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日本むかしばなし集200

时间: 2020-01-30    进入日语论坛
核心提示:金の梅・銀の梅梅ヤシキには、梅の木が何百本かうわっているのです。三月になると、その梅の木にいっぱい花がさいて、ウグイスが
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金の梅・銀の梅

梅ヤシキには、梅の木が何百本かうわっているのです。三月になると、その梅の木にいっぱい花がさいて、ウグイスがそこで、ホウホケキョウとなきます。だから、そのヤシキのおくの方へ行くと、なんだか、夢でもみてるような気分になります。ことしの三月も親類のケンちゃんが泊りがけできたので、ボクはあんないして、そこへ遊びに行きました。ホントは入るとしかられるんだけど、ボクたちは、そうっと、そこの杉のイケガキの間からもぐって、梅の林のおくの、おくの方へ行きました。そして木の下の石にこしをかけて、ふたりで、キャラメルを食べました。
そうしていると、ウグイスの声がしました。ホウホ、ケキョ、ケキョ。気をつけていたら、花のむこうの方に、枝から枝へとんで行く一羽のウグイスが見えました。その時、ケンちゃんがいったのです。
「この梅の木、実がなる?」
「なるとも!」
ボクがいいました。
「どんな実?」
ケンちゃんがきくから、ボクはオヤユビとヒトサシユビで、カッコウをして見せました。
「なんだい。小さいじゃないか。」
ケンちゃんがいうのです。そこでボク、
「梅の実、小さい方がいいんだよ。だって、梅はみんなウメボシにするんだろう。これくらいが、ちょうどころあいなんだとさ。」
といったのです。すると、
「フーン。」
ケンちゃんはそんな返事をするのです。それでボクはしばらくだまっていました。ケンちゃんも、なにもいいません。ところが、ボクしだいにハラが立ってきました。ホントウのことを教えてやっているのに、わざとフーンなんていうんですもの。それでボク、少しメチャクチャになって、いってやったんです。
「ケンちゃん、金の梅、銀の梅って知ってるかい。」
「知らない。」
そこで、ボク、
「フーン。」
て、いってやったんです。と、ケンちゃんがいうんです。
「金の梅、銀の梅って、なんだい。」
「金の梅は金の梅、銀の梅は銀の梅。」
「じゃ、それ食べられるの。」
「どうかなあ。ボク知らないや。」
「見たことあるの。」
「あるよ。」
「どこで見たの。」
こうなっては、シカタがないもんで、
「ここで見たよ。ここの木になっていたよ。」
そういってしまったんです。
「いつ?」
「きょねん。」
「ことしもなる?」
「なるだろう。」
「いくつ? いくつくらいなる?」
「一つか、二つ。でも、ならない年もある。」
これはウソです。みんなウソなんだけど、つい、そういってしまったのです。
それから三月、ちょうど梅のうれるころ、ケンちゃんちから手紙がきました。
「ケンスケが病気になりました。熱の高い時、金の梅、銀の梅がほしいと、ウワゴトに申します。そういうものが、絵にでも、お話の本にでも、あるのでしょうか。もしありましたら、おかし下さい。」
お母さんに、この手紙を読み聞かされ、ボクほんとうにこまりました。でも梅ヤシキの人にたのんで、そこの梅を一ショウほど売ってもらい、それをもって、ケンちゃんを見まいに行きました。途中にお宮がありましたから、ボクそこをおがんで、ボクのウソをおゆるし下さい、ケンちゃんの病気を、おなおし下さいと、神さまにたのみました。
「ごめんなさい。シマダのキンタロウです。ケンちゃんのおみまいにきました。」
教わったとおりに、ボクが玄関でいうと、おばさんが走るように出てきました。
「まあ、よくきて下さった。」
大喜びして、ボクを奥の間につれて行きました。そこにケンちゃんはねていました。
「ケンちゃん、キンちゃんがおみまいにきてくださったよ。」
おばさんがいうので、ボクはまず梅のカゴをケンちゃんの枕もとにおき、
「梅屋敷の梅ですが——。」
そういいました。それからウソのおわびをしようとすると、おばさんがいわれました。
「あの梅屋敷の梅ですか。ケンちゃんがそれを待っていたのですよ。」
それから、ケンちゃんの耳近くへ口をよせて、
「ケンちゃん、あの金の梅、銀の梅ですよ。キンちゃんが持ってきてくださったよ。見せたげましょうか。」
そういわれるのです。ボクはおどろいてしまいました。しかしそこへすわった時からケンちゃんのようすが、どうもヘンに思えてしかたがなかったのです。目をつぶってあおむけにねていて、ボクなんかに、気がつかないようなんです。ケンちゃんでなくて、ベツの人かと思えるくらいです。
あとで聞いたら、その時ケンちゃんは病気のため、目もよく見えないようになっていたということです。それで、おばさんは、梅をカゴから出して、一つをケンちゃんの右手に、一つをその左手ににぎらせました。そして、
「ケンちゃん、こちらが金の梅よ、こっちは銀の梅。わかりましたか。」
こういいました。ケンちゃんは目をつぶったまま、右手と左手とをかわるがわる上にあげてこういいながら、耳の近くでふって見せました。
「こっちが金の梅。それから、こっちが銀の梅。」
これは人にいうより、自分で自分にたしかめているようでした。おばさんはそれにつれて、
「そうよ。そちらが金の梅。そうだよ。それが銀の梅。」
そういいました。
「キレイなの?」
ケンちゃんがきくのでした。
「そうとも、とてもキレイよ。」
「フーン、光ってる?」
「光ってるよ。ピカピカ、ピカピカ。」
「フーン。」
ケンちゃんはそういいいい、こんどは両手をあわせ、その中で二つの梅をもむようにしていました。その間にも、
「金の梅、銀の梅。」
と、ひとりごとをいって、それがさもうれしそうに、さもたのしそうに、見えました。だからおばさんまで、
「ケンちゃん、よかったねえ。」
なんていいました。
「なってるところを見たいなあ。」
ケンちゃんはいうのでした。
だけどもボクは、そう信じこんでるケンちゃんの有様が、気のどくでなりませんでした。まるで赤ちゃんのようにだまされているのです。いいえ、ボクだっておばさんといっしょに、ケンちゃんをだましているのです。それで、
「ボク、かえります。ケンちゃん、早くよくなって遊びにおいでよ。」
そう早口にいって、そこを立ってきてしまいました。おばさんがとめても、ドンドン帰ってきてしまったのです。あとできくとケンちゃんは、その梅が、おお気に入りで、手からはなさず「金の梅、銀の梅」といいつづけていたそうですが、それから一月ばかりでなくなりました。
ケンちゃんのお墓の前には、その梅の種からはえた梅の木が二本植えてあって、それをあとあとまで、家の人たちはキンの梅、ギンの梅っていいました。ケンちゃんがそう信じていたからでしょうが、ボクは、あとあとまでケンちゃんをだましているようで、気もちがよくありませんでした。
できるものなら、そのお墓の前の梅の木に、ホントウに金銀の実をならせたかったのです。もっとも、その二本の梅の木には毎年毎年、それはよく花が咲き、それはよい実がなったそうです。でも金の梅、銀の梅は、ならなかったようです。
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