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無花果少年と瓜売小僧56

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  56 木川田くんは、磯村くんの部屋を出てから一週間、一人でホテルを泊り歩いていました。なんの着替えも持っていない木川田
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  56
 木川田くんは、磯村くんの部屋を出てから一週間、一人でホテルを泊り歩いていました。なんの着替えも持っていない木川田くんがどうして一週間もそんなところにいられたのかというと、そこは、服を着ないでもすむホテルだったからです。
男の人だけが泊まれて男の人だけがセックス出来るように、そんな目的だけで出来ているホテルが東京にはいくつかあって、木川田くんはそこに泊っていました。木川田くんは、セックスだけがしたかったのです。
そして勿論、木川田くんはセックスなんか全然したくなかったから、そういうところにも平気でいられたのです。
 修学旅行の大広間みたいに、男の人みんなが枕投げみたいなセックスをしている薄暗い部屋の隅で、木川田くんはぼんやりとその光景を眺めていました。
初めはなんでそんなとこにいるのか、自分でもよく分んなかったんですけど、二日もしたら、「�そういうの見たくない!�って言いたいからそれが言えるまでズッと見てる」ことが分りました。
ズーッと見てて、四日目には「バカみたい」と思いました。
五日目には「帰りたい」と思って心細くなって、男の人に抱かれました。違う人に五人です。
六日目の朝、自分のことを抱いてるオジサンが気持悪くなって、よそへ引っ越しました。
六日目の夕方、また三日目までとおんなじことを、男の人が十人ぐらいからみ合ってる部屋の隅で考えてて、木川田くんは「どうしたの? 出ようよ?」って言ってくれる人が来るのを待ってるんだってことに気がつきました。
「どうしたの? 出ようよ?」って言ったのは三十過ぎの下町の石屋のお兄さんで、木川田くんがあんまりボンヤリしてるんでそう言ったのだそうです。
 その日はそのお兄さんのマンションに泊めてもらって、どうしてぼんやりしてたのかっていう訳を話しました。
木川田くんがその人のいいお兄さんに話した�訳�というのは、�同棲してた恋人と喧嘩しちゃってもう帰れない�という、よくある話でした。「荷物置きっぱなしにして来ちゃった」と言って、「なんだ、そんなの簡単じゃないか」というお兄さんに頼んで、磯村くんの留守に荷物を運び出したという訳です。
 荷物を運び出して高幡不動のアパートのドアを閉めると、木川田くんは磯村くんに貰った合鍵でドアに鍵をかけました。ドアに鍵をかけて、「この鍵どうしよう?」と木川田くんは思いました。「貰ってく訳にいかないし」と思って。
鍵かけて、鍵は余ったけど、でも鍵を置いてく場所はありません。木川田くんは辺りを見回して、「ひょっとして……」と思って、玄関と並んでいるお風呂場の窓に手をかけました。
鉄の柵の向うで案の定、そのお風呂場の窓は開いていて、木川田くんはゆっくりと少しだけ、その鍵のかかっていない窓を開けました。
「磯村、ごめんね」と言って、木川田くんは、背伸びをして、その窓の隙き間から鍵を投げました。力一杯投げないとヘンなとこに落っこちそうだったので、ヘンな恰好で鍵を投げている木川田くんのその様子は、とっても「ごめんなさい」と言っているようには見えませんでした。
お風呂場の端にあるドアに向って木川田くんは鍵を投げたのですが、残念ながらそのドアには届かず、タイルの床にはねかえって、その鍵は浴槽の置いてあるコンクリートのたたきの上に落っこちてしまいました。
「どこ行ったんだろう?」と思って木川田くんは覗きこみましたが見えません。「それだったら初めっからお風呂のフタの上に落っことしとけばよかったなァ」と木川田くんは思いましたが、もう後の祭りです。窓のすぐ下にあるフタのしてある浴槽の上に落したら、その鍵ははね返ってヘンなところに行っちゃうかもしれないと思って、木川田くんは遠くへ投げたのです。
赤いカリーナに乗った石屋のお兄さんが�プップーッ�とクラクションを鳴らしました。木川田くんは「ごめんね」とまた言って、それで中野に帰ったのです。
磯村くんがその鍵を発見したのは、木川田くんが荷物を運び出したその次の日です。
 お風呂の水を抜いて、しばらくそれが流れるのを見ていたら、コンクリートの隅に何かがあるのを見つけて、それが木川田くんの投げた合鍵だったという訳です。
「バカヤロ! 逃げやがって!」と思って、磯村くんはもう一遍、その合鍵を下水溝の方へ叩きつけました。
�カチン!�と、何かが割れたようです。
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