返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

「まさか」の人に起こる異常心理73

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:反社会性人格障害の語学の天才 私が大学の医局に復員して最初に教授から命令されたのは、当時、はやりにはやった発疹チフスの研
(单词翻译:双击或拖选)
反社会性人格障害の語学の天才

 私が大学の医局に復員して最初に教授から命令されたのは、当時、はやりにはやった発疹チフスの研究だった。教科書や研究書にのっていない精神症状の有無を確かめるのが主目的だった。発疹チフス患者を収容していた伝染病院を回った。
ある都立病院でいきなり、「おっ、茂太君!」と患者から声をかけられた。見れば、叔父の顔がそこにあった。大学の英文学の教授をしていた叔父だった。その叔父の病気は結局、真性でないことが判明して釈放されたのだが。
当然、外国の文献を読まなければならない。英語やドイツ語の論文はなんとか読めるが、はたと困ったのはチェコ語、ハンガリー語の文献だった。
当時、私は医局から派遣されて、あとで継ぐことになった家内の父の精神科病院に手伝いに行っていた。そこの入院患者の中にとんでもない語学の天才がいたのだ。
彼は病的性格者、おおげさにいえば反社会性病的性格者、天才によくあるタイプだ。人間性が豊かすぎる人、社会常識が通じない人だった。おなかが減れば八百屋の店先からリンゴを一個失敬する。そういうたぐいの軽犯罪を繰り返す。ところが病院にいれば、せっせと語学の勉強に明け暮れする。数カ国語を話し、書くこともできる。
ついには、それまでなかった日本語とハンガリー語の辞書を完成させ、その功績によりハンガリー政府から勲章を贈られるという大物になった。入院患者としてはまさに模範的で、他の患者に全く迷惑をかけないからということで退院させると、たちまち無賃乗車、軽い窃盗などの軽犯罪を繰り返すので、再び病院に送り返されてくる。
私が発疹チフスの外国文献ではたと困ったのは、チェコ語の論文だった。これは、はなはだ重要な内容を持っているらしく、またナポレオン軍のモスクワ侵攻にまでふれているらしいので、どうしてもこまかい点を知りたかった。そこでおそるおそる、例の患者にその文献を読んでくれるかと伺いを立てた。
ところが、あっという間に彼はそれを読破してくれたのだ。おかげで私の書いた論文には箔がついた。私は彼にお礼がしたかった。何がほしいかと聞いたところ、彼はあっさりと言った。
「タバコを一箱ください」
彼はその後、事情があって都立病院に移った。何年かのちにその病院で一生を終えたと風の便りに聞いた。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论