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無花果少年と瓜売小僧23

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:23 木川田くんがやって来たのは、七時四十分を過ぎて、五十分がもう八時の方向に針を進めようかとしているそんな時間でした。木
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 木川田くんがやって来たのは、七時四十分を過ぎて、五十分がもう八時の方向に針を進めようかとしているそんな時間でした。
木川田くんは新宿ステーションビルのビニールの袋から、小さな肉饅頭とクタクタになったピザと、冷たくなった焼鳥と、サニーレタスの葉っぱの茶色の部分がやけに目立つサラダのパック二つをガサゴソと取り出しました。
「腹減ってなァい?」
「うん、減ってる」
木川田くんの質問に磯村くんは答えました。
「今作ってやっからな」と木川田くんは言って、寝っ転がって相変らず岸田秀先生の『幻想の未来』を読んでいる磯村くんのところに、キスしようと思って顔を近付けました。
「何すんだよォ」
おおいかぶさって来た木川田くんを見て磯村くんはそう言いました。
「折角キスしてやろうと思ったのにィ」と言って、木川田くんは、口をとんがらしました。
「ウン!」と言って、磯村くんは、少し不貞腐《ふてくさ》れたように木川田くんの方に向き直って、木川田くんは、その口の先にちょこっとだけキスをしました。
「なんだァ、お前、こんなもん食ってたの?」
テキパキと立ち上りかけた木川田くんは、磯村くんの枕許にある赤いプラスチックのお皿に残ったクラッカーを見て言いました。
「うまい?」
「別に」
木川田くんの問いに磯村くんは答えました。
「あんま、うまくねェな」
一枚だけ残ってしけっていたクラッカーをクシャッと口の中にほうりこんで、木川田くんは言いました。
「うん」と言ったのは磯村くんです。
「ねェ、磯村ァ」
寝っ転がったまんまの磯村くんの横に、ペタンと膝をついて木川田くんが言いました。
「なァに?」と言って顔を上げた磯村くんの前には、小さなホーロー引きのカップと赤いプラスチックのお皿を持った木川田くんの手があります。
「俺、ここに来ちゃダメ?」
木川田くんは言いました。
「どうして? 来てるじゃない?」
磯村くんは言いました。「人が電話したって出て来ないで、人が帰って来るとスグやって来るくせに、なにが�来ちゃダメ?�だよ」とか。すねながら。
「そうじゃなくって」
木川田くんは、お皿とカップを片付ける為に立ち上って、流しの前でそう言いました。
「なにを?」
磯村くんは言いました。
「ここに、住んじゃだめ?」
木川田くんは、もう一遍磯村くんの前にペタンと坐ってそう言いました。
「どうして?」
そう言った磯村くんの前にあったのは、今迄見たこともないような、明るく輝く、あどけない木川田くんの顔でした。
「俺、親と喧嘩しちゃった」
木川田くんは、まるでペロッと舌を出すいたずら小僧みたいな顔付きで言いました。
でも、木川田くんは決して、笑いながらそれを言ったのではありません。磯村くんは何故か、「どうしてそういう哀しいことをすんの?」と思わず言い出したくなってしまいそうになりました。そんな木川田くんの顔でした。
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