日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 作品合集 » 正文

無花果少年と瓜売小僧13

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  13 磯村くんは、自分が一人暮しを始める理由を�一人でチャンとやって行ける修行をする為�という風に決めていました。お母
(单词翻译:双击或拖选)
 
  13
 磯村くんは、自分が一人暮しを始める理由を�一人でチャンとやって行ける修行をする為�という風に決めていました。お母さんと、お兄さんの運転する車で冬枯れの多摩川の川原を見ながら走っている時、そういう風に思ったのです。
磯村くんの人生の第一幕は、磯村くんがその車から降りて不動産屋さんの前に立った時に終っていたのでした。後は、新しく始める第二幕の段取りをつける為の具体的な作業だけでした。第一幕と第二幕の間にある幕間《まくあい》は、だからドンドンとその為に進められて行ったのです。
 電話はどうするのか?
「ダメよ、それがなかったらあなた、こっちの方が心配よ」というお母さんの一声で、サッサと手続きがされました。
部屋は、どっちかといえば新築のアパートの方がいいとお母さんが言うのにも拘らず、磯村くんが「こっちの方がいい」というので�築二年�の、少しすすけているといえばすすけているけれど、でも見た目にはどうといって違いのないような、六戸建のアパートの一階になりました。
磯村くんは、新しい部屋がこわかったんです。まだ誰も住んでない部屋を見た時、どうやってその部屋に住んだらいいのか自分はちっとも分らないでいることに気がついたのです。
どうやら磯村くんは、�そういう趣味�で、それが�ダサイ�というハンコを押されるということに縛られてしまったみたいなのです。
誰も住んだことのない部屋を「ここがいい」と言ってもいいのかどうか、磯村くんにはよく分りませんでした。それよりも、誰か前に人が住んだことのある部屋だったら、その部屋のダサさを、その、前に住んだことのある人間のせいに出来るかもしれないと思いました。
それよりも——でもそんなことよりも、�築二年�のアパートの方には縁側があって、庭とは言えないけれど少なくとも庭にも出来るような�空間�があって、そしてその向うの垣根越しに貧乏くさい�畑�があるのが目につきました。
しょぼしょぼと冬の菜ッ葉の生えている畑を見て、そしてその手前にある、少なくとも人が住んだことのある壁を見て、磯村くんは「ここなら耐えられる」と思ったのです。何に耐えられるのかといえば勿論�寂しさ�にですけれども。
 ダサいとかダサくないという問題を通り越して、磯村くんは、「人が恋しい」と思いかけていました。
学校に行って磯村くんは、「今度一人暮しするんだ」と、友達に言いました。
「ヘエーッ、どこ?」と訊かれて、「ウン、高幡不動」と言いました。
「あんなとこ住むのォ?」というのと、「近くていいじゃない」というのと、意見は二つに分れましたが、「ウン、いいでしょ」って言う磯村くんは、もういつものニコニコした磯村くんでした。
磯村くんは、もう頭の中で「平気だな」と自分に言いきかせて、一人暮しには平気の態勢を作り上げていました。でもまだ「うん、遊びにおいでよ」とは誰にも言えはしませんでしたけれども——。
 少なくとも一人暮しを始めてそしてそれに馴れるまでは、迂闊《うかつ》に人を呼んだりしてドンチャン騒ぎなんかやらない方がいいと思っていました。
磯村くんはシーンとして、「冷蔵庫はどうするの? テレビは持ってくの? ベッドはどうするの? 持ってくの? 置いてくの? そうよ、別になくなったら帰って来た時困るものね。取り敢えずお布団持ってく? あなた家具だって少しいるんでしょ?」というようなお母さんの声の中で「分った」「ウーン、分んない」というような、曖昧《あいまい》な返事だけをしていました。
とにかく磯村くんには、一人暮しを始める時、具体的に何がどれだけいるのか、それがよく分りませんでした。とにかく大学はもう少ししたら冬休みに入っちゃうんだし、そうしたら帰って来るんだろうから、とりあえずは実験的に必要最小限度のものだけを持って行けばいいんじゃないかとお母さんに言われるまでもなく、磯村くんの頭には必要最小限度のものだけしか浮かびませんでした。
お母さんと一緒に選んだカーテンが掛けられて、お母さんと一緒に選んだ一通りの食器が運ばれて、家にあったお客さん用の予備の布団が運ばれて、新しいストーブと小さな冷蔵庫とトースターと、机と本箱とカセットテープとラジカセが運びこまれたら、もう荷物はそれだけでした。
引っ越しも、お兄さんが運転手になる筈だとお母さんは思っていたのですが、「日曜日二週も続けて運転手させられる身にもなってよ。第一、あの車じゃ荷物運べないよ」というお兄さんの発言と、「いいよ。そんな、親子揃っての引っ越しなんて、小学生じゃあるまいしィ!」という磯村くんの発言で、引っ越し屋さんのトラックに磯村くん一人が同乗して行くだけになりました。
まるで一人息子がお嫁入りする時みたいな騒ぎ方をしていたお母さんですが、それも、引っ越し当日のトラックの上にある荷物の少なさを見て「これだったら別にどうってことないんだ」という安心をしました。
「お腹空いたら帰ってらっしゃいよ。ちゃんと御飯食べるのよ。それから、火だけは注意して頂戴よ、あなた一人なんだからね!」と、クドクドと言うお母さんに「分った」「分った」と言っていた磯村くんは、でもよく考えたら、それ以外はなんにも分らないでいたのでした。
引っ越して来て第一日目の晩、日が暮れる大分前に明日の朝御飯のパンと牛乳とティーバッグは買ってあったし、晩御飯は「ほっかほか弁当」を買って来てすませてあったし、当座の生活費として二万円は貰ってあったし、おばさんからは餞別《せんべつ》で五万円も貰ってあったしでなんの心配もなかったのですけれど、鳴らない電話とテレビのない空間を見つめているのはなんとなく寂しいもんだなと、それだけを磯村くんは思いました。
「ラジカセだけを頼りにして生きてるなんて、とっても大学生らしいな」と、磯村くんは、木川田くんの家に電話をした少し後で思いました。
 木川田くんは、留守でいなかったのです。
「電話番号は知ってるから、その内掛けて来るさ(いつかは)」と、磯村くんは思いました。
「そうだ、みんなに引っ越しの連絡をしなくっちゃいけないんだ。どうしようかなァ……」と思いました。
そう思ってズーッとしばらくして、「そうか、一人暮しってこういうもんなんだ」と思って、磯村くんはどうやら、落ち着いて自分の部屋の中を眺めることが出来るようになったのです。
庭に面したガラス戸のカーテンを少し開けて、内側についた露を少し手で拭いて、「外の畑が見えるかなァ」と思って磯村くんは暗い外を覗いてみましたが、見えるのは、暗いガラス戸に立ちふさがっている自分の影法師だけでした。
第一幕の幕を引くことだけを考えていた磯村くんは、でも、第二幕の演技も台本もなんにも知らないまんまでいる自分には、まだ気がつけないでいたのです。
「星が多いなァ」と思って、磯村くんは、静かに夜空を眺めていました。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%