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無花果少年と瓜売小僧38

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  38 磯村くんの試験中も、木川田くんのアルバイトは続いていました。「遠いなァ」と言いながらも、毎日木川田くんは、自分の
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 磯村くんの試験中も、木川田くんのアルバイトは続いていました。「遠いなァ」と言いながらも、毎日木川田くんは、自分の家の近所まで通って行きました。
磯村くんは「木川田、可哀想……」とか思っていましたが�オカマの源ちゃん�は、別にメゲている雰囲気でもありませんでした。磯村くんの部屋に転がりこんで来た次の日、バイト先の電気屋さんを途中でちょっと抜け出して家に着替えを取りに行った木川田くんは、これまた電気屋に電話してパート先のスーパーを抜け出して来たお母さんと会って、「うん」とか言って、意気軒昂になって帰って来ました。
 木川田くんが何に対して「うん」と言ったのかというと、それは口をききなれないお母さんの、「悪いことしたと思ってるんじゃなかったら、ごめんなんて言うんじゃないの」という、朴訥《ぼくとつ》な言葉にです。
玄関の戸を開けてバッグをかついで出て来たら、スーパーの制服を着たお母さんが立っていました。田舎から出て来てもう二十年近く経つのに、しっかりと顔に自分のアイデンティティーを刻みこんでいるお母さんが立っているもんだから、木川田くんは思わず「ゴメン」と言ってしまいました。
言ってもまだ黙ってるから、「メンドクセェ、行っちまえ」と思ったら、お母さんはそう言ったのです。「悪いことしたと思ってるんじゃなかったら、ごめんなんて言うんじゃないの」って。
 木川田くんは少し感動して、「お母さんはそうやって許してくれるんだ」と思って、「うん」と言ったのです。
しかしお母さんはどうやら本気で、木川田くんが何か�悪いこと�をしたとは思っていないようでした。木川田くんが「うん」と言った後お母さんが何を言ったのかというと、「行く当てはあるの?」から始まって、「じゃァ、その磯村さんていう人によろしく言わないと」に至って、下手すりゃ「じゃァ、カステラでも買って来なくちゃ」と走り出しそうなところまで行ってしまいました。
まるで、木川田くんは、集団就職で東京へ出て行く大昔の中学生です。さすがに木川田くんは「どうしてウチのオカヤン、こうダセェんだろう」と思ってしまいました。
 という訳で、あっという間に木川田くんは、もとの�源ちゃん�に戻ってしまいました。木川田くんのお母さんにすれば、高校二年のいつぞやの一件以来�ウチの人�がムスーッと黙りこんでしまって、しようがないからそれに合わせて地味に暗くしてたのが、その�元凶�が旅立ってしまうもんだからもう別に暗くしてる理由もないと思って、妙にサバサバしてしまったというだけなのでした。
後は「しっかりしろ」と言うだけです。だから、しっかりしろと言いました。ホントに女というものは、化け物のようなものです。
あんなに気をつかっていた磯村くんも、木川田くんのお母さんがなんでもかんでも右から左へとスーッと素通りさせてしまって、「自分の息子がお世話になるのが磯村さんだ」という段になって初めて「磯村さんね、磯村さん……、はいはい」と、天を仰いで暗唱しているのだと知ったら腰を抜かしてしまうでしょう。
勿論、お母さんのダサさを恥ずかしがっている木川田くんがそんなことを磯村くんに言う筈もありませんが。
 という訳で、木川田くんは磯村くんの部屋から自分の家へ日常をやりに通ってるというようなことにもなってしまいました。
木川田母子はタフだったのです。
もうこうなったら笑うしかありません。
 はっはっは。
 でも、それを知らない磯村くんでした。
 木川田くんは自分なりの恭順の色を見せて、地道に働いているように見えました。
見えただけで、木川田くんはなんにも言いませんでした。しようがないから磯村くんは、一人で緊張するだけの生活に入って行きました。
 可哀想にというのは、磯村くんです。
作者《わたし》もとっても意地悪でした。
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