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「まさか」の人に起こる異常心理43

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:悪夢におびえる Eさんがぼんやりと意識をとり戻したのは、翌四九年の春、そして本格的に意識が回復したのはその年の夏だった。
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悪夢におびえる

 Eさんがぼんやりと意識をとり戻したのは、翌四九年の春、そして本格的に意識が回復したのはその年の夏だった。
母親の話によれば、Eさんは完全な昏睡状態ではなく、食べさせようとすれば口をあけ、医師による腕の上げ下げの指示にも応じていたという。だが、Eさんの記憶はこの部分だけがすっぽり抜けている。現実を認識できるだけの意識が戻っていなかったと考えられる。
その間、結核菌はEさんの全身に蔓延していたが、幸いなことに、アメリカからの援助によるストレプトマイシンが、国民党軍の横流しか、八路軍の押収か、延吉にあったのだ。あらゆる手を使ってようやく手に入れたその薬のおかげで、二〇本も注射したころには外出できるまでに回復していた。四九年十月、毛沢東が中華人民共和国成立を宣言したころのことだ。
外出できるまでに回復したEさんは、暗闇に極端におびえる子どもになっていた。そしてチャーズの恐ろしい光景は脳裏の奥のほうにしまい込まれていた。無意識下に自衛本能が働き、恐怖を真正面から受け止めることを拒否する反応をしていたのだろう。Eさんは涙と言葉を失っていた。しかも近所の中国の子どもたちからいじめられ、石を投げつけられる毎日だった。
五〇年六月、朝鮮戦争勃発。中国の経済復興を支える技術者は疎開せよ、と命令され、十二月、Eさん一家は山海関を越え、大都会の天津に着いた。都会は華やかな色彩に満ちていた。「きれい……うれしい」とEさんは繰り返した。Eさんはこの瞬間から言葉を回復したのであった。
同時に、Eさんの意識下に奥深くしまい込まれていたチャーズの記憶がよみがえってくる。
 ……何やら小高い青白い山が見える。その山はだには人の手首が生えていて、私に「おいでおいで」をする。「ギャーッ」と叫びそうになると、パッと白いヴェールが認識をふさぎ、記憶を遮断する。
 そういう悪夢のような繰り返しが、十一歳の少女を毎日、おびえさせた。
スターリンが死に、朝鮮戦争休戦の見込みが立った五三年、中国残留日本人の帰国の指示が出て、九月、Eさん一家は日本へ引き揚げることができた。
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