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無花果少年と瓜売小僧30

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  30 話はもう一遍磯村くんのアパートに戻ります。 木川田くんは最後の洗い物の水を切って「おー、冷て」と言って、磯村くん
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  30
 話はもう一遍磯村くんのアパートに戻ります。
 木川田くんは最後の洗い物の水を切って「おー、冷て」と言って、磯村くんはなかなかヤカンのお湯が沸きそうにないので、「お風呂沸かそうか?」と言って、お風呂場に入って行きました。
磯村くんがいなくなるとヤカンが�カタカタカタッ�と言って、シューッとお湯が沸き始めました。
「磯村、お湯沸いた。俺コーヒーにするけどお前、紅茶ァ?」と木川田くんが言いました。
�ジャーッ�という水音を背景にして、磯村くんが「うん」と言いながらお風呂場から出て来ました。
「いいよ、俺やるから坐ってて」
木川田くんが言いました。
「うん」と言って、「いいよ、紅茶ぐらい僕が淹《い》れる」と言って、磯村くんは洗ったばかりのティーカップを取りました。
「テレビでも点《つ》けようか?」
磯村くんが言って、木川田くんは「うん」と言って、二人はそれぞれの飲み物を持ってテレビの前に坐りました。
テレビでは、何度目かの『マッド・マックス』をやっています。
「ねェ、喧嘩したって、そのこともあるの?」——テレビの画面を見ながら磯村くんが言いました。
「�そのこと�ってェ?」
木川田くんは磯村くんに向って訊きました。
「だから、あのこと」
磯村くんは自分のティーカップを見ながら、なんとなく言っちゃいけないかなという顔付きで答えました。
木川田くんが「うるせェな」って言って、その後で「俺なんかサァ、なんも分んないけど」って言いながら「カウンセリングに来いってことは気休めに来いって言ってることだよ」みたいなことを言って、なんとなくそれがそのまんまになっていることが、磯村くんには気詰まりだったのです。
木川田くんは「ああ」って言って、「それもあるかもしんないけど、それとは関係ないかもしんないけど、なんかよく分んないなァ」と言いました。
「来年どうするの?」
磯村くんは訊きました。
磯村くんが言っているのは�今年�ではなく、来年もう一遍浪人してどこかの大学を受けるのか、ということです。
「分んない」
木川田くんが言いました。
「どうせ今年受けたってダメだしサ」
「うん。でも、中大受けてみればいいのに」
磯村くんが言いました。別に自分の行ってる大学がいいとこだからとかっていう訳ではないようでした。
「うん。でも、来年どうするかって、俺、春になってから決めようとかって、思うんだ。だってサ、今年サ、俺、失恋しちゃっただろ」
木川田くんは突然ボロボロと涙をこぼし始めました。テレビでは、暴走族に追われたアベックが追い詰められて、寄ってたかって車を叩き壊されるシーンをやっていました。
「テレビ小さくするね」
磯村くんはボリュームを下げて、「一体どうしちゃったんだろ」と思っていました。
「俺サ、ズーッと先輩と一緒にやってこうと思ってサ。したらサ、先輩サ、今年大学入っちゃうだろ。それはいいけどサ」
「うん」
「でも俺、先輩に嫌われちゃって」
「どうしてサ、どうしてそんなこと言うんだよ」
「いいんだよ。そんでもサ、俺サ」
テレビでは女の人が絶叫していました。
「なんか、なるって、思ってたのね」
木川田くんがグスッとしゃくり上げたので磯村くんはあわてて「テレビ止めるね」って小さな声で言いました。
木川田くんが小さな声でうなずいて磯村くんがテレビに手を伸ばそうとすると、テレビのブラウン管の中では、暴走族によってたかって車の外に引きずり出される若い男の人の、自分の�運命�を承知しているみたいな顔が映っているところでした。勿論その後で、その男の人は、男の人達に強姦されちゃうんですけど……。
磯村くんはギョッとして、そしてすぐにテレビを消しました。
目の辺りをグショグショにした木川田くんが鼻をこすりながら「どうしたの?」っていう顔をして磯村くんを見ました。
「ううん」——そう言って磯村くんは、木川田くんに「どうしたの?」って訊きました。
「どうしたの、急に泣いて?」
「ごめん。なんか知らないけど急に悲しくなって来ちゃって」
「どうしたんだよ?」
磯村くんは木川田くんの肩をつかまえました。抱くのではなく、叩くようにです。
「うん、いい」
木川田くんは言いました。
「俺ってバカだったのね」
木川田くんが言いました。
「どうして?」
磯村くんが言いました。
「だってサァ、まだ分んなくてサ、なんか、先輩のことがまだ忘れらんなくてサ、そんでサァ、先輩のこと思ってればまだなんもしなくていいとか思っててサァ」
「そうなの?」
「そうだよ。俺ズーッと、先輩がなんかしてくれるって勝手に信じてたから。だから、先輩に嫌われても、まだそんでもそれ嘘だって思ってたから。そんで、フテてたの。そんでね」
「うん」
「�どうすんだ、お前?�って、言うのね」
「うん」
「親父がね、俺ズーッと正月、家にいたからサ」
「そうなの?」
「うん、俺、いい子だったもん」
「だったら、電話してくれりゃいいのに」
「だって、正月なんか、電話したら悪いだろ」
「どうして」
「だって——。俺サ、四日に電話したんだよね」
「うん、そう言ったね」
「こっちに電話したらいないだろ」
「うん」
「�退屈したら早く帰って来る�って言ってたからいるかもしんないなと思って」
「ごめん」
「ううん。俺サ、家にいるのやだったのね」
「どうして?」
「親父はなんだかんだ言うし。結局は俺がいけないのかもしんないけど、オフクロは暗ーくなってるし」
「そうなの?」
「そうだよ」
磯村くんは、なんか、なんにも考えるのがいやになって来ました。
「俺だって真面目にやってるし、そりゃ、バカだったかもしんないけど、でも、バカじゃなくなってから俺、そんなヘンなことあんまりやってない。俺、磯村と会ってから変ったんだよ」
「そうォ?」
「うん。あー、バカだったと思って、自分でなんとかしなくちゃいけないと思って、真面目にバイトだってしてたもん。十二月からサァ、俺、電気屋でバイトしてただろ」
「うん」
「あれだってサ、お前知らないかもしんないけど、近所の家で、オバサンと二人でやってたのね、オジサンが。そしたら急にオバサンが入院しちゃって」
「あ、そう言ってたね」
「うん」
そういう訳だったのです。
「俺、前から顔知ってたしサァ、お母ァちゃんがサァ、�お前、誰かいい人いないかねェ�っていうからサ、バイトだったら俺やってやるって、それでやってたのね」
「うん」
実はそういう訳だったのです。
「俺どうせ暇だからって言ってサ」
「うん」
「そしたらお母ァちゃん、俺やっぱりまだ浪人してると思ってるだろ」
「うん」
「予備校なんかズーッと行ってねェのによ」
「うん」
「そんでもサァ、俺が�やる�って言うからサァ、�いいの?�って言って、俺平気だからって、それでやってたのね。そんなのに�そんな近所のどうでもいいところでウロチョロして�って、親父は言うのね。普段なんか俺のやってることなんかなんも知らねェのによ。会社休みになって、俺、大《おお》晦日《みそか》だから最後だと思って、そのオッチャンの家行っただろ?」
「うん」
「�来年なったらもうすぐ退院すっから成人の日ぐらい迄は悪いけどもうちょっといてくれ�とかオジサン言ってサ」
「そのオバサンどこ悪いの?」
「なんか、子宮の方がどうとかってらしい。よく分んないけど。嫁に行ってた娘が病院行ったり、なんか、オッチャンの飯作ったりなんかしてた。オッチャン、なんか、配達なんかしてたりしててあんまり店にいねェだろ。だから電話番とかね、やってたんだけど。したらサァ」
「うん」
「大晦日でサァ、金貰ったらサァ、近所のガキンチョが来てサァ、�お兄ちゃん行かない?�とか言っただろう」
「うん」
「だから外泊してて、家帰って来たらサァ、もう親父達ゾー煮食ってて、�どこ行ってたんだ!�とか言うのな。そんな、大晦日だから初詣《はつもうで》行ったっていいだろ? そんでもサ、グチャグチャグチャグチャ言うの」
「君、お父さんのこと嫌いなの?」
磯村くんは言いました。
「好きじゃない」
木川田くんは言いました。
「分るけど——。俺のことなんかちっとも分んないし、イライラすんのって分っけど、でもサ、普段家にいる時だってなんにも言わないし、何考えてんのかなんて分んないし、第一、俺にやさしくしてくれたことなんて一遍もねェもん」
そんなこと言われたって、磯村くんも困ります。別にお父さんがやさしくないという訳ではないのですが、よく考えたら、磯村くんだってお父さんにやさしくされたことなんて一遍もないのです。お父さんがやさしくしたがってるなァと思ったことだけはありますが。だから「いい人なんだなァ」と思ったことはありますが。だから、「喜ばなくちゃいけないんだなァ」と思ったことはありますが。
だからといって、やさしくされたなんてことは、一遍だってないんです。嫌う理由なんてないんだから嫌っちゃいけないんだなァと思っていたとしても、だからといってそれでどうだというのでしょう? 今迄それでやって来たんだからそれでいいと、磯村くんは思ってました。
だから今更、「俺にやさしくしてくれたことなんて一遍もねェ」なんて言われたって困るんです。だって、お父さんて、そういうもんなんじゃないんでしょうか? 少なくとも、磯村くんはそう思っていました。
「俺さァ、親父の取り引き先の奴知ってんのね」
木川田くんが言いました。
「取り引き先っていうか、やっぱ取り引き先なんだ、親父が頭下げてっから。そいつがサァ、マゾなのね」
突然、訳の分らない単語が出て来たので、磯村くんは「?」て思いました。
「マゾって知ってる?」
よく分らなかったので磯村くんは「知らない」って言いました。その単語は知っててもどうしてそういう単語が出て来るのかがよく分らないから「知らない」って言ったのです。
「マゾって、ションベン飲むのな」
木川田くんが言いました。
「ションベン?」
磯村くんはなんだか分んないから、オウム返しに訊きました。
「うん。俺のションベン飲むの。ひっかけてやると喜ぶの。バカみてェ」
木川田くんがどこを見てるのかはよく分りませんでした。少なくとも磯村くんの方をではないし、コーヒーカップか、それとももっと遠くか、それはよく分りませんでした。
「親父の取り引き先の奴でサァ、俺そのこと知らないでそいつと付き合ってて、そしたらたまたま、そいつと親父が会ってるの見ちゃったの」
「その人、年上の人なの?」
磯村くんが言いました。
「そうだよ勿論。決ってんじゃない」
「うん、だけどサ」
磯村くんはなんとなく、木川田くんの相手の人がみんな�年上の人�なんじゃないかと思ってはいましたが、�そこまで年上の人�だとは、なんとなく、思ってなかったのです。というよりも磯村くんは、木川田くんが�誰かと≪ナントカ≫してる�とかっていうようなことは、まァ、考えさせられたことはあっても、具体的に木川田くんがどういう相手とどういうことをしているのかなんていうことは考えたことがなかったのに、突然出て来た具体的な�相手�が男の人で年上で、社会的なところになんとなくチャンと存在していそうな人だったから、それで�クラッ�と来たのです。木川田くんが下級生の男の子とドウトカっていうことを聞いた時もショックでしたが、これはもっとショックでした。�すごくショック�というよりは、�そういうショックもあったのか�というような種類のショックでした。
 磯村くんは、普通の背広を着て歩いている普通の人が、やっぱり裸になって、やっぱりいやらしい恰好をして、それでやっぱりセックスとかっていうのをするなんていうことを、よく考えてみたら、考えてみたこともなかったんです。自分とおんなじようなヤラシイものが、自分とは全く違うと思うような、自分があんまりというかほとんど好きになれそうもないような男の人達にもおんなじようにあるということは、気が滅入るような、そして気持が悪くなるようなショックでした。そういうことは、よく考えたら、自分一人のことだけにしておきたかったんです。そうだと思ってたんです。
磯村くんは何が「だけど——」なのかは分りませんでしたが、「お前、ホントに男と寝れるの?」って、木川田くんにチャンと訊いてみたいと思いました。
でも磯村くんはなんにも言わないから、木川田くんは勝手に話を続けて行きました。それは、�寝る�とか�寝ない�とかっていうような次元を超えた話でした——。
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