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無花果少年と瓜売小僧33

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  33 木川田くんは高校に入って、だんだんとニキビが薄くなって来ました。「やっぱり、�やりてェ、やりてェ�と思ってっとニ
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 木川田くんは高校に入って、だんだんとニキビが薄くなって来ました。「やっぱり、�やりてェ、やりてェ�と思ってっとニキビなんかもそんな風になんのな」——なんてことを鏡見ながら、ひとりごとで言えるようにもなりました。
木川田くんが滝上くんに会ったのはニキビが薄くなって来る、もう少し前です。
 木川田くんは、自分の中で�バカ�と�リコウな人�の判別が出来るようになっていました。
たとえば、ロックの好きな�蓑浦くん�はバカです。何故かというと、木川田くんは�蓑浦くん�に抱かれたいとは思わないからです。そう思ったら、�蓑浦くん�に「あっち行け、バカヤロ」と言われるに決まっていると分っていたからです。
そのかわり木川田くんは、�蓑浦くん�のことを見て、「いい体してやんな」とか「たまんねェ」とかは思っていました。
木川田くんにしてみれば、自分にやさしくしてくれない男は�バカ�なのです。
勿論、木川田くんにやさしくしてくれても�バカ�なヤツは一杯います。木川田くんにやさしくしてくれても、木川田くんがセックス・アピールを感じなかったら、それは�バカ�なのです。
�バカ�かどうか分んないけど、とにかく�いいヤツ�っていうのもいました。これは、木川田くんがセックス・アピールを感じて「寝てやってもいいけどな」って思うけども、その相手がひょっとしたら木川田くんのことを「あっち行け!」って突き飛ばすかもしれないような可能性の残っている、そんな人でした。だから木川田くんは、こういう人達のことを「いいヤツかもしんないけどこわい」と思っていました。
�リコウな人�というのは、勿論滝上くんのことだけです。
世界にはもっと色んな人もいたと思うのですが、木川田くんにとって、世の中にはこれだけの人達しかいなかったのです。
 木川田くんにとって�滝上さん�というのは、�いい人�で�やさしい人�で�リコウな人�でした。時々�バカ�に見える時もありましたが、そういう時は�可愛い�という、特別の表現を使うのです。
高校に入って、クラブの勧誘というのがあって、校庭には�バカ�と、�いいヤツかもしんないけどコワイ�人ばっかりが机を並べていました。運動神経の鈍い木川田くんは、別に運動部に入ろうという気はなかったのですが、「ちょっとコワイけど」やっぱり、新しい環境に立ちこめている�セックス・アピール�の匂いを嗅ぎたくって、ぼんやりと立っていたんです。
暗闇の中で白い光が燦《きら》めくような気がしたのは、木川田くんの目の前で陽に灼けた滝上くんが白い歯を見せて笑っていたからです。
 木川田くんは「どうしよう……」と思いました。「先々週ぐらい、アイビー・カットのお兄さんと、ジャバ・ザ・ハットのおじさんに�可愛い�とは言われたけれども、本当にこの人にも�可愛い�なんてことが通用すんだろうか?」とか思っていました。
滝上くんは二年生になったばかりの部員勧誘だったので、アガっていました。「誰でもいいから、ともかく入れればいいんだ」と思っていました。滝上くんは、この世の中にはバスケットの才能のないヤツもいるんだということにまだ気がつかないでいたのです。この�まだ�というのは、四年前の時点であると同時に�今も�です。
滝上くんは、自分のいるところの三メートルぐらい先のところに立って自分の方を見つめているボーッとした子を見て、「バスケットに入りたいのかな?」と思いました。自分も去年は、「中学時のレベルが高校に通用するかな……」とか思っていたので、やっぱりモジモジしていたのかもしれない、とかいうことを思い出していたのです。
「背が低いけど、すばしっこいかもしれない」なんてことを思いました。人を疑ぐることを知らない楽観主義者というよりは、育ちがよかったと言った方がよいのかもしれません。どの程度のよさだったのかは知りませんが。お父さんは証券会社の部長さんをしていました。
滝上くんのお父さんがどういう人だったのかということはここでは関係ないのでやりませんが、要は、木川田くんに声をかけたのは滝上くんの方が先だったということです。
 まさかそんな人が自分に声をかけてくれるなんて、木川田くんは思ってもみませんでした。笑いかけてくれるとか。よりによって、運動神経の鈍い自分に「バスケットに入りませんか?」なんてことを言うのは、「気があるからだ」としか思えませんでした。
思えませんけど、やっぱり「まさか」というのがありました。ホントはこっちの方が優勢でした。「ひょっとしたら自分の思いこみかもしれないし、第一、この人は自分に運動神経がないのを知ったらガッカリするだけだ」と思いました。思って、思い切って言ってみました。「僕、全然バスケット、やったことが、ないんです……」
「誰だって初めは未経験だよ」
高校に来て初めて�下級生�というものに出会った滝上くんは、「うまく上級生をやれるかな」と思って、一生懸命、緊張しないようにリラックスしてそう言いました。
「でも僕、運動神経鈍いし……」
生まれて初めて、心臓の中に直接手をつっこまれたみたいなトキメキを感じて、木川田くんは、自分が集められるだけの勇気をかき集めて、そう言いました。
「でも、バスケットがやりたいんじゃないの?」
木川田くんの前に立っている、若い男の�神様�は、木川田くんの腰がガクガクになるようなことを言いました。
木川田くんは、「ここで勇気を出さなきゃダメだ」と思いました。「出来るか出来ないかじゃなくて、我慢出来るか出来ないかだ」って思いました。そして、途方もない夢を見て、「もしも自分がスポーツマンになったら山内くんと寝れるかもしれないし、蓑浦のことなんか犯しちゃえるかもしれない」と思いました。
という訳でうっかり、木川田くんは「はい……」と言ってしまったのです。
言ってしまって、「この人だってイイ人かもしれないけど、練習になったらコワイかもしれない」と思いました。うっかり�自分がスポーツマンになるかもしれない�という夢を見てしまった時、木川田くんは、もう一つの�やさしい神様�の夢の方からはシラジラと醒めて行ってしまったのです。
 冷静になった木川田くんは「自分なんかどうせこんな素敵な人と対等になれる筈がない」と思って、「あのォ……、もう一遍考えなおしてみます」と言ってしまいました。
�その人�は「そう」と言って、「でも、その気になったら来てみてよ」と言ってくれました。�部屋�のあるところだって教えてくれましたけど、冷静な木川田くんは、「夢だけ見れたからいいんだ(惜しいけど)」と、未練を振り払いました。
木川田くんは、「もう高校生なんだから夢ばっかり見ていちゃいけない」と、そう思ったのです。自分には�異世界の現実�だってあるし、とか思って。
ところで、人間の多くは、やっぱり夢を見ているのです。白日夢というのではなくて、�しきたり�とか�慣習�とかいう。
他人様が夢を見ている以上、妄想家がその夢に巻きこまれてしまったって仕方がありません。滝上くんを三年間�バカ�のまんまにしていて進歩を止めていたのが木川田くんの妄想だとすれば、その妄想をスタートさせたのは、やっぱり滝上くんのリアリティーのなさだったのです。
 朝の通学バスの中は、人が一人素っ転ぶ程度の余白を残して、混んでいます。それは木川田くんの高校が都心や駅へと向うのとは反対の方向にあったからです。
心の中で滝上くんに一人で「さよなら」と言ってから三日目の雨の朝、木川田くんはバスの中で素っ転びました。
 雨で床が濡れていたのでズルズルとすべりました。木川田くんは運動神経がなかったので、一遍素っ転ぶと、揺れる車内で行くところまで行くしかありませんでした。
「アーア、ケツがドロドロだ」と思って、立ち上ろうと思ったところで車がカーブをしたので「アアッ!」とまたよろけそうなところを捕まえたのが、滝上くんの腕でした。ワンマンバスの真ん中の降車口のところに、滝上くんは柱にもたれて立っていたのです。
「あ、こないだの一年生が乗って来たな」と思って二停留所過ぎたら、その一年生が戻って来たのです。ずい分低いポジションで。
 知らない人にいきなり手首を把まれた木川田くんは、その冷《ひや》っとした感触に気をとられて、またバランスを崩しました。
という訳で、気がついたら木川田くんは、左手の手首を滝上くんに掴《つか》まれて、腰を滝上くんの左手に抱え上げられて、タンゴを一曲踊り終えていたのでした。
「アーア、俺《オラ》知らね」と神様《かたりて》が言ったことなど、この小説の読者しか知らないことです。
 滝上くんは低い低音で「どうしたの? ちっとも来ないじゃないか」と、ニッコリ笑って、シンデレラに言ってしまったのです。
健全で礼儀正しい家庭に育ったユーモアを解する滝上くんは、こういうセリフとこういうシチュエーションが少女マンガの中でしか使われないのだということを知らなかったのです。
という訳で、この�運命の二人�はその後の三年間、成長というものをしなくなるのです。
誰だって、自分のことを手放しで賞めてくれる人間がそばにいて付きっきりだったら、努力なんてものをしようとは思いません。
そういうことです。
 木川田くんは、滝上くんと「寝たい」とは思いませんでした。木川田くんは、滝上くんにリアリティーがないことを、自分では知ることの出来ない自分の一番奥深くで、知っていました。だから木川田くんは、夢を見れたのです。木川田くんにとって滝上くんは�夢�だったから、そのまんまでよかったんです。木川田くんは、「いつか先輩が僕のことを抱きしめに来てくれて、そして——」と思っていました。
�そして、どうなるのか?�ということを、木川田くんは時々、途中のプロセスを素っ飛ばして、考えていました。この�考えていた�とは、勿論肉体でです。肉体で考えて、泣いていました。�泣く�ということが涙を流して泣くことだけではないということは、勿論です。
滝上くんがそういうことを分ってくれないのだといって一人で泣いていたこともありましたが、木川田くんにすれば、そういう絶望状態もまた嬉しかったのです。「明日になれば先輩に会える」と思うと元気が出て来て、ほとんど、元気になっちゃうのを一層際立たせる為に絶望状態を一人で作り出していたという方が正解でしょう。
絶望の中ででも遊んでいた木川田くんは、夢を見たかったんです。
 誰もかまってはくれないし、訳の分らないものが自分の中を掻き回して訳の分らない状態にしちゃったし、そういうことを説明してくれる人なんていなかったし。
そういう状態の中で追いつめられてオドオドしている木川田くんを助けてくれる人はいましたけど、それは自分の�現実�とは関係ない、よその世界の人でした。
人生の始まりでつまずいて、人生の結果だけを手に入れて、でも木川田くんには、その中間をつなぐ�現実�というものがありませんでした。お母さんは黙々と生きているし、お父さんはつむじ風のように生きているし、そして�友達�は——まァ、�夢�の中に入ってしまえば�夢の外側�にいる友達なんてどうでもいいようなものですけど。
 木川田くんは、滝上くんが�結果�を持って来てくれるのを待ってはいましたが、でも、滝上くんがその�結果�を持って来てくれたら�夢�がどうとかなっちゃうんじゃないかと、恐れていました。もっと正確に言ってしまえば、自分でも知ることの出来ない自分の一番奥深いところで、木川田くんは、滝上くんの舌が自分の唇の中に入って来たら夢は終りになってしまうんだっていうことを、知っていました。
だから木川田くんは、こわかったんです。そうなれば、自分の無能に直面することは目に見えていますから。自習の時間が終ったら、次には体育の時間が待っているようなものですから。
木川田くんは、夢を壊さないでいることに全力を上げました。
バスケット部の部室で、木川田くんは、滝上くんの着替えする姿を、見ないようにしました。滝上くんのことは全部知っていても、木川田くんは滝上くんのことを全部分らないですむように、ピントというものをはずしてしまいました。滝上くんは、妄想の中にしかいてはいけない人だったのです。
滝上くんの黒っぽい体が部室で横を通り過ぎる時、木川田くんの視力は急に落ちました。ひょっとすると滝上くんもそういうことを知っていたのかもしれません。木川田くんがいる時の滝上くんは、妙に行儀がよかったからです。
木川田くんは、自分にとって性的なものの塊りである筈の運動部の部室の中で、性的なものを、全部排除してしまいました。
滝上くんの体がどうなっているのかも知らないし、滝上くんの下着がどんな風になっているのかもなんにも知りませんでした。他の部員の体はみんな野蛮で、そこら辺に置いてあるサポーターなんかは「汚ったねェ」だけでした。
部室の中の人間はみんな�バカ�で、木川田くんはそうして、セックス恐怖症になったのです。
 妄想の世界で自由に歩き回れる木川田くんは、現実の世界ではほとんどなんにも出来ませんでした。
木川田くんは、現実の世界では肉体を落っことして、もう一つの世界では心を落っことしていました。
木川田くんは、�先輩�を好きになることは出来てもその人と寝ることは出来ませんでした。
木川田くんは、他の人と寝ることは出来ても、他の人を好きになることは出来ませんでした。
そういうことです。
 木川田くんは、滝上くんをガードしました。
夢の王子様が、現実の中で無能をさらけ出しては困るからです。
木川田くんにとって滝上くんは、勉強が出来て男らしくてスポーツマンで——、まァ、それだけで十分に木川田くんの夢の王子様はやっていけますけれども——�やさしい人�でした——実際はいざ知らず。
そういう訳で、滝上くんの成長は止まりました。成長なんかする必要はなかったんです。�現実�は、木川田くんという魔法使いがやって来て、全力を挙げて押し留めてくれました。おまけにこの魔法使いは、そんなことをしても、一銭の報酬も要求しなかったのです。結婚を迫る女の子でもないし、妊娠をする女の子でもないし、わざわざ�交際�を必要とする女の子でもないし。踏みつけにしても、自分がノビノビとしていれば喜んでくれる男の子でした。
滝上くんはだから、大学に落ちました。現実問題として、自分の力がどれくらいあるかの判断が、もう彼には出来なくなっていたからです。
 という訳で、大学に入ってからの滝上くんはほとんど、無能状態をさらけ出します。�西窪くん�というメフィストフェレスにとっつかれたのも、あんまり滝上くんが脳天気なくせに一人前のカッコをつけていたからでしょう。「なんであんな取り柄のないヤツが堂々とスターやってるんだよ?」と西窪くんが思ったって当然です。西窪くんにしてみれば、木川田くんがどうこうというよりも、平然と一人前面をしている滝上くんの方が憎かったんです。
木川田くんは関係のない世界の住人だけど、滝上くんは自分とおんなじ世界の住人です。それがなんだって、平気な顔して無銭飲食をして歩けるのか、西窪くんには訳が分りませんでした。女にコナかけるんだってリツ悪いし、女がなんか面倒なことを言ってくることだってあるし、好きでもないお愛想言ってみなくちゃならないことだってあるのに、気がついたら、滝上くんは、おんなじ�男�であるのにもかかわらず、そういう努力を一切していないのです——たかだかオカマにまとわりつかれているというだけで。
「ノホホンがバカ面下げて向うから歩いて来た」——大学で一緒になった時、西窪くんは滝上くんのことをそんな風に思ったんです。
 木川田くんは、そのことを直感で分りました。滝上くんが西窪くんを連れてやって来た時、それは、滝上くんが西窪くんを連れて来たんじゃなくて、西窪くんが滝上くんを連れて来たんだっていうことがすぐ分りました。歌舞伎町のポルノショップで、自分がガードしきれなくなった�夢の王子様�がどんな風になってしまっているかを見てしまった後で、自分が無視し続けて来た�現実�が、�夢の王子様�に鎖をつけて歩いて来たのです。「ヘー、これがお前の夢なの? ヘーッ! これがお前の夢なのォ!!」——その�現実�は、木川田くんにはそう言っているように感じられたのです。
 勿論、木川田くんのお父さんは、自分の息子がこんなバカなことをしているとは夢にも思っていませんでした。木川田くんのお父さんは、夢なんか見たことがない人だったからです。
 木川田くんのお父さんはその夜、たった一人の自分を思って、改めて、自分の今迄にして来た�苦労�を分ってもらいたいと思っていました。
でも、口下手のお父さんにはそんなこと、うまく言えません。唯一人話相手になってくれる筈の自分の奥さんは、自分とおんなじように、黙ってテレビを見ています。どっちが先にテレビを見始めたのか、もう木川田くんのお父さんには分りませんでした。
分らないといえば、分ってもらいたい筈の�苦労�がどんなものだったのか、それも、実はもう木川田くんのお父さんにはよく分らなくなっていたのです。
「もう寝ようか」と言いかけて、「もう寝ようか」という言葉がこの家の中ではひどく響きそうだなァということだけを、木川田くんのお父さんは感じました。
世の中なんてそんなもんです。夜というのはそういう時です。時々、停電だってやって来ます。
そういう訳で、世の中なんて、真っ暗でした。
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