「被監視妄想」も多い。課長がいつも自分を監視している。一所懸命どこまで逃げても監視する人が立っている。監視が近ごろは発展して「盗聴装置」となる。天井に盗聴装置を仕掛けられている、電話を盗聴される、というのはかなり多い。
日本は残念ながら国土が狭い。したがって、都会の家では押し合いへし合いである。すぐ目の前が隣という家も少なくない。こちらが窓をあけると、隣家の窓がすぐ閉められる。こちらの会話を隣家の人が聞き耳を立てている。電話をかけるとすぐジーッと音がする。隣の人が盗聴のスイッチを入れたに違いない。
ついには大声で隣家に怒声を浴びせたりする。隣の人に「もうがまんの限界だ。なんとかしてくれ」と抗議され、そのたびに患者の家族は平謝りする。しかし、肝心な本人に病識がないから、家族が「病院に行こう」などと言おうものなら、「僕はなんともないのに、何を言うか」と激怒し、家族に暴力をふるったり、器物を投げたり、壊したりするのが落ちである。
「強制収容」という制度もあるが、この程度の症状ではその法律をクリアして病院に連れていくことはできない。われわれ精神科医はくやしい思いをすることがしばしばなのだ。
日本は残念ながら国土が狭い。したがって、都会の家では押し合いへし合いである。すぐ目の前が隣という家も少なくない。こちらが窓をあけると、隣家の窓がすぐ閉められる。こちらの会話を隣家の人が聞き耳を立てている。電話をかけるとすぐジーッと音がする。隣の人が盗聴のスイッチを入れたに違いない。
ついには大声で隣家に怒声を浴びせたりする。隣の人に「もうがまんの限界だ。なんとかしてくれ」と抗議され、そのたびに患者の家族は平謝りする。しかし、肝心な本人に病識がないから、家族が「病院に行こう」などと言おうものなら、「僕はなんともないのに、何を言うか」と激怒し、家族に暴力をふるったり、器物を投げたり、壊したりするのが落ちである。
「強制収容」という制度もあるが、この程度の症状ではその法律をクリアして病院に連れていくことはできない。われわれ精神科医はくやしい思いをすることがしばしばなのだ。