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無花果少年と瓜売小僧31

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  31 木川田くんは言いました。「俺サ、親父になんだかんだ言われっとサ、そいつのこと言ってやりたくなるのね。なんで俺だけ
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 木川田くんは言いました。
「俺サ、親父になんだかんだ言われっとサ、そいつのこと言ってやりたくなるのね。なんで俺だけがゴチャゴチャ言われなくちゃなんないのかって」
「うん」
磯村くんは、自分だって平気で聞いていられるんだぞってことを表わす為にも、いやでも相槌というのを打たなければなりませんでした。
お風呂の水はジャージャーと音を立てて流れています。どこまでそれが溜ったのかは分りません。その部屋の中には、立って見に行こうとする人はいなかったからです。
木川田くんは続けます。
「ホントだったら、家の親父だってあんまりそういうことは言わないのね」
「どういうこと?」
「ホモ、とか。なんか、タブーみたいだから。やっぱ、そういうのって考えたくないんだろ。俺だってあんま考えたくないから」
少しの沈黙——。
「でも、なんか最近、秋ぐらいから急に、�お前この先どうするんだ�って言い出して、俺、別に分んないから�分んない�って言ってたら、初めの内は黙ってて、それがなんかネチネチ言い出して、�大学行くんなら行け、行かないんだったら行くな�とか言い出して、俺分んないから�分んない�って言って、ホントはあんまりそういうこと考えたくなかったから考えなかっただけなんだけど、�いつまでも男から男へ渡り歩いてる変態みたいな真似しててどうするんだ!�って言うから、俺いやんなって、�別にお前なんかにそんなこと言われる理由なんかない!�って思って、そんで荒れてて——荒れてたんだけど、お前が来る前なんか——」
「そうなの?」
「そうなの。そんでサ、そいつに会ったの」
「�そいつ�って?」
「その、親父の取り引き先の奴」
「ああ……」
「岡田っていうんだけど。ムカァシ会ってて、そんでズーッと会ってなかったんだけど、そいつに秋ぐらい急に会ったら、なんか、憎ったらしくなって、そんで、寝ちゃったの」
ちょっとしたため息です。
「新宿のホテル行ってサ、そいつが裸になってキスしようとすんだよな」
お風呂が溢れてます。
「いきなりキスしようとしたんだけど、俺ヤだから、�脱げ�っつったんだよな」
「ちょ、ちょっと、お風呂止めて来るね」
「うん」
一時停止はそのまんまです。
「したらサァ」
話はそのまんま続きます。
 まだ磯村くんは立ったまんまです。お水は止めたからいいけど、火は点《つ》けた方がいいのかどうか、磯村くんは迷っています。
「俺、そいつの裸見たら急にカーッとなってサ」
木川田くんはそんなことを考えてくれないので、しようがないから磯村くんは坐ります。
「なんか、蹴っ飛ばしたくなっちゃったの」
「ふん」
相槌だけは宙に飛びます。視線なんかは落ちているのに。やっぱり、好きな人が他人と寝ている話なんて、聞きたくはないんです。ましてや、その�好き�がどういう�好き�か分らなくて、その�好きな人�と自分が、まだ宙ぶらりんな関係でいる時なんかは、特に。
宙ぶらりんなまんまでいることがいけないことだとは思えなくても、でも、宙ぶらりんであることを知ってしまったら、宙ぶらりんは宙ぶらりんなんですから。
「そいつが迫って来たらサ」
「うん」
磯村くんは、自分の中を見つめようとしています。見えないけれどなんかありそうな自分の中を。
「�バカヤロ、なに気分出してやがんでェ�とか思って。別にそこに親父がいたって訳じゃないんだけど、なんか、そいつ引っ叩《ぱた》いたら親父がいい気分になるんじゃないかとか思って」
「うん」
でも磯村くんにはなんにも見えません。見えないものは無理なんです。
「どうしてそいつのこと引っ叩いたら親父がいい気分になるのかなんか分んないけど、なんか、でも、俺達がヤな気分になってるのにそいつが一人だけいい気分になってるのなんて気持悪くってヤだとか思って」
磯村くんだって「その生っ白い、誰だか分んなくて見たこともないヤツなんて引っ叩いちゃえばいい」と思いました。
「引っ叩いちゃったの。そしたら親父だって苦労しなくていい、とか、関係ないこと思って」
「そんなこと違うよ」って、何故か知らないけど、磯村くんは言ってみたくなりました。でも「どうして?」って木川田くんに訊かれるのは目に見えていたから、やめました。木川田くんが「どうして?」って訊く時のあどけない顔が、磯村くんにはどうにも苦手だったからです。「誰にも分らないこと平気で訊くなよ」って——。
でも、磯村くんはなんにも言わないので、木川田くんも「どうして?」とは訊きませんでした。「どうして?」って訊かないで、「どうして?」って人に訊く時みたいなあどけない、平気で人の心の中に入って来ちゃうような目をして、そしてそれを自分の心の中に刺し込むように向け直して、木川田くんは話を続けて行きました。
こうなるともう、誰にも手なんかつけられないんですけどね——。
「そしたらそいつ�今日はずい分荒れてんのね�って言うんだ」
「うん」
磯村くんは言いました。
「そいつ男なんだけどサ、女言葉使うのな」
「うん」
やっぱり、磯村くんは、少し吐きそうになりました。
「お風呂点けて来るね」
磯村くんが言いました。
「うん」
木川田くんが言いました。
磯村くんが立って行って誰もいなくなった部屋を見て、木川田くんが言いました。
「磯村、こういう話するのいや?」
「ううん、別に」
磯村くんは、水色のポリバスを見て言いました。「僕ってひとりぼっちなんだな」って、磯村くんは思いました。
「いやならいいんだけど」
木川田くんも誰もいない部屋の中で畳に向って言いました。その時木川田くんは初めて、コーヒーも紅茶も冷たくなっていて、テレビの画面も冷たくなって、なんにも映していないことを知ったのです。
「後、二十分ぐらいで沸くからね」
部屋に戻って来た磯村くんが言いました。
「うん」
木川田くんが言いました。
「そんでね」
木川田くんがまだ続けました。
「そいつ、前からおかしかったんだけど、そん時もっとおかしくなって、俺に、顔踏んづけてくれって言うのね」
「ふん」
磯村くんは言いました。そして、「少し我慢しよう」と思いました。
「したの?」
磯村くんは言いました。
「うん」
木川田くんも言いました。言わなくてもいいことを言ってしまった後の沈黙というのは、やっぱり、言い出してしまった人間がケリをつけなくてはいけません。
木川田くんが言いました。
「顔踏んづけてギューッて押したら、なんか気持よくなって来て、そんでそいつ気分出してっから、�バカヤロ�とか思って、蹴っ飛ばして、ブヨブヨなんだけど、なんか知んない、スゲェ気分出してんの。�バカヤロ�とか思って電気アンマかけて、それで、�こんなことされて気持いいのかよ�って言ったの」
「そしたら、そいつ�うん�て言って、俺があんまりメチャクチャやるんでそいつ舌噛みそうになって、そいつ、�もっとやさしくして�って言ったの」
「なんでそんな残酷なこと言わせるのかな」って磯村くんは思いました。その誰だか知らないおじさんがではなく、やさしくされたがっている木川田くんに、という意味です。
でも、誰にもそんなことは出来ないのです。�やさしい�ということはよく分らないことだからです。
木川田くんは言いました。
「そしたら俺、なんかもうホント、メチャクチャ腹立って来てメチャクチャしちゃったのね。そいつのケツ持ち上げて引っ叩くとか蹴ッ飛ばすとか。そんでもなんかつまんなくなって来たから、そいつのケツ持ち上げて、突っ込んで、やっちゃったのね。そんでサ、やりながらサ�僕ねェ、お父さんに怒られてんのォ�って、言っちゃったのね」
「そしたら——」
あまりのことに、磯村くんもそこへ行ってそいつの顔を踏んづけたいような気がして、そう言いました。
「そしたらそいつ、俺がなんのこと言ってんのか分んないらしくって、�ハァッ、ハァッ�とか言ってるだけなの」
「そんで?」
磯村くんは「早いとこなんとかしてくれ」っていうような気分でした。
「�あんた、木川田って知ってるでしょう�って言って、�俺の親父知ってるだろう!�って言って、�そいつがサァ、俺のことオカマだって言うんだよォ�って。そう言ったら、そいつ、�やめてッ!�って言って、いやがってるんじゃなくて、もっともっと気分出してるんだァ」
悲しいって、そういうことなんでしょうねェ。
「だから�そうかよォッ�って俺言って、そいで引っこ抜いて、そいつの脚引っ張って、便所連れてったのね。そいつの会社そういうの作ってるから」
「そうなの?」
「そうなの」
そう言う時、木川田くんは笑ったみたいです。
「�舐《な》めろ�って言ってそいつ突き飛ばして、そんで、そいつに俺ションベン引っかけたの」
 磯村くんには最早《もはや》、何がなんだか分りませんでした。
「そしたらそいつ�ハァッ、ハァッ�って言って、俺の舐めるの。舐めてそんで、飲んじゃったの。�バカみたい、なんでこんな奴のとこに仕事貰いに行ったり頭下げたりすんだろう�とか俺思って、そんでもう、なんか、哀しくなっちゃったの。なっちゃったけど、別に哀しくなんかなんないで、そいつに�俺がオカマだったらお前だってオカマだろ! そんなのになんだって俺だけ怒らんなきゃなんないんだよッ!�って言って、そんで�明日会社行って言ってやろうか�って言ったの。�お前んとこの部長なんてオカマだぞ�って、�俺とこ来て小便飲んで泣いてんだぞ�って、そんで、親父の会社連れてって、�こいつが俺のこと好きだって言ってるけどどうする�って、そういう風に言ってやろうかと思ったの」
「そんでどうしたの?」
木川田くんが又泣き出したら困るなと思って磯村くんは言いました。
「別に」
木川田くんは言いました。空は曇ってるけどお日様だけは照ってるっていうような、そんなヘンなお天気みたいな木川田くんの顔でした。
「だって別に、そいつ、そういうこと言われるのが嬉しいんだもん」
「どうして?」
磯村くんが言いました。
「だって、マゾってそういうんだもん」
「ふーン」
男の子二人は、大人の人の複雑なやり方が不思議で、よく分らなくて、一緒になって首をひねっていました。
「分んないけど」
木川田くんが言いました。
「なんか、そういうのが好きなんじゃないの」
説明にもなっていない説明に、磯村くんは「ふーん」と言いました。
「そいつ、俺とおんなじぐらいの娘がいんだぜ」
「子供がいんの?」
磯村くんが訊きました。
「うん。俺よか一つか、三つぐらい年下なのかもしんない」
「じゃァ、結婚してるんだ」
「うん」
「そんな人の子供って、何考えてんだろうね」
磯村くんが言いました。
「知らね」
木川田くんが言いました。
磯村くんはまだ会ったこともない、見たこともない年もよく分らない�女の子�のことを考えていました。「ホントに何考えてんだろ?」と思って。
「結婚しててそういうことしてていいのかなァ」
磯村くんは言いました。
「知らね。してんだからいいんじゃねェの」
木川田くんは言いました。
磯村くんは知りませんでしたけれども、木川田くんが一番最初に声をかけられた茶色の皮コートのおじさんも、ジャバ・ザ・ハットによく似たおじさんも、そしてオシッコ飲んじゃうおじさんも、みんな子供がいる、結婚した人でした。ジャバ・ザ・ハットのおじさんなんて子供が四人もいて、一番上の娘になんかは、もう孫まで二人もあったのです。
そして勿論、木川田くんのお父さんだって磯村くんのお父さんだって、結婚していたればこそ、木川田くんや磯村くんの�お父さん�ではあったのです。
「俺昨日、親父にそのこと言っちゃったのな」
木川田くんが言いました。
「何をォ?」
磯村くんが言いました。
「だから、そのこ・と」
木川田くんが言いました。
「昨日帰って来てからむから——。�お前、入試の方どうなってんだ�って言うから、�知らない�って言って、�俺、大学なんて行きたくない�って言っちゃったの。俺、それよかデザイナーになりたいって、そう言っちゃったの」
「なりたいの?」
「分んない。いっそその方がいいかと思って。そしたら、�そんなチャラチャラしたことばっかり考えやがって�って。�お前にそんな才能があるのか�って。俺分んないから�分んない�って言ったの。そしたら引っ叩くからサァ、�じゃァ自分は何やってんだよォ�とか思って」
「言っちゃったのォ?!」
「うん。�お前の知ってる岡田なんて、俺のションベン飲むんだぞ�って」
「どうしたの?」
磯村くんが言いました。
「殴られた。�出てけッ�て。俺別に、出てかなかったけどな」
 その頃木川田くんのお父さんは何をしていたんでしょう?
木川田くんのお父さんは、お母さんと一緒になって、黙ってテレビの『アイ・アイ・ゲーム』を見ていました。
磯村くんのお父さんは、お母さんやお兄さんと一緒になって、教育テレビの『カサブランカ』を見ていました。
日曜日の夜で、一家は揃って集まっていましたけれども、そこには男の子はいませんでした。
「一人暮しするって出て行った男の子は、ちゃんとするんならしなさいよ」って言われて、大学のある町に帰って行きました。
 学生時代に見たハンフリー・ボガートを見て、磯村くんのお父さんは「懐かしいなァ」と思いました。「色々なことを、見てると思い出すなァ」と思いましたが、�色々なこと�がどんなことなのか、誰にもそれはよく分りませんでした。
学生時代に見たイングリッド・バーグマンを見て、お母さんは「若かったのねェ」と思いました。画面の中にいるイングリッド・バーグマンが、です。画面の中の若き日のイングリッド・バーグマンを見て、自分も若かったのだとお母さんは思いました。今の自分が、昔学生時代に見て「大人だなァ」と思った若き日のイングリッド・バーグマンよりももっともっと年を取ってしまっていることを、テレビを見ながらお母さんは忘れていました。
その二人の間に坐って「妙な雰囲気だなァ」と思いながらも、お兄さんは「ふーん」と思って、平気で名画を鑑賞していました。
 木川田くんのお父さんは、別に�山城新伍�が好きだというのではなくて、お母さんが見ているからそれを見ていたのです。
木川田くんのお父さんには、よく考えたら、別に好きな俳優さんはいませんでした。
木川田くんのお母さんは、家にいる時の習慣で、いつものようにテレビを点けていただけです。
木川田くんが�昨日言ったこと�など、お母さんはもう、忘れてしまったことにしていました。よく分らないことを考えても仕方がないからです。そしてそれは、いつも木川田くんのお父さんがしていたことだからです。
「どうして俺ばっかり責められるんだ」って、誰もそんなことを言わないのに、木川田くんのお父さんは一人で考えていました。
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