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「まさか」の人に起こる異常心理42

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:長春脱出に意識を失う 八路軍が長春を包囲している環の一角に、チャーズと呼ばれた関所のような柵があり、その内側は国民党軍、
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長春脱出に意識を失う

 八路軍が長春を包囲している環の一角に、チャーズと呼ばれた関所のような柵があり、その内側は国民党軍、外側が八路軍の支配区域となっている。包囲の中にいる市民の脱出ルートはこのチャーズを経由するしかなかった。
餓死寸前のEさんも父親も、よろよろと歩む。荷車を押してきた従業員が、社長である父親を貴様呼ばわりする。極限状態におかれた人間の、むき出しにされたエゴのすさまじさには有無を言わせぬものがある。モラルの入り込む余地などみじんもない。
餓死して緑色になった人間の腐乱した腹部から、蠅《はえ》がワーンと音を立てて飛び立つ。柵の前には国民党軍の歩哨兵が立ち、難民を監視している。ここを一歩出たら、再び戻ることは許されない。
柵門をくぐってしばらく進むと、難民の列の前方でどよめきが起こった。道は腐乱した死体でいっぱいだったのだ。死体の開いた口の中まで蠅が入り込み、うじがわいている。列の中の一人の男が力尽きて倒れた。やがて深い息とともに動かなくなった。それを見た一団の人間が駆け寄ってきて、衣類をはぎとり、全裸にして転がしてしまった。
ここは八路軍の解放区ではなく、両軍の中間にある緩衝地帯だった。Eさんは廃墟の陰で用を足した。薄桃色の腸が脱肛して、その先が地面に達して泥だらけになっている。  食糧は母親が作ってくれた高粱《コーリヤン》のほしいを少しずつかんでいた。解放区の手前に小高い山が見える。よく見ると、それは死体の山だった。しかもまだ息があり、完全に死んでいない者まで積み上げられていた。Eさんはここで正常な精神を失った。恐怖心もなくなっていた。
結局、父親は八路軍と交渉の末、製薬という技術者ゆえに、なんとか柵を出ることを許されたが、当然、いっしょに出られると思っていた会社の職員の家族は出られなかった。八路軍は技術者のみを必要としたのだ。やっと柵門をくぐったEさんの耳に、「裏切り者ーッ」と叫ぶ、残された日本人の悲痛な叫びが聞こえた。チャーズ内の餓死者は延べ十数万人以上ともいわれている。
Eさんの一行は、八路軍に連れられて吉林へ行き、次いで国境に近い延吉に着き、長春脱出後三週間目に日本人難民の住む寮に合流できた。
 もう死んでも大丈夫だ。そう思ったとたん、私を支え続けてきたものが体からスーッと抜けて行くのがはっきり感じとられた。
暗闇が私の後頭部を深い深い奈落の底へ引っぱっていく。
 Eさんはそのあと長いこと意識をとり戻すことができなかった。
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