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無花果少年と瓜売小僧02

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  2 磯村くんが�家を出たい�と思ったのは、十一月の真ん中辺でした。思ったらすぐ口に出しちゃう磯村くんは、だから、十一
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 磯村くんが�家を出たい�と思ったのは、十一月の真ん中辺でした。思ったらすぐ口に出しちゃう磯村くんは、だから、十一月の真ん中辺のお昼頃、キッチンのテーブルで母親の美穂さんにそう言いました。あのクラス会が終って、磯村くんはまだ大学の一年生で、榊原さんはまだ大学生になっていない年の、秋でした。
「ねェ、俺、一人で住みたいなァ」
磯村くんはそう言いました。
お父さんはお仕事で、お兄さんは大学で、講義のない磯村くんだけが、お母さんと二人で昨日の残りのまぜ御飯を温め直したお昼御飯を食べている時でした。
磯村くんが起き出して来た時間は遅かったにしても、寝呆《ねぼ》け眼《まなこ》でなんだか分らないものを詰めこんで、それで目を覚さなければならないような時間ではありませんでした。
磯村くんは、もうシャッキリとしていました。シャッキリしたまんま、お昼御飯になるのだけを待っていた磯村くんは、なんにもすることがなくてただ何かが来るのだけを待っている毎日に、もう飽き飽きしている自分に気がついたのです。
「ねェ、俺、一人で住みたいなァ」——だから磯村くんはそう言いました。そう言って、それだけが家を出たい理由ではないことに、磯村くんは気がつくのです。
「あら、どうしてよ?」
磯村くんのお母さんはそう言いました。磯村くんによく似て、目が丸くて色白のお母さんでした。
「どうしてって——」
磯村くんは言いました。言ったきり口ごもってしまったので、その磯村くんの様子は、お母さんに話しかけているというよりも、白いお茶碗の中のまぜ御飯に話しかけているみたいでした。
「どうしてって——」と言ったら、「どうしてなんだかよく分んないけど」と、うっかり自分の中で分ってしまった磯村くんなのでした。
「どうしてなんだかよく分んないけどサ、ただなんとなく」
磯村くんは言いました。
「ただなんとなくで一人住いされちゃったらたまんないわよ」——そうお母さんは言いました。
「どうして?」
磯村くんは言いました。
「さァね。それこそ�別に�よ」
お母さんは言いました。自分の、二人いる子の内の下の方の息子がまたなんだか訳の分んないことを言い出したと思っていたお母さんは、「訳の分んないことなら訳の分んない風に答えとく方がトクだわ」と思って、そういう風に言ったのです。
お母さんの横では、カラーテレビに映ったタモリが、なんだか訳の分んないことを言って笑っていました。お母さんは、磯村くんが見るんだろうと思って、『笑っていいとも!』を点《つ》けていたのでした。
「ねェ、だめェ?」
磯村くんは言いました。
「何を?」
お母さんです。
「だから、一人で住むの」
磯村くんがかなり本気な顔しているのを、お母さんは「なんの冗談だろう?」と思って見ていたのです。
「一人で住んでどうするのよ?」
お母さんは言いました。
「どうするって?」
磯村くんは言いました。
「だって、別にあなたが一人で住む理由なんてないじゃない」
「ないけどサ」
お母さんに答えて磯村くんは言いました。
「ないけど、一人で住みたいんだもの」
「あら、結構な御身分ねェ」
「だめェ?」
「�だめ�って、だから何をよ?」
「だから、一人で住むの」
 磯村くんのお母さんには、磯村くんがどうして一人で住みたいなんてことを言い出したのか、さっぱり分りませんでした。「この子は時々訳の分らないことを言うけど……」——そう思って、「言うけど、なんなんだろう?」と、磯村くんのお母さんは考えてしまいました。
「あなた、一人で住んで、どうするのよ?」
おんなじことをもう一遍、磯村くんのお母さんは言いました。
「どうしてって?」
磯村くんは、相変らず�理由�を訊かれているのかと思って、そう聞き返しました。
「�どうして�じゃないわよ。あなた、一人でお掃除なんかするのよ」
磯村くんのお母さんはそう言いました。
「するよ」
磯村くんは言いました。
「お掃除じゃなくたって、洗濯だって、御飯だって、あなた一人でするっていうのよ」
お母さんの言ってることは、ちょっと分らない日本語でした。「そんなメンドくさいこと出来る訳ないでしょう?」——そういうドメスチックな方面から攻めて行ったら、この訳の分らない子の訳の分らない発言に勝てるかもしれないと思ったから、お母さんは少し口ごもったのです。
「やればいいんでしょ?」——磯村くんは言いました。
�やれる!�って言ってるのか、ただ口だけで�そんなこと分ってるよ!�と言ってるのか、よく分らない磯村くんの言い方でした。
「具体的な裏付けのない発言なんて発言に値しないわよ」——そう言いたそうなのはお母さんでした。
「やれないと思ってんの?」
磯村くんは、空になったお茶碗を差し出しながらお母さんに言いました。
「やれって言えばやれるんでしょう?」
そして、空のお茶碗に冷たい御飯を入れて、それにラップをかぶせながらお母さんは思いました。「ああ、この子も�自立�したがってるのかしら?」と。
お母さんにしてみれば、�自立�というのはしなければならない�義務�でした。�義務�だけれども、とっても難しいことで、あんまり深刻には考えたくないようなことでした。自分だってやっぱりしなくちゃいけないけど、それは後四年か五年先のことで、そういうことはあんまり人から言ってほしくないようなことでした。
「私だって無理なんだから、この子には無理に決ってる。だって、自立っていうのは学問とかそういうことじゃないんだから」——そんな風にお母さんは思っていたのです。
電子レンジのタイマーを「1分」に合わせて、お母さんは言いました。
「男の子だって自立した方がいいものねェ」
「そうだよ」
お母さんに�自立�と言われて、磯村くんはうっかりそう言いましたが、言ってから「絶対なんか、誤解が始まったな」と思ったものです。お母さんが流行語を使って、それで話のピントが合ったことはなかったからです。
「ねェ!」
何か思いついたように、お母さんは磯村くんの方に向き直りました。両手をテーブルの上について、磯村くんの方に突き出した表情は、キラキラと光っています。
「女の子でもいるの?」
お母さんはそう言いました。〈男の子〉—→〈独立〉—→〈結婚〉—→〈仲間はずれ〉—→〈そんなことになったらたまらない・私は平気〉—→〈だから�自立�〉と、いつの間にか出来上っていた思考のネットワークに�自立�という言葉を反応させたお母さんは、「そうか!」と思って、先手必勝のゆとり《ユーモア》をこめてそう言ったのです。
「なんのことォ?」
磯村くんは言いました。
「違うの?」
お母さんは言いました。
「だから何が?」
磯村くんは訊き返しました。
「だって、あなたにガールフレンドの一人や二人いたっておかしくないでしょう?」
「おかしくないよ」
ふくれっ面をして磯村くんは言いました。自分のお母さんにそんなことを言われると、今この瞬間、自分の横におかわりシスターズの�羽純ちゃん�でもいるような気になって、「なんでそういうリアリティーのないことを考えるんだろう」と思えたからです。
磯村くんは、「ひょっとしたら自分は、この�ユーモラス�だけが取り柄の一家の団欒《だんらん》に飽き飽きしてんのかなァ……」と思いました。思って、「そんなことじゃないんだなァ」と思いました。
「自分は一人で暮したいって言って、そしてそれに、リアリティーがあるのかどうか知りたいと思ってたんだなァ」と、磯村くんは思いました。
「お母さんが�だめ�って言ったらリアリティーはあるんだ。そう思ったから僕は、�ねェ、一人で住みたいなァ�って言ったんだな」って、磯村くんは思いました。
切羽詰った訳じゃない。一人で住まなきゃいけない理由がある訳じゃない。何かに飽き飽きしてるってことに近い。そして、そうすれば何かに知らん顔することだって出来る。磯村くんはそんなことを思っていたのでした。
「ねェお母さん、僕のしてることって、後めたい?」
もっとはっきり言ってしまえば、磯村くんの訊きたいことは、そんなことでした。
 木川田くんが帰って行ったのは、昨日のことです。「またお友達が泊りに来た」——それぐらいのことしかお母さんは考えていなかったでしょう。そして実際も、それぐらいのことだけでした。
一昨日は、ただ磯村くんのベッドに、木川田くんが寝てたというだけです。勿論、磯村くんもそこに寝てましたけど。
咋日の木川田くんは妙に元気で、ただ磯村くんの首に腕を回しただけで、そのまんま眠ってしまいました。
木川田くんに勝手に先に眠られて、磯村くんは、パッチリと目をつぶっていただけでした。「別になんでもないんだけどサ」——ベッドの中で目をつぶって、ズーッとそんなことを考え続けているのは、やっぱり、疲れることです。「一体こいつは何考えてるんだろう?」と、「僕は一体なんで他のことを考えるんだろう?」っていうのを替りばんこに考えるのは、ほとんど意味のないことです。結論は、「ひょっとして僕って�異常�なのかな?」っていう、そこにしか行きつきません。
「一体、僕はどうして木川田と会ってるんだろう?」
「一体、どうして僕は木川田に会いたいと思うんだろう?」
「木川田と会ってるとどうして落ち着くんだろう?」
「木川田と会ってるからって、別に嬉しい訳でもないんだけど、でも——」
「どうして木川田と会ってないと落ち着かないんだろう? でも——」
「別に木川田と会えないからってソワソワしてる訳でもないし——、でも——」
「木川田から電話がかかって来るかなァ、とか思うと妙に落ち着かなかったりするし——、別にヘンなことしてる訳じゃないんだけど——」
 でも別に、ヘンなことをしてない訳じゃないんです。
でも、ヘンなことをしない時だって、あるんです。
木川田くんは妙に落ち着かないし——時々は情緒不安定みたいだし——。
そんな時は「やっぱり僕がついててやらなくちゃいけないのかなァ」って磯村くんは思うし、でも、木川田くんだって、いつだって�元気がない�訳でもないし——。
そんな時は「やっぱり僕は、木川田に必要にされてないのかなァ……」とか思って、寂しい思いをする磯村くんではありました。
「ねェ? 僕のしてることって後めたいこと?」——いっそのことそんな風に言っちゃおうかなァって、磯村くんはどっかで考えていたんです。
でも、「�僕のしてること�って、一体どんなことなんだろう?」——そう思うと、磯村くんはなんにも考えられなくなるんです。
そんな風に思い始めて、自分の心の中から�自分が具体的にしてること�っていうのを拾い出し始めると、「あ、別にそういうことはしてないんだ」って、磯村くんは、別に大したことのない、�後めたくないこと�ばっかり拾い集めるから、何も考えずにすんでしまうのでした。
 よく分りません。
 分っていたのはたった一つ、どこかで磯村くんが、「このまんまだと、なんか、ヘンな具合に僕は追いつめられちゃうなァ……」って考えていたということだけです。それはどこか、「もうしばらくしたら私だって�自立�しなくちゃいけないわ」って考えている、磯村くんのお母さんの�落ち着かなさ�と似ていました。
なんとかしなくちゃいけないけど、でもよく考えたらホントに�なんとかしなくちゃいけない�のかどうかよく分らない——あんまりそんなことの必要性なんか考えたくない、というような——。
 電子レンジが「チン!」と鳴って、タイマーが止まりました。熱い御飯が湯気でクシャクシャになったラップの下から現われました。とてもさっきまでは冷や御飯だったものとは思われないようなホッカホカさでした。
「結局、ここは御飯を食べるところで、訳の分らないモヤモヤを相談するところじゃないんだな」——そんな感じで、磯村くんは御飯を食べていました。
「一人で住むって、なんかアテでもあるの?」
お母さんはそう言いました。�いい�とも�いけない�とも言えないのは、�この子�がどういう気で言っているのか、それがまだお母さんには分らなかったからです。
「別に」
磯村くんは言いました。「いきなりそんな具体的なこと言われたって、別にまだそんなこと考えてないしサ」——磯村くんがそう言いたがっていたことは確かでした。何故かと言えば、「別に」とだけ言った磯村くんは、その日初めて�不機嫌な顔�を見せたからです。
「いいかな?!」——テレビの向うで�誰か�がそう言いました。
「いいとも!!」
「バカな奴等がそう言ってる」——磯村くんは思いました。「あれぐらいのことだったら、僕だって出来るサ」——テレビに出ている�いいとも青年隊�の屈託のない笑い顔を見て磯村くんはそう思いました。
「ねェ、お母さん、どうして家のまぜ御飯てこんなに人参ばっかりなのサァ!」
磯村くんは言いました。
「だってあなた達、好きじゃない」
お母さんはそう言いましたけど、でもホントは磯村くんは、「いいのよ、別に心配しなくたって。いつまでも家にいらっしゃい。何も悪いことしてないんだから�あなた達�は」って、そうお母さんに言ってもらいたかったんです。
でももう無理ですよね。お母さんは�お人好し�になってしまったし、磯村くんは髭がある年頃になっているんだから。
「やっぱり僕、一人で住まなくちゃいけないのかな?」
磯村くんは茶碗の中のまぜ御飯を見て、そんな風に思いました。昔、磯村くんのお兄さんが人参が嫌いだったから、それを治そうと思って、磯村くんのお母さんは、人参のミジン切りの沢山入ったまぜ御飯を作ったのです。
「おいしい、おいしい」と言って食べていたのは小さい時の磯村くんですが、でもよく考えたら、別に磯村くんは、人参なんか好きでも嫌いでもなかったんです。
「家の御飯て、こういうんだなァ……」
 磯村くんは、黙ってお昼を食べていました。
「あなた、お布団干したの?」
お母さんは言いました。
「ウン」
外はいいお天気で、磯村くんはその日の朝起きるとすぐに、ベッドの上掛けをお日様に当てたのでした。(別に、深い意味なんかないですけどね)
 空は、ゆっくりと曇り空に向って進んで行きました。
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