多重人格とは同一人物に二人、またはそれ以上の人格が交互に出現して、互いに独立して活動する現象で、Aの人格のときはBの言動を、Bの人格のときはAの言動を全く記憶しないのである。
「イヴの三つの顔」の人格
「イヴの三つの顔」は、アメリカのアトランタ近くのオーガスタの精神科医C・H・セグペン、H・M・クレックレーのドキュメンタリー・レポートが原作となって映画化され、ジョアン・ウッドワードがアカデミー主演女優賞を獲得した。
これは実際にアメリカで起こったことだ。
イヴ・ホワイトという二十五歳の小柄な美しい奥さんが、サウスカロライナ州の田舎町の医師を訪れ、ひどい頭痛と心の不安を訴える。医師は原作者の二人の精神科医を紹介した。彼女は以後、両医師の治療を受けることになる。
何回かの面接のとき、彼女はいきなりはすっぱな態度で「ハーイ、先生! そこにいたの?」と話しかけ、セグペン医師を驚かせた。このとき初めてセグペン医師は、彼女が心の中にもう一つ別の人格イヴ・ブラックが存在することを知ったのだ。
そして、あれやこれやの経緯の末、最後にイヴは実にドライなもう一つの人格エヴリンに変身し、ホワイトとブラックの生き方を批判する。かくして、ようやく「適応状態」がやってきて、イヴは前夫と別れ、新しい配偶者を得て、今も幸福に暮らしている。
セグペン博士がロサンゼルスの学会で学問的な報告をしたのが一九五五年。三年後に本が書かれ、映画にもなった。博士はその後もイヴと接触し、予後を追求しているが、幸いなことに彼女の心は平安状況にあるという。
人格の転換というと、われわれの頭にはスティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』や『狼男』が浮かぶが、それらはあくまでフィクションである。しかし、『イヴの三つの顔』は実際に起こった事実であるから、鋭くわれわれの心に迫るのである。
これは実際にアメリカで起こったことだ。
イヴ・ホワイトという二十五歳の小柄な美しい奥さんが、サウスカロライナ州の田舎町の医師を訪れ、ひどい頭痛と心の不安を訴える。医師は原作者の二人の精神科医を紹介した。彼女は以後、両医師の治療を受けることになる。
何回かの面接のとき、彼女はいきなりはすっぱな態度で「ハーイ、先生! そこにいたの?」と話しかけ、セグペン医師を驚かせた。このとき初めてセグペン医師は、彼女が心の中にもう一つ別の人格イヴ・ブラックが存在することを知ったのだ。
そして、あれやこれやの経緯の末、最後にイヴは実にドライなもう一つの人格エヴリンに変身し、ホワイトとブラックの生き方を批判する。かくして、ようやく「適応状態」がやってきて、イヴは前夫と別れ、新しい配偶者を得て、今も幸福に暮らしている。
セグペン博士がロサンゼルスの学会で学問的な報告をしたのが一九五五年。三年後に本が書かれ、映画にもなった。博士はその後もイヴと接触し、予後を追求しているが、幸いなことに彼女の心は平安状況にあるという。
人格の転換というと、われわれの頭にはスティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』や『狼男』が浮かぶが、それらはあくまでフィクションである。しかし、『イヴの三つの顔』は実際に起こった事実であるから、鋭くわれわれの心に迫るのである。