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無花果少年と瓜売小僧47

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  47「こっち通ってこうか」と、滝上くんは言いました。どこまで行ってもキリがないし、ここを抜けて新宿の雑踏の方に入っちゃ
(单词翻译:双击或拖选)
 
  47
「こっち通ってこうか」と、滝上くんは言いました。どこまで行ってもキリがないし、ここを抜けて新宿の雑踏の方に入っちゃえば自分の�義務�も終ると思ったからです。もの分りのいい男の別れ方を演じるのも大変だなと思いましたが、でも滝上くんは場数を踏んでいたので、馴れていました。いつまでも相手に引きずられてるのはバカだと思っていましたから。
 花園神社の境内に脚を踏み入れて、ドキドキしながら、木川田くんは�先輩�に訊きました。
「先輩、俺のこと、好き……?」
「ああ」
滝上くんはそう答えました。
 木田川くんはやっぱり、自分が思ってたみたいに自分は一人でバカなことを考えてたんだって、思いました。
敷石の上を歩いてくと拝殿の方に上ってく階段に突き当って、そうなると木川田くん達は左に曲って、人通りの多い大通りに出なければなりません。
「どうしよう……」と木川田くんは思いました。「そこを左に曲ったら、もう永遠に、先輩にキスしてもらうチャンスはなくなっちゃう」と思いました。「先輩、俺のこと、好き……?」と訊いた時の、滝上くんの「ああ」という甘い声は、麻薬のように木川田くんの頭を痺《しび》れさせていました。
腕を組んで、滝上くんの肩に頭を寄せて、どうしてそっから先に自分は踏みこめないんだろうと、木川田くんは思っていました。先輩がせっかく「こっちを通ってこうか」って言ってくれたのにって……。
勇気がない。勇気がない——。今迄だって、何遍だってこんな機会があったかもしれないのに、自分に勇気がないから全部そういう機会をダメにしてたんだって、木川田くんは思いました。そんなことしてるから、自分は先輩に嫌われるんだって——。
 先輩の肩に顔を寄せて、先輩のオーバーのツイードの向うに先輩のやさしい匂いがするんだと思って、木川田くんは、あと二歩で左に曲るというところで、思いきって滝上くんの腕の中に飛びこんで行きました。
滝上くんの胸に顔を埋めて、目を閉じたまま、滝上くんの唇を求めて行きました。
滝上くんの唇があって、滝上くんの唇に触れて、滝上くんは「だめだ」とは言わないようでした。
もう一遍思いきって吸いついて、そして、唇で、チョッと滝上くんの唇に触れてみました。
チョッと触れたら滝上くんの唇は開いて、滝上くんの舌が、木川田くんの舌を、迎えてくれました。もう木川田くんはなんにも考えられなくて、思いきってムチャクチャに滝上くんの口の中をゴチャゴチャに吸い回しました。
 夢から醒めたというのはこのことでしょう。木川田くんは初め、なんのことか、分りませんでした。トントンと、誰かが背中を叩いているような気がするのです。誰かが背中を叩いてるのに気がついたら、今度は自分が何をしていたのかが分らなくなっていました。
「はっ」と思ったら目の前に滝上くんが立っていて、滝上くんが両肩に手を当てて、木川田くんの肩を、引き離そうとしていたのです。「あ、そうか、いけない」と思って、木川田くんは我に返りました。
照れくさくなって、笑いながら顔を上げました。
 そしてそこで木川田くんが見たものは——。
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