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無花果少年と瓜売小僧48

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  48「いつまでこんなことやってるんだよ」滝上くんが言いました。「いい加減にしろよ」とも。 木川田くんはカーッとなりまし
(单词翻译:双击或拖选)
 
  48
「いつまでこんなことやってるんだよ」
滝上くんが言いました。
「いい加減にしろよ」とも。
 木川田くんはカーッとなりました。そんなものがこの世の中にあるのかと思いました。あまりに恐ろしい思いをすると人はなかなか自分が恐ろしい目に遭っているのだということに気がつけなくなると言いますが、その時の木川田くんもそうでした。
脚がガクガクと震えて、ホントに何がどうなっているのかが分りませんでした。
肩に置いてある滝上くんの手がそのまま、自分の首を締めに来てもおかしくないと、そう思いました。滝上くんはそれぐらい、表情のない顔をしていました。
 バスケットの試合中に滝上くんはよくそういう顔をしていました。敵に追いつめられて是が非でもそこから抜け出さなきゃならない時なんか、そんな顔をしてました。
木川田くんは滝上くんの試合をよく見ていたからそのことは知っていたのです。
それは、自分以外の一切を自分の中からはねのけて、敵に向って行く顔でした。滝上くんがそういう顔をしてボールを床に叩きつけて行く瞬間、木川田くんは応援するよりも「こわい」と思いました。熱心に闘っている間にそんなことを考える自分はいけないとは思いましたが、いつかそんな顔が自分に向かって来るかもしれないと思ったら、「こわい」と思うことを止めることが出来ませんでした。
 滝上くんが試合をしている姿を、木川田くんはもう二年以上も見ていませんでした。
だからそんなことは忘れていました。
でも、今自分の目の前にあるのはそんな顔でした。
 切れ長で黒目がすっきりと輝いている滝上くんのその瞳が、急に作りものになったみたいで、黒い睫毛と眉毛に縁取られた涼しい目許の周囲から炎が吹き出して、反対にその白いところだけが凍りついているように見えました。
木川田くんは、滝上くんが何を言っているのかが分らなかったのです。
だから滝上くんは、「いい加減にしろよ」と付け加えたのです。
脚の下の地面がドーンとなくなってしまったような気がしました。
木川田くんは滝上くんの胸を、やっぱりドーンと叩きつけて、バッとそこから逃げ出しました。木川田くんが滝上くんの胸を叩きつけたのは、やっぱり滝上くんが憎かったからですが、木川田くんには、自分がそんなことをしているという自覚はありませんでした。
木川田くんは逃げて、気がついたら電車の中にいました。
自分が立って吊り皮につかまっているのがなかなか理解出来ず、電車が「調布」を過ぎて少し席が空いて、そこに坐りこんで初めて、窓の外の暗い田園風景を見て、「ああ、自分は家に帰るんだ」って、そう思いました。
�家�とは勿論、高幡不動のアパートのことでした。
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