返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

「まさか」の人に起こる異常心理83

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:最初の一杯から大量飲酒へ ある男性(四十二歳)が初めて酒を口にしたのは、十二歳の正月、父親から「めでたい正月だ。お前も一
(单词翻译:双击或拖选)
最初の一杯から大量飲酒へ

 ある男性(四十二歳)が初めて酒を口にしたのは、十二歳の正月、父親から「めでたい正月だ。お前も一口飲め」と盃を渡されたのが最初だった。そのときの父親の満足そうな笑顔を彼は今でも忘れない。統計的に見ると、最初に酒を飲んだのは「父にすすめられて」が圧倒的に多いのだ。自分の子どもがこんなに大きくなって酒も飲めるようになったという、父親の満足げな顔が浮かんでくる。
それはともかく、アルコールも麻薬も、最初の一杯、最初の一服、最初の注射の一本がその人間の一生を決めるといわれる。異常に強い反応を感じる素質的なものがあるのだ。
彼はこの最初の一杯の酒が忘れられず、おりをみては酒を飲むようになった。中学校に進み、高校生になるころには台所に忍び込み、父親の酒を盗み飲みするのが習慣になった。週に数日以上、酒を飲んだという。
初飲酒年齢が早ければ早いほどアルコール依存症になる年齢が早い、といわれるが、彼も例外ではなかった。ついに朝から酒に親しむようになった。酒が切れると手がふるえて文字も書けず、シャツのボタンもはめられぬ始末となった。一杯の酒を飲むと不思議や手のふるえが消え失せるので、朝から飲むようになったのだ。当然、学業も中断し、登校もしないで退学したのもやむをえなかった。親が注意すると暴力をふるうので、甘い親は彼の言いなりになり、彼の行動に従うしかなかった。
しだいに酒量がふえ、アルコール濃度の強い酒を求めるようになる。ウイスキーをストレートで飲んだり、ビールで割って飲んだりして、大量飲酒が続いた。
あるとき彼は天井に向け、また隣の部屋に向かってどなった。「バカヤロー」とどなったり、「コンチクショー」とどなったりした。そして、「だれか三、四人の人間が、天井や隣室にひそんでいて、おれの悪口を言ったり、おれを殺そうとして、ひそひそと相談している」と言った。明らかに、アルコール幻覚症の発症である。そのうちに、飲酒をしても手のふるえは止まらなくなり、ふるえは手から全身に広がってきた。
彼が盛んに「ほうきを貸してくれ」と言うので、母親は乱雑きわまりない部屋を息子が掃除するのだと思って喜んでほうきを貸してやった。しかし、そのうち母親は変だと感づいた。畳が別によごれてもいないのに盛んにほうきではいているのだ。シッシッと何かを追うように、しかも恐怖の表情も見せるようになった。ときには上腕のシャツの上から何かを払うようなしぐさを見せることもあった。あとで聞くと、彼はこのとき小さな無数の虫を幻視していたのだ。いわゆる、小動物幻視である。
彼は今まで両親の強制で、かかりつけの医師からいやいや血液検査を受けていたが、そのたびに肝臓はだいじょうぶ、異常なしと言われ、おれの肝臓はだいじょうぶなんだとうそ吹いてきた。しかし、つい最近、無理やり受けさせられた血液検査は最悪の結果だった。
これは本人に申し渡してもしかたがないことで、いまさら酒をやめようとしないことはわかっているが、医師が両親に宣告したのはアルコール性肝硬変だった。
肝臓は実に強い臓器で、肝臓がちょっと悪くなってもアルコールをしばらくやめると肝臓が回復することがよくあるが、肝硬変と名がつくと、たとえ酒をやめても肝臓は回復しない。あとは悪くすると、死を待つばかりだ。大量飲酒、アルコール依存症、肝硬変という一連のプロセスは自殺の道程といってもいいほどだ。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

[查看全部]  相关评论