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無花果少年と瓜売小僧08

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  8「高幡不動」というところは、昔はお不動様の門前町として栄えたところです。今は。なんというのでしょう? �その内ニュ
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「高幡不動」というところは、昔はお不動様の門前町として栄えたところです。
今は——。
なんというのでしょう? �その内ニュータウンになるところ�とでもいうのでしょうか。ともかく、そんなところです。初めて磯村くんがこの町に降り立った時、「人がいないんだァ……!」と思ってホッとしました。人がゴチャゴチャいる高円寺の駅前から、おんなじような人間ばっかりがいる(もしくは�しかいない�)大学《エスエフ》の構内へという、そのルートを一歩でもはずれたらこんなところがあるんだということは、ほとんど感動に近い驚きでした。
その雨の午後、雨はもう上っていましたが、空模様はまた雨が降り出すのかそれともこのまんま夕暮れに突入してしまうのか、よく分らないような暗さでした。
駅を降りると右手には�お不動様�に続く参道があって、磯村くんの前をライトバンが一台、しぶきを上げて通って行きました。しぶきと一緒に蒸気も上げて。
それは、古い街にしか残っていない、生きている人間の吐き出す熱い息のように、磯村くんには思えました。
参道の入り口には小さな食堂とラーメン屋と喫茶店が何軒かあります。いつか友達と一緒に見に行ったにっかつロマンポルノの中にしか出て来ないような、古い、田舎っぽい�青春�がそこに�溜り場�としてあるような感じがして、磯村くんはドキドキしました。道を渡ってその先にある、小さな不動産屋に行く手前で、誰かが縄を張って磯村くんの脚を引っかけようとしているような、そんなロマンチックな匂いのある街のように、磯村くんには思えたのです。
勿論、参道の反対側には大きなスーパーがありますし、アーケードの商店街もあります——まるで炭鉱のある古い田舎町のように。
「幌馬車が通っても不思議はないや」——磯村くんはそう思いました。
勿論、�人通りのない参道�は意味のないものです。土産物屋さんや仏具屋さんやおそば屋さんは商売上ったりになってしまうからです。でも、磯村くんはそんな静かな通りを歩いていて、そこがさびれてるとか見捨てられているとか、そんな風には思いませんでした。
確かにそこが、昔栄えた町だったのだということは確かでした。でも、だからといって今はさびれたというのではなくて、そう、言ってみれば、�誰かが来るのを待っている町�というようなところでした。決してさびれもせずに、永遠に誰かが来るのを信じて待っている町——そんな風に磯村くんは思いました。
「百草園《もぐさえん》駅十二分。新築。6畳・DK2畳。風呂付き。3万7千円。学生向き」とか、「高幡不動駅七分。築2年。6畳・DK。衛生トイレ、風呂付き。3万5千円」とか、そんな字が並んでいるガラス戸の貼り紙を、磯村くんは生まれて初めてしげしげと覗き込みました。誰もいない駅の�相談所�ではなく、そこは本物の不動産屋さんでした。
「なんにも知らないんだから教えてもらおう」と思って、磯村くんはガラス戸に手をかけました。
「あのう、今すぐっていうんじゃないんですけど、借りるかもしれないと思って、どういうのがあるのかちょっと知りたいんですけど、いいですか?」
磯村くんは、なんにも言わずに黙っている不動産屋さんのおじさんにそう言って、「そうだよ、僕だってこういうことしてもいいんだ」って、そう思いました。
磯村くんがこの町に越して来るのは、それから二週間が経《た》ってからのことなのです。
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