ひらひらとんで行きました。
みんなびっくりしました。
「えへん。今度こそ、白いちょうです。」
紙箱をふせ、あなをのぞいて、三平はいいました。
「出ろ、出ろ、白ちょう。あっ、またしまった。ちょうというのに、とんぼが出て来た。」
箱をあけると、とんぼがとんで行きました。
「えへん。今度は、ちょうと、やんまと、二つ出します。」
また、あなをのぞきました。
「しまった。ちょうがせみになりました。」
ほんとうにやんまと、せみがとび出しました。
「えへん。おしまいに人間を出します。」
これにはみんなおどろいて、にげようとするものもありました。
けれども、箱をひっくりかえして、善太が出て来ましたので、みんなは、
「わっ。」
と笑いました。
善太は、木箱の下で、あけたて出来るあなから、ちょうや、とんぼを出していました。
「えへん。えへん。」
てじなのお話も、これでおしまい。