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無花果少年と瓜売小僧36

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  36 木川田くんのお母さんは、暗い部屋の中で横になって、黙って天井を見て考えていました。横に寝ている筈のお父さんがもう
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 木川田くんのお母さんは、暗い部屋の中で横になって、黙って天井を見て考えていました。横に寝ている筈のお父さんがもう眠っているのかどうなのか、木川田くんのお母さんにはちっとも分りませんでした。もっとも、分っても分んなくても、そんなことに少しも興味のないお母さんにとっては、そんなことどっちだってよかったんです。
「そんなに好きだったら、なんでも上げちゃえばいいのよ」
暗い中で、木川田くんのお母さんは、そういうことを考えていました。
「それで、あんたの取り引きだかなんだかがうまく行くなら、それでいいじゃないの」
もしそこに家族全員がいるのならそう言っているかもしれない自分のことを、木川田くんのお母さんは考えていました。天井のとこにはお茶の間があって、そこには木川田くんのお父さんとお母さんと源一くんの三人がいて、みんなで困って考えこんでいるような情景が、木川田くんのお母さんには見えるようでした。
 そういう幻のお母さんは、どんどんどんどん雄弁になって行くようでした——。
「だって、その人はそういうことが好きなんでしょ? だったらそれでいいじゃないの。源一だってそれでお仕事のお役に立つんだから」
幻の源一くんは、「そうだよねッ」て、明るく笑って言っているように、布団の中のお母さんには思えました。
「でもなァ」と幻のお父さんが言って、「ホントにあんたは体裁ばっかり気にして」って、幻のお母さんは、やっぱり幻の中ででも旦那さんにズケズケとした口をきくのは遠慮があるような顔をして、一人言を言いました。
木川田くんのお母さんにとって、木川田くんは、生まれたばかりの赤ちゃんで、おしめを替えている時に小さいおちんちんから、木川田くんのお母さんはおしっこを引っかけられたこともありました。
「ホントに可愛いかった……」
木川田くんのお母さんは、ニッコリとお布団の中で笑いました。
「�お父さん�はもじゃもじゃで、なんだかメンドクサイことばっかり言って暗くするけど、あの子はホントに可愛いかった」と、木川田くんのお母さんは思いました。
「どうしてそんなことが問題になるのかさっぱり分んない」——お母さんは思いました。
「あたしなんか、あの子のおしっこぐらい何回だって飲んじゃったわよ。バカね」——お母さんはそう思いました。
「それで仕事がうまく行くんだったらサッサと源一に頼んでそうしてもらえばいいじゃない。どうして家に帰って来てからムスーッとばっかりしてるのかしらね、ホントに愛想がないんだから」
 布団の中のお母さんも、いつの間にか雄弁になって来ました。スーパーでレジのパートを木川田くんのお母さんはやっていたのですが、時々他の人達に比べて自分は田舎育ちだから愛想が悪いのかなァと思いかけていたお母さんは「やっぱりそうだ!」と思ったのです。
「あたしがこの人に合わせてるからあたしまで愛想が悪くなって来るんだ」——木川田くんのお母さんは思いました。
「行くとこまで行くと楽になっちゃうのかもしれない」
そう木川田くんのお母さんは思いかけていました。
息子が�問題�を起こしてお父さんが騒ぎ立てて、その間に挟まって「どうしたらいいんだろう……」って暗くオロオロしていたお母さんはこの時、暗い布団の中で「いらっしゃいませ」という発声練習を、声を出さないでやっていたのでした。
「どうしても声がこもるのよねェ、あたしの場合……」
NHKの若い女性のアナウンサーの、口紅の輝いたテキパキした唇の動きを思い出しながら、木川田くんのお母さんは、「なんとかならないかしら」と思いかけていたのでした。
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