37
暗い中で、磯村くんと木川田くんは、枕を並べて眠っていました。
正確にはまだ眠っていなくて、黙って横になっているだけでした。
正確にはまだ眠っていなくて、黙って横になっているだけでした。
「なァ、磯村ァ……。お前、ホントに好きな女、いないの……」
木川田くんが言いました。
「いないよォ……」
間延びのした声で磯村くんは言いました。
木川田くんがゆったりと寝返りを打って、磯村くんは、自分とおんなじ広告研究会にいる�竜崎頌子ちゃん�のことを考えていました。
「あの子、可愛いなァ……」
磯村くんはぼんやりと思いました。
木川田くんの手が自分の胸を撫でてるなァと磯村くんは思いましたが、でも、それだけでした。
木川田くんが言いました。
「いないよォ……」
間延びのした声で磯村くんは言いました。
木川田くんがゆったりと寝返りを打って、磯村くんは、自分とおんなじ広告研究会にいる�竜崎頌子ちゃん�のことを考えていました。
「あの子、可愛いなァ……」
磯村くんはぼんやりと思いました。
木川田くんの手が自分の胸を撫でてるなァと磯村くんは思いましたが、でも、それだけでした。
「あんまりやめてよ」
磯村くんは言いました。
「ふん」
木川田くんは言いました。どこか「うん」の息が抜けて「ふん」になっているような「うん」でした。
「だったら我慢出来るな」
磯村くんは思いました。
そろそろ眠気が襲って来ます。トロトロと、磯村くんは気持がよくなって来ました。
一人の男の子がスースーと寝息を立てている横で、もう一人の男の子は、隣の男の子の肩に顔を寄せて、その男の子のパンツの中で息づいて来ていたものを、まるで、赤坊をあやすようにして撫でていました。
磯村くんは言いました。
「ふん」
木川田くんは言いました。どこか「うん」の息が抜けて「ふん」になっているような「うん」でした。
「だったら我慢出来るな」
磯村くんは思いました。
そろそろ眠気が襲って来ます。トロトロと、磯村くんは気持がよくなって来ました。
一人の男の子がスースーと寝息を立てている横で、もう一人の男の子は、隣の男の子の肩に顔を寄せて、その男の子のパンツの中で息づいて来ていたものを、まるで、赤坊をあやすようにして撫でていました。
それが木川田くんの一宿一飯の仁義だとは、眠ってしまった磯村くんにはもう気がつくことは出来ませんでした。
そうして、最初の夜はゆるやかに、どこかへ向って流れて行き始めました。雨はもう熄《や》んでいて、みぞれももう熄んでいて、凍えるような空気だけが、アパートの周りを取り巻いていました。
二人のスースーという寝息だけが部屋を暖めて、真夜中の下で、暖房の止った部屋は、静かに室温を下げて行きました。一月の、十日でした。
二人のスースーという寝息だけが部屋を暖めて、真夜中の下で、暖房の止った部屋は、静かに室温を下げて行きました。一月の、十日でした。