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「まさか」の人に起こる異常心理78

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:抑制の低下から始まる痴呆 作家の丹羽文雄さんの老化については令嬢がくわしく本に書いているので、世間によく知られているが、
(单词翻译:双击或拖选)
抑制の低下から始まる痴呆

 作家の丹羽文雄さんの老化については令嬢がくわしく本に書いているので、世間によく知られているが、周囲の人々が丹羽さんの痴呆に最初に気がついたのは、母校の早大の卒業式に招かれて祝辞を述べたとき、決められた時間を大幅に超過しても、いつまでもやめなかった事件があったからだ。
最近、令嬢の死去が報じられたが、その後、丹羽さんの介護がいかなることになるか、多くの人が心配している。
痴呆については、ほんのちょっとしたことがきっかけになって周辺の疑惑を招くことがある。記憶力もよく、約束もきちんと守り、人さまから信用されている婦人が、ある日、居眠りもしていないのに、下車すべきバス停で下車せず、何駅か乗り越してしまったのが痴呆の始まりであったこともある。
私が昔から敬愛していた老夫婦がいる。仲がよく、お互いを立て、子育てもりっぱ、しかも人づきあいもよし、全く非の打ちどころのないすばらしい先輩だった。
ところが、ある年、突然、大事件が起こった。夫人がいきなり夫を攻撃し始めたのだ。それも五十年も六十年も昔のことを蒸し返したのだ。私はそんなことがあったとは全く知らなかったのだが、夫人の言葉を借りれば、「安月給で貧乏にあえいでいたとき、私は必死に働いて家計を助けたのに、そんなときにあなたはなんですか。浮気などというとんでもないことをして」と、夫人は夫を口で攻撃するばかりか、しだいに暴力を発揮するようになった。
つめでひっかき、夫にくってかかり、棒でなぐり、ついには刃物を振り回すまでに至った。夫は身の危険を感じ、家を出て、息子の家や友人の家に身を寄せる始末になった。
間もなく、夫は体調をくずし、ついには帰らぬ人となった。そして、夫人も数年後に老衰のために夫のあとを追った。
夫人の突然の変心は、実は老人性痴呆の開始だったのである。痴呆は心の抑制の低下から始まり、しだいに欠如へと向かっていく。
夫人は長い間、夫の浮気の過去について、がまんにがまんを重ねてきたのである。そして表面的には、すばらしく完璧な夫婦を演じてきたのだ。しかしあるとき、そのブレーキがゆるんできてがまんが低下し、過去の怨念が一気にふき出して、自己抑制(セルフコントロール)がきかなくなり、ついに暴力的な攻撃に転じてきたのだ。
夫人の息子や娘たちが夫人を特別養護老人ホームに連れていった本心は、病気を治してくれというより「預かってくれ」であったことを責めるわけにはいかない。
周囲の者はその対応に追われ、振り回され、ヘトヘトになった。家人が一日の疲れをいやすために寝る深夜に目を覚まし、大声で家人の名を呼ぶので、家人はろくろく睡眠もとれない。ガスの栓を開きっぱなしにしたり、マッチをいじったりして危険このうえない。外に出ると、迷子になって交番のやっかいになる。たいせつな郵便物を捨ててしまう。食事をすませて三十分もたたないのに、すぐ再び食事を要求する。「さっき食べたばかりなのに」といくら説明しても、「まだ食べていない」とがんばる。果ては家人を「殺人者」などとののしる。たまに訪れてくる人を「私の物を盗んでいく」と盗っ人扱いする。
家人がついに自宅での処置をあきらめる決定的な要因となったのは、徘徊がはなはだしく、外を出歩いて迷子になるのはまだしも、他人の家の郵便受けに手を突っ込んで、たいせつな郵便物をつかみ出して捨ててしまうという行為だった。これは社会的に大きな迷惑を及ぼすのみならず、郵便法にふれるれっきとした犯罪だったからである。
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