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無花果少年と瓜売小僧22

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  22 木川田くんの二度目の電話は、六時少し前にかかって来ました。「今日ちょっとバイト遅くなりそうだから、七時過ぎちゃう
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 木川田くんの二度目の電話は、六時少し前にかかって来ました。
「今日ちょっとバイト遅くなりそうだから、七時過ぎちゃうけどいいィ?」と木川田くんは言いました。
「何時ぐらい?」
磯村くんも言いました。
「七時半過ぎちゃうと思うけど、八時までにはなんないと思う」と、木川田くんは言いました。
「うん、待ってる」そう磯村くんは言いました。
「なんか買ってくからサァ、待ってて」と、珍しく木川田くんは、やさしく言いました。
「うん」と言った磯村くんは、もう別に取り立てて怒っている磯村くんではありませんでした。
 帰って来て、濡れた服を脱いで、乾いた服に着替えた磯村くんは、木川田くんの電話の後、濡れた服をお風呂場に持って行って、「電気洗濯機買おうかな」と思いました。「もう家にはねだれないし、どうしようかな」と思って、「木川田に言ってみよう」と思いました。「お金はどうしよう」と思って、「もう、いろんなこと考えんのやめよう」と思って、二週間閉めっぱなしになっていた窓ガラスを開けて、掃除を始めました。まだ�男臭い�というより、湿った畳の匂いの方が強い、磯村くんの部屋でした。
着替えたばかりの乾いたシャツは窓から入って来る冷たい風の中で、まるで乾布まさつみたいに磯村くんの体を熱くして、「サァ、早くやっちゃおう!」という気に磯村くんをさせました。何がなんだかよく分らないけど、でもしっかりしなくちゃいけないんだということだけは磯村くんにも分りました。
小さな箒《ほうき》で、あまりないゴミを窓の方に掃き出して、「隣りの畑の白菜にあんまり埃をかぶせちゃいけないな」と、関係のないことを思いました。低くて小さな垣根の向うにあるシケた畑の白菜が、みぞれの中で、それでも健気《けなげ》に立っているのを見て、磯村くんはそう思ったのです。
だから、窓を閉めた後の磯村くんは、別にイソイソとかジリジリして木川田くんの来るのを待っているというような磯村くんではありませんでした。
開けっ放しにしていた窓の付近の畳がみぞれのせいで濡れているのを見て、オタオタと布巾《ふきん》で拭き始めた磯村くんは、それをお風呂場にポンと放りこんで、読みかけになっていた岸田秀先生の『幻想の未来』をボストンバッグから取り出すと、沸いたばかりのお湯で熱い紅茶を入れて、それを飲みながら畳の上で、横になってページを開きました。
 もう、洗濯機のことはどうでもよかったのです。
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