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無花果少年と瓜売小僧24

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  24 木川田くんは別の紙袋から小さなお鍋を取り出して、磯村くんに「ドンブリかなんかあるゥ?」と訊きました。「俺、親と喧
(单词翻译:双击或拖选)
 
  24
 木川田くんは別の紙袋から小さなお鍋を取り出して、磯村くんに「ドンブリかなんかあるゥ?」と訊きました。「俺、親と喧嘩しちゃった」と言ったすぐ後です。
「どうして?」とだけ言った磯村くんに、「後で話すから。腹減っちゃってェ」と言って、小さなお鍋を取り出したのです。
「そこにあるけどォ……」と、磯村くんは流しの横にある、小さな造りつけの食器棚を指しました。
「これ?」
木川田くんの出して来たのは、小さな白い強化樹脂で出来たボールのような丼でした。
「うん。それじゃダメ?」
何にするのかよく分らない磯村くんは木川田くんに訊きました。
「どうかなァ?」
白いドンブリをためつすがめつして、新しいお鍋の中に入れてみたりして「やっぱりよくねェや。なんかねェかな」と言って、木川田くんは又、流しの横にある小さな食器棚を覗《のぞ》きこみました。
「なんにもねェのな」
木川田くんは言いました。
「なにすんの?」
磯村くんは言いました。
「肉マン温《あつた》めようと思ってサ」
木川田くんは言いました。
「フーン。いいじゃない、別にそのまんまでも」
磯村くんは言いました。「別に電子レンジがある訳じゃなし」とか思って。
「なこと言ったって、お前《メ》ェ、温《あつた》けェ方がおいしいもん」と木川田くんは言いました。
「これでいいかな?」
木川田くんは食器棚の中から、磯村くんの御飯茶碗と——何故か電気釜もないのに御飯茶碗だけはある磯村くんの一人暮しです——中ぐらいのお皿を取り出すと、それをもう一遍お鍋の中に入れて「大丈夫」と言いました。
「何すんの?」
立って来て、磯村くんは木川田くんの手許を覗きこみました。
「こうやってね、こうやってね、そんで蒸すの」
木川田くんは言いました。
まず御飯茶碗をお鍋の中に置いて、その周りにお水を少し入れて、そしてその上にお皿を乗っければ即席蒸し器の誕生という訳です。
「ふーん……」と言って磯村くんは見ていました。
木川田くんは肉饅頭のプラスチックのパックをバリバリと開けて、即席蒸し器のお皿の上に並べました。
「ホラ、こうすれば大丈夫だろ」
木川田くんは言いました。
「ホントだ」
磯村くんは言いました。「そんなことどこで習ったの?」と続けました。
「ここだよ。ここの問題」と、木川田くんは自分の頭を叩きました。
木川田くんが自分の頭を叩く為に手を上げた時、磯村くんがまたなんかされるのかと思ってビクッとしたことなど、勿論木川田くんは知りません。
「あれェ?」
木川田くんは即席蒸し器の蓋をした時にそう言いました。お饅頭がお鍋のヘリから頭を出しすぎていて、蓋がチャンと閉まらないのです。
「まァいいや」と言って、木川田くんは、それをそのままガスレンジに掛けました。お鍋の中はなんか不安定で御飯茶碗がゴトンゴトンと揺れているみたいでしたが、木川田くんは「まァ、大丈夫だろ」と思いました。
「ふーん、そうやるのか」
磯村くんは火を点《つ》ける木川田くんを見てそう言いました。
「そうだよ」
木川田くんはニコッと笑って言いました。
ニコッと笑って、そのまんま又木川田くんが顔を近付けて来たので、「今度こそ」と思って、磯村くんは緊張しました。
「磯村?」
木川田くんが言いました。
「なァにィ……」
磯村くんの目は、もう半分つむりかかっています。
「アルミフォイルかなんか、なァい?」
木川田くんが言いました。
「アルミフォイル?」
目だけは現実に帰って、口許だけは夢見心地の磯村くんがぼんやりと尋ねました。
「うん、アルミフォイル」
木川田くんは床に屈みこんで、焼鳥のパックを拾い上げるとそう言いました。
「何すんの、そんなの?」
磯村くんはそう言いました。
「うん? 温《あつた》めんだよ」
「どうやって?」
「直接フライパンの上に乗っけたら焦げちゃうでしょ? だからサ、アルミに包んでね、そんでフライパンで焼くの」
「へーッ」と磯村くんはただ感心して見ています。
木川田くんは感心されて見られていますが、だからと言って別になんにもすることはありません。キョロキョロとあちこちを見回して、「このまんまでいいか?」と、磯村くんに訊きました。
「うん、いいよ」
磯村くんは言いました。
「オーブントースターだっていいけどなァ、でもやっぱり、このまんまで焼いたら焦げちゃうだろ?」
焼鳥のパックと流しの隅に置いてある新品のオーブントースターを見比べて、木川田くんは言いました。新品のオーブントースターの床板に焦げ跡を作りたくなかったからです。
「今度、アルミフォイル買っとくよ」
磯村くんが言いました。
「うん」と言って、木川田くんはオーブントースターのタイマーをセットしました。
「そのまんま焼いちゃうの?」
磯村くんは、木川田くんの焼鳥を見てそう言いました。
「うん?」
木川田くんは焼鳥を見て、磯村くんを見て、それからこう言いました。
「違うよ。ピザ温《あつた》めんだよ」
「あ、そうか」
磯村くんは言いました。
レンジの上では、水蒸気を吹き上げるお鍋の底がガタガタと鳴っています。
「磯村、テーブルは?」
木川田くんが言いました。
「うん、そこ」と言って、磯村くんは部屋の隅から、脚付きの折畳み式のミッキー・マウスの絵の付いたトレーを持って来ました。
「そのまんまでいいよ」
トレーの脚を広げながら、磯村くんは、木川田くんの手の中にある焼鳥を見て言いました。
「そんなのヤだよ」
そう言って木川田くんは、焼鳥のパックを開けて、それを白いお皿に移しかえてから、磯村くんが部屋の真中に広げた小さな小さなテーブルの上にそれを置きました。
「どこでこんなこと覚えたの?」
磯村くんがそう言ったのは、木川田くんが食卓についた時です。
 テーブルの上には、溢れんばかりの御馳走が並んでいました。勿論その御馳走が溢れそうだったのはテーブルが狭すぎたからですが、ピザパイと焼鳥とサラダと肉饅頭と、それから磯村くんが家から持って来たインスタントスープがカップの中で湯気を立てているのを見ると、やっぱり「御馳走だ!」という感じがしました。なにしろ磯村くんが越して来て以来、こんなにテーブルが御馳走で溢れ返ったことなどないからです。そんなことを考えもしなかったから、磯村くんは「これでいいや」と思って、小さな一人用のお盆《トレー》を選んだだけなのですから。
磯村くんの知っている男の人の中で、料理をする男の人というのは磯村くんのお兄さんだけでした。バジリコ風味のスパゲッティとか、イタリア風のよく分んないクズ肉の煮込みとか、そういうものばっかり磯村くんのお兄さんは、本を見ながら作っていました。家庭的なことは一切やらなかった磯村くんの家の男性達の中で——なにしろ一番家庭的なのは放っといてもゴミの日にゴミを黙って出しに行くお父さんだというぐらいに、磯村くんの家の男性達は何もしませんでしたが——磯村くんのお兄さんのこの�趣味�は、一人だけ異色でした。
なんでお兄さんがそんな気になったのかはよく分りません。磯村くんに言わせりゃ、「はやりの�教養�はみんなやりたいだけでしょ」ということになりますが、お兄さんに言わせりゃ「お前にはなんにも分んない」で、結局なんにも説明してくれないのでさっぱり理由は分りません。やっぱり磯村くんの言う通り、�それが今の教養だ�ということになるとなんでも手を出さずにはいられないお兄さんのダサさの表われだというのが一番近いのでしょうが、結局そんなことは自己矛盾をさらけ出すだけでした。�男の手料理�をやっている時のお兄さんの腰付きは、他のどんな時よりも女性的な腰付きでしたから。�好きだからやってる�ですむことを、でも磯村くんのお兄さんはそう言わなかったので、すべての事態はこじれたのでした。
状況があまりにも自分とかけ離れて来ると平気で残酷なことをモノローグに出来ちゃう磯村くんなんかは、そのお兄さんのマナ板に向う腰付きを見て、思わず「いいケツしてやがんなァ」と言いそうになってしまったくらいです。
�お兄さんのイタリア風�は、なんの本を見ればそんなことが可能かということぐらい磯村くんにも分りましたが——でも、どうしてそんな本があるからってその通りに作らなくちゃいけないのか、作ろうと思うのかなんてことは磯村くんにはさっぱり分りませんでしたけど——でも木川田くんの�お料理�はどこで習って来たものか、磯村くんにもさっぱり見当がつきませんでした。
蒸し上った肉饅頭は、一部はふやけすぎていて、一部は直接お鍋に当って焦げていて、そして更に大部分は、お鍋の蓋にくっつきすぎて皮が剥がれて途中まで中味が見えかかっていましたが、でも、磯村くんは丼やお皿を使ってお鍋を蒸し器に変える方法なんて知りませんでした——少なくとも、お母さんがそんなことをやっているのを見たことがありません。
結局アルミフォイルがなくて焼鳥は冷たいまんまでしたが、でも、電子レンジがない時、フライパンとアルミフォイルを使えば焼鳥がチャンと温められるんだ、なんてことも知りませんでした。
オーブントースターとピザの関係ぐらいは知っていましたが、アルミフォイルがない時直接突っ込んでしまえば、少なくとも底板に溶けたチーズがくっついたとしてもチャンとピザは焼けてしまうということも、よく知りませんでした。
閉店間際の食品売場では、一コ二百八十円のサラダのパックが二つで二百八十円になるとか、おいしくないインスタントのポタージュを如何にもおいしく見せる方法とかも、やっぱり磯村くんは知りませんでした。
なんでそんなにもテキパキしててなんでも知ってるんだろうと、磯村くんは思ったのです。「もっと一杯色んなこと知ってる木川田と一緒に暮したら、きっと一杯色んなことを知れるだろう」と思ったから、磯村くんは言ったのです——「どこでこんなこと覚えたの?」って。
「別に。こんなこと常識だよ」と木川田くんは言いました。磯村くんは「ふーん」と言いましたが、でも自分の頭のどこを探しても、そういうものが�常識�になっているというインデックスは見つからないのでした。
「よく知ってるねェ」と磯村くんは言いました。
「ほうォ」と、肉饅頭を口に放りこみながら木川田くんは言いました。
そして「熱《あち》ッ」と言いました。
ともかく磯村くんにとって、木川田くんの作った�ゴハン�は、すごくおいしかったのです。
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