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「まさか」の人に起こる異常心理34

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:疾病逃避による心身症 ある日、夏樹さんはH医師から、「典型的なワーカホリック(仕事中毒)ですね」と言われ、初めて「疾病逃
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疾病逃避による心身症

 ある日、夏樹さんはH医師から、「典型的なワーカホリック(仕事中毒)ですね」と言われ、初めて「疾病逃避」という言葉を聞いた。さらに、「夏樹静子という誰にでも知られた大きな存在を支え続けることに、あなたの潜在意識が疲れきって耐えられなくなっているのです」とも言われた。
「夏樹という存在を葬ることです。夏樹静子のお葬式を出すのですよ」「百パーセント出光静子として生きていく覚悟を決めて下さい」
絶食療法中も相変わらず痛みは波状攻撃でやってきた。絶食療法の後半に入ってもなお激痛がやってきた。だまされたような憤満がストレートに医師に向けられる。
私は、この絶食療法が夏樹さんの病に直接効果があったとは思わない。ただ、治癒へのきっかけになったことは確かである。
H医師はこう言っている。
「あなたみたいに思い込みが強く、心身相関の認識もうすく、一般的な説明、説得ではとても受けつけないような人には、その凝り固まった頭を柔軟にして、他人の話に素直に耳を傾けさせるために絶食療法しかないと考えていました」
十二日間の絶食療法が終了し、五日間の復食期間が終わってもなお痛みは押しかけ、終日、鈍痛が続くこともあった。
しかし、H医師は「病気の本態は筋肉弱化ではなく、疾病逃避であること。その解決には夏樹静子との別離が必要であること。そして出光静子として有意義に生きること」を根気よく説き続けた。
やがて痛みが少しずつ間遠になっていった。二十四時間から三十六時間くらいおだやかな時間が続き、ある日、十分か十五分間、ベッドに正座して先生と対話することができた。痛みはときどき出没したが、痛みと共存するという気持ちで行動するように努めた。
禁止されていた電話が解禁になると、出版社へ次々と「一年間全面休筆」という表現の電話をかけた。睡眠剤なしで眠れるようになった。
三月九日、めでたく退院。翌日、福岡まで飛行機の椅子にもきちんと腰かけて飛んだ。
疾病逃避という用語はFlucht in die Krankheit というドイツ語の直訳だが、ある病的な状況に没入することによって、他人から同情をひき、休養欠席を正当化し、ときには生命を救うために発生する状態をいう。
登校したくない小学生が登校時間になると、発熱や腹痛や下痢を起こして不登校を正当化したり、戦時下の兵士が種々の症状を発症することによって兵役を免除され、安全な後方病院に入院して生命を保持したり、高齢者が病症を過大に誇張して家族、友人の同情をひこうとしたりするメカニズムである。
夏樹さんのケースは、H医師の診断どおりの「疾病逃避」による心身症(心身相関の病)といっていい。夏樹さんは自分でも述べているように、完全欲が強く、絶えず向上を望み、せっかちで気ぜわしい性格(ワーカホリックになりやすい性格)で、次々と押し寄せてくる原稿注文や社交に対処しきれなくなり、これ以上仕事を引き受けると身が危ないという危機意識(むろん無意識下である)が腰痛となって出現したのである。
強烈な痛みや椅子にすわれないという自覚症状は、明らかに仕事拒否を正当化する人間の自己防御のあらわれといっていい。さらに夏樹さんの性格と、インテリにありがちな、すべて自己の学問的な分析によって結果を予測してしまうという悪い面とが症状を長引かせているのだ。
言葉は悪いが、インテリほど病気の治りが悪いと言いうる。学識がじゃまをして、すなおさに欠けるからである。単純で、すなおな町のおかみさんのほうが病気の治りが早いともいえるのだ。むろん例外はあろうが。
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