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無花果少年と瓜売小僧46

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  46 滝上くんに「どうしたんだよ?」と言われて、木川田くんは返す言葉がありませんでした。冷たく無視されるのが当然と思っ
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 滝上くんに「どうしたんだよ?」と言われて、木川田くんは返す言葉がありませんでした。冷たく無視されるのが当然と思っていたのに、二人の関係は相変らず続いているみたいに滝上くんは口をきいてくれたからです。
「ひさしぶりだな」
滝上くんは言いました。
やっと「はい」とは言えたものの、木川田くんは顔を上げることが出来ませんでした。
滝上くんは何もなかったみたいにしてくれているのに、自分はなんか、一杯いろんなことを勝手に考えていて、それが恥かしくて申し訳なかったからです。
「先輩……なんで、こんなとこにいるの……」
木川田くんは辛うじて、それだけを言いました。
「なんか、暇だからな。西窪が�一遍行ってみよう�とか言うからサ」
「そう……」
滝上くんの言うことがあんまりサバサバしているので、木川田くんは自分の思ってたことがみんな嘘だったんだと思って情なくなりました。今迄だって普通だったし、自分がスネてる時だって滝上くんは普通だったし、これからだってやっぱり普通なんだって思いました。
自分一人が気ィ回して、自分がオカマだからってヘンな風に気ィ回して、それで先輩に迷惑かけてたんだって、そう思ったんです。
そりゃ、少しぐらいはショック受けたかもしれないけど、でも先輩は、俺がオカマだからとかって、そんなこと問題にしてないんだ。だって、初めて会った時だってそうだったもん。バス中で「どうしたの?」って言って俺のこと抱きとめてくれた時だってと、木川田くんは思いました。
「俺、先輩に別にヤラしい気持もってないし……」とか。
「普通にしてれば、やっぱり今迄通りにやっていけんのに、俺ってバカ……」って、木川田くんは思いました。
滝上くんは、あんまり木川田くんが黙ってばっかりいるものだから、辺りをキョロキョロ見回して「どっかでお茶でも飲まないか」と言いました。キョロキョロしていたのは勿論、喫茶店を探していたからではなく、暇だったからです。
木川田くんは涙声で、「うん」と言いました。
滝上くんは、「そんな風に押しつけられても困んだよなァ」と思いました。「まるで、女の子を妊娠させたみたいだ」と思って、少し、きまりが悪くなって来ました。
「そうか、そういうことなのか」と滝上くんは、そうして、思いました。「男だと思うからヤバイんで、女だと思えば別にヤバくもないし」って。
「なんで自分はそういうヘンなことにこだわってたのかなァ」って、滝上くんは思いました。
世の中にははっきりしてる女の子もいればはっきりしない女の子もいる——話の分る男以外には結局世の中にはこの二種類の人間しかいないと思いかけていた滝上くんの世界観を裏打ちするような木川田くんでした。
それしか世界がない滝上くんを責めてもしようがありません。木川田くんだって別の種類の狭い世界観しか持ってなかったんですから。
 滝上くんにしてみれば、木川田くんは�はっきりしない女の子�でした。
はっきりしてる女の子とはっきりしてない女の子の差は、扱い方の違いだけでしかありません。はっきりしてる女の子は「そんじゃ」ですぐ別れられましたが、はっきりしてない女の子とはしばらくウダウダと時間を過して、その後で「もうきみとはこれっきりにしたいんだ」と言わなければなりませんでした。
もっとも、違いはこれだけなのですから大した苦労もありません。分ってしまえばすぐ馴《な》れます。
 という訳で、滝上くんも、�はっきりしない女の子�の扱い方は心得ていたのです。
 滝上くんがキョロキョロとしていると、木川田くんは「こっち、行かない?」と言いました。�はっきりしない女の子�は、でも放っとけばこれぐらいのことははっきりと言うのです。放っとくだけの間がメンドくさくてかないませんが。
 木川田くんと滝上くんは、新宿の二丁目の仲通りを突っ切って厚生年金会館の方に歩いて行きました。木川田くんは何故か、反対側のメインストリートの方へは行きたくなかったのです。
木川田くんと滝上くんは、歌舞伎町のネオンが遠くに見えるところまで来て、道を渡りました。「お茶でも飲まないか」と言い出したわりに、滝上くんは喫茶店を探そうとしている風でもありませんでした。
 三月の初めでもまだ夜は寒くって、二人は人気《ひとけ》のない方へ歩いて行きました。
 木川田くんははっきり言って、どうしたらいいのか分らなかったのです。「お茶でも飲まないか」って言ってもらえたのは嬉しいけど、でも、明るい喫茶店で向かい合ったら、何をどう言ったらいいのか分らなくなると思って、それが不安でした。だから、たらたらたらたら、人気のない方へと歩いて行きました。
滝上くんは黙って「しょうがねェな」と思ってついて行きましたが、「花園饅頭」のネオン塔の見えるビルの方に木川田くんが迂回しようとした時、「どこ行くの?」と訊きました。
木川田くんは「別に」と言って、「ダメ?」と言いました。滝上くんは「いや、別に」と言って、木川田くんが腕を組むのをほうっておきました。夜の九時前です。
反対側から来る人が滝上くんの方を�チラッ��チラッ�と見ましたが、滝上くんは「ダサイ女ですいません」ぐらいにしか思っていませんでした。
勿論木川田くんはうつむいたまんまなのでそんなことは分りません。いつまでもこんなことをしててもしようがないので、シーンは早いとこ、花園神社の境内に移ります——。
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