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「まさか」の人に起こる異常心理44

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:最大の自己防衛は記憶喪失 Eさんはその後、大学で理論物理学の研究に従事した。ある日、Eさんは私を訪れ、当時の自分の意識を
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最大の自己防衛は記憶喪失

 Eさんはその後、大学で理論物理学の研究に従事した。ある日、Eさんは私を訪れ、当時の自分の意識を中心とする精神症状について私の意見を聞きたいということだった。
Eさんの著書『不条理のかなた』が、第四回読売「女性ヒューマン・ドキュメンタリー」大賞に入賞した。この項に引用したのは彼女の作品からの抜粋である。
コソボで起きた悲劇は、Eさんの味わった状況とはまだまだくらべものにならないかもしれないが、状況が長く続き、複雑化すれば、これが大きな悲劇に発展する可能性は十分にある。コソボの情勢が目や耳に入ってくると、Eさんのチャーズがいきなり私の記憶の中からよみがえったのは当然と言えば当然であるかもしれない。
いわゆる神経症のいろいろな症状は、大ざっぱに言えば、多かれ少なかれ、自己防衛につながるものである。その最大のものは記憶喪失である。Eさんが延吉のやや安全な場所にたどり着き、ホッとしたところで記憶喪失が襲った。だが、それは彼女の全面的な精神の崩壊を防ぐ役目を果たしたとも考えられるのだ。
それにしても、自分が目にした地獄絵を生々しく展開して見せるEさんの強靭な意志の力に感動する。
 戦争末期、私は陸軍精神科病院で、失立(立てない)、失歩(歩けない)、失声(声が出ない)などの患者を診た。あらゆる治療を試みたが、なかなか軽快しなかった。だが運命の四五年八月十五日が来た。戦争が終わったのだ。
患者に驚くべき変化が起こった。あれほど頑固をきわめた立てない患者が一週間もしないうちに自然に歩けるようになり、声の出なかった患者があいさつの声を出すようになったのだ。彼らは病気に逃避することで生命を守ったともいえる。ただし、彼らをひきょう者呼ばわりすることは酷である。人間の本能がそうさせたのだから。もしわざと意図的にやったのであれば、それは気の弱いひきょう者ということもできようが。
私はビルマ(現在のミャンマー)の戦場で、英国兵の敵と出合いがしらに意識を喪失した兵士を思い出した。むろん、敵兵も意識を失ったのである。これで両人は恐怖から逃れ、しかも生命も維持できたのだ。
何年か前、フランスのノルマンディー海岸でずぶぬれになって徘徊している日本人の女性が発見された。記憶を喪失していた。名前も住所も覚えていない。何か耐えられないほどの恐怖に襲われる事件があったに違いない。
幸いなことに報道関係者がいっさい取材しなかったから、たぶん彼女は今では回復しているに違いない。しつこい取材はその反対の結果を招くこともあるのだ。
ストレスによる臨界点を突破すればなんらかの異常を引き起こすが、その臨界点、発火点のレベルは個人によって異なるし、また性格によって、その方向も異なることも心得ておいていい。
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