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無花果少年と瓜売小僧58

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  58 磯村くんの住んでいる町は川のほとりにあります。高幡不動の町の北には「浅川」という多摩川の支流が流れているのです。
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  58
 磯村くんの住んでいる町は川のほとりにあります。高幡不動の町の北には「浅川」という多摩川の支流が流れているのです。
 磯村くんのアパートを出て、駅とは反対の方向に行くと小さな雑木林があって、それに沿ってしばらく行くと、浅川の堤に出ます。磯村くんは、よくこの辺りを散歩します。
 下流の方に行くとすぐ新井橋があり、そこから上流の方を振り返ると、初めてお母さんとお兄さんの運転する車に乗って不動産屋さんにやって来た時に渡った高幡橋が遠くに見えます。
冬の間は、広い河原一面に生い茂った枯れ葦の間を細い水路が通っていて小鴨《こがも》や尾長鴨《おなががも》、都鳥《ゆりかもめ》などが飛んでいます。広い河原に白い都鳥がすゥっと飛んで行く時など、磯村くんは「鳥って不思議だなァ」と思って、いつまでも飽きずに見ていることがありました。
ただ白い生き物で、構造的には飛べるようになっているのかもしれないけど、それが目の前で実際にすべるように飛んで行くのを見ると、磯村くんは「不思議だなァ」と思うしかなかったのです。
磯村くんは、動物というものをそのように見ていました。きれいはきれいだけど、やっぱり不思議だって。
磯村くんはただ堤をタラタラと歩いていただけですが、木川田くんは「やだよ寒いから」と言ってなかなか散歩には付き合ってくれませんでした。別に「いやだ!」と言って部屋の中ですねているという訳ではありませんでしたが、でも一緒に土手に出て歩いていても、木川田くんは「寒い」と言って、二、三歩だけ歩いて、後は足踏みをしているだけです。まるで、熱いお風呂に入る時みたいに。磯村くんは知らん顔をして一人で十メートルぐらい歩いて行っては、立って待っている木川田くんに「帰ろうか?」と言うのです。
冬の間に二人が一緒に散歩したことはよく考えてみればそんなになかったのですが、いつも大体そんな風でした。
木川田くんは、どうせ行くのなら吹きっさらしの川の土手ではなくって、茶店の蒸籠《せいろう》から熱い湯気を立てているお饅頭のある、高幡不動の境内の方が好きだったようです。木川田くんとは二回だけそこへ行ったことがありますが、木川田くんはいつも甘酒を飲んで、子供のようにポカーンとしていました。高幡不動の境内には松や杉の常緑樹の緑があって、それで木川田くんも落着いたのかもしれません。
磯村くんだって勿論それは嫌いではありませんでしたが、でも、古い建物と静かな緑の中に一人でいたりすると、あまりにも落着きすぎてこわくなってしまうような気がしたのです。どちらかというと磯村くんは、歩く為ではなくて、広い空間が見たかったから川の堤に出て来ていたのかもしれません。
雑木林を通って都営団地の前の坂を上って堤の上に出ると、思わず「わーっ……」と言いたくなるような広がりが見えるのです。「今日もそれがあるかな……」「やっぱりあった……」それを確かめたくて、いやがる木川田くんを黙って引っ張って来ちゃったのかもしれません——散歩をする磯村くんは。
 磯村くんは三月の終りの日に、浅川の堤の上を歩いていました。もうすぐ新学期だしと思って。二ヵ月続いていたアルバイトも終りになっていました。�MIZUNO SPORTSの真理ちゃん�とは、どこか相性が合わなかったみたいだし……。「なんか、現実的な夢を見てる女の子ってあまりにも現実的じゃないし……」なんてことを、磯村くんは考えていました。
もう春で、冬の間にいた鳥は少しずつ数が減って行ったみたいで、枯葦の間からよく見えた小鴨の親子連れも今日は姿が見えません。向う岸を、ひょっとしたら最後の都鳥《ゆりかもめ》かもしれない白い一羽が、スッと弧を描いて飛んで行きました。
磯村くんは、なんだかそれを見ていると「向う岸に行ってみたいな」という気になって、いつもだと上流にトロトロと歩いて行くのをやめて、下流の新井橋の方に歩いて行きました。
橋のたもとから団地が始まっていて、四階建ての建て物が百メートルかひょっとして二百メートルぐらい、磯村くんのいる土手の右側に続いていました。「二メートルとか三メートルなら分るけど、百メートル以上になった途端にどうでもよくなるなァ」なんてことを磯村くんは思って�クスッ�と一人で笑いました。
あれっきり木川田くんからはなんの連絡もなくて、磯村くんは「どうしてるかなァ」と思うことはあっても、「もうどうでもいいや!!」と思うようなことはなくなっていました。
橋の上には道路が通っていて、よく磯村くんが利用する「ほっかほか弁当」の前の道路はここにつながっていたのか、なんて呑気なことを、磯村くんは考えていました。
 川の向うは磯村くんのやって来た側の土手の世界とはちょっと違って、古い農家や一戸建て住宅がポン、ポン、と存在する世界でした。
磯村くんは土手に立って、自分がやって来た反対側の堤を眺めました。
団地があって、小学校があって、電車区があって、その向うに八王子の大学に通じている山があって、山の上まで、白い建て売り住宅が点々とつながっていました。「こうやって見ると、僕の来た方って、とっても�近代�なんだなァ」って、磯村くんは思いました。川を挟んで近代と土着が向かい合ってるんだなんて悪いことを、考えていたのでした。
磯村くんが歩いている土手の上には蓬《よもぎ》やスギナが緑を作っていて、河原の枯れた葦の中にも、ボヤーンと淡い緑の芽が吹き出しているみたいでした。
橋を渡って、ちょうど向う岸で自分が土手に上ったぐらいのところまで来ると、磯村くんは「もういいか……」と思いました。「なんの為に来たのかなァ」とも思いましたが、行く手にある高幡橋まで歩いて行くのはちょっと骨だから「まァ戻るしかないや」と思って、磯村くんはもと来た道を引き返したのです。
橋にかかって、橋に近寄って、磯村くんは、「あ、そうか、こっちにだって道があるんだ」と、橋の向うの、下流の方へと続く川沿いの土手の道を覗きこみました。
 浅川の川原は結構広くって、百メートルぐらいあります。だから当然、下流へと向かう土手の上にだって楽々一車線以上の道が通っています。通っていますが、「ちょっと違うな」と磯村くんが思ったのは、その下流へと続く道には人気《ひとけ》がなかったことです。
そりゃ川沿いに団地が建っていたって、磯村くんの実家のある高円寺近辺と高幡不動とは全く違いますから、人の通りはどこでもそんなには多くありません。でも、その川沿いの淡い緑の中に霞む左側の道は、それよりもずっと静かだったのです。
 磯村くんは、「行ってみようかな?」と思いました。「どうせ暇だし」と。
磯村くんは知らなかったのですが、その先には高校があって、東京都の野犬管理所があって、衛生処理場があって、というようなところだったので、春休みの今は、殊更《ことさら》に�しーん�としていたのでした。
「行ってみよう」——磯村くんは信号のボタンを押して、横断歩道を渡りました。「つまんなかったら帰ってこ」と思って。
新井橋から下流の川原は、やはり枯葦が生い茂ってというところもありましたが、しかしなんだか分らないけど、牧草地みたいな感じで、黒い土の上に短い緑が点々と生えている土地がズーッと続いていました。川原というと白い石ころがゴロゴロゴロゴロ、まるでしゃれこうべみたいに転がっている所と思っていたのとは違って、こちらの方は同じ川原とは思えないような感じでした。
緑色の金網を張った高校があって、その先にもやはり公共の建物らしい白いコンクリートの塊りがありました。右を見ると、川をはさんで向う岸は、ズーッと日常的な住宅街です。
「今度は�日常�と�非日常�なのかな?」なんてことを磯村くんは思いました。
「あっちが日常で、こっちが非日常で」——金網越しに高校の校庭を見て、磯村くんはそんな風に思いました。ホントに誰もいない高校の校庭というのは、非日常的なものです。去年卒業したばかりの高校が、自分の中では「もうずい分遠くなってるな」と、磯村くんは思いました。そう思って、「でも、高校って、初めっから僕の中じゃ遠かったんだよね」なんてことを改めて思いました。
 だけど校門をぬけるとそこは�現実�で、足許を見りゃ分るサ、チマチマと自分の影があって、なんだってこのアスファルトの道は白々しくもこんなにガランとしてる訳?
 もうズーッと遠くて、高校って、僕にとっては初めっから非現実だったのかもしれないな。
磯村くんはそう思いました。
なんか、知らない高校の白い校庭が、妙に哀しいようなものに思えて来るようでした。
高校が非現実なら、大学はなんなの?
磯村くんは、もうそんなことなんて考えたくないような気がしました。
ともかく自分は大学生なんだし、そのことから逃げるのはやめようって、そう思いました。
 また新学期が始まって、また去年みたいになるのかな?
 去年と違うのは、僕はもうウブじゃないっていうことで……。そんなことを思って、磯村くんは、大学が始まったらみんなを下宿に呼ぼうなんて、そう思いました。別に僕一人が大学生じゃないんだしって。
麻雀やろうかな、とか。
磯村くんは不思議な人で、そんなことを考えると、ドンドン現実的になって行くのです。現実的なことを足がかりにした方が確実な考え方がドンドン膨れて行って、それで安心して行けるというタイプの人なのでした。
ホントはロマンチックなことが好きなのに。そういうことになると、ホントになり振り構わず子供っぽさをむき出しにして平気でヘマをやって喜んでいるくせに——。
「どうせ僕はリアリストさッ!」
誰もいない浅川の土手に立って、磯村くんは一人で思いました。
「これだって食べちゃうんだから」
そう思って磯村くんは、道端に生えている蓬をもぎ取って、目の前にかざして、パッと放しました。
緑色の蓬の葉っぱは川に吸いこまれるように、パラパラパラと、川原の方に落ちて行きました。
「あっちが非現実で、こっちが現実なんだ」
土手の上で、磯村くんはそう思いました。
 向う岸には建て売り住宅よりもうちょっと古い、普通の日本の家が何軒も建って町並を作り、こちら側では、まるで人のいない化学薬品工場のような東京都の建物が、薄黄色の雲がボァッと流れる空の下で、白いSFちっくなたたずまいを見せていました。
振り返ると、渡って来た新井橋はもう遠くて、今更引き返すのもおっくうだなァという気にさせました。
磯村くんは、まだ先の下流の方を見て、そこに大きな橋がぼやっとかかっているのを見つけました。
「あすこから渡って帰ろう」
 川の上ですから距離はよく分りませんが、それは少なく見つもっても一キロ以上先にある橋のようでした。
「どうせ暇だし。ひょっとしたらあそこは聖蹟桜ケ丘なのかな?」なんてことを思いましたが、「聖蹟桜ケ丘なら昨日までバイトをしてたSFだ」とか思って、「どうして現実と非現実の接点にはSFがあるのかなァ」なんていう高級なことを考えました。考えましたが「そんなことはただの遊びサ」と、冗談好きの論理派少年は一人で自己完結をしました。
 川は、下流に行くに従って水の量が増して行くようでした。土手のずっと下であることには変りがありませんけれども、枯葦の中を細々と流れていた水路は、もうここら辺に来たら立派に�川�で、とうとうと水音を立てて流れて行きました。
誰かが向う岸に立って自分を呼んでいるような気がふとしました。でも、向う岸では自転車に乗ったおばさんが一人、上流の高幡不動の駅の方へ行こうとしているだけでした。
「ああ、もう帰りたいな」
磯村くんはメンドくさくなってそう思いました。でも、後にある新井橋と、向うに見える�幻の橋�との間には、見渡せど見渡せど、橋が一本もないのです。
「やんなっちゃうなァ」と、さすがに自分のバカさに気がついた磯村くんは、少し汗ばんで来た額に手をやってそう呟《つぶや》きました。
「しょうがない、今日はオリエンだ」って、そう思いました。
別に走る気もなかったからジョギングでもなくクロスカントリーでもなく、磁石片手にウロウロするオリエンテーリングだと、磯村くんはそう思ったのです。
 でも磯村くんは、磁石は勿論、地図なんていうものも当然のことながら持ち合わせてはいませんでした。ただの散歩だって、そう思っていただけですから。
磯村くんは、歩いて行きました。川は、急に広くなって、突然海みたいな気がしました。都鳥《ゆりかもめ》が一羽、磯村くんの後からバサバサバサッという羽音を立てて、真っ直ぐに、その�海�へ向って飛んで行きました。
 そこは、海でした。
 多摩川の支流である浅川は突然そこでなくなって、それよりもズッと広い多摩川の流れに合流していました。
磯村くんがやって来た�川�は、そこではもうなくなっていたのです。
 磯村くんは、多摩川という�海�に突き出した、岬の突端に立っていました。
歩いて来た道はなくなり、そこから先は崖になって、多摩川の水の表面へと続いていました。
その先はないのです。
�幻の橋�は、永遠に辿り着けない橋でした。
 磯村くんの立っている両側で、二つの川は水音を立てて、磯村くんの行く先にある道を消していました。
「広いなァ……」
磯村くんは、突然自分の目の前に現われた広大な空間を見回して、ただそれだけを呟いていました。
 その夜に見た夢で、やはり磯村くんは、同じところに立っていました。
道はそこで途切れて、目の前には広大な空間があって、その先には大きな幻の橋がかかっていました。
そこまでは現実とおんなじで、でもそこから先が違うのは、下を見ると多摩川の川原には水がなく、まるで旱魃《かんばつ》にでもあったようにカラカラに干からびていたというそのことです。
磯村くんは、白い川原の代りに現われた茶褐色のひび割れを見て、「行けるかもしれないけど、でも行きたくないや——。だって、砂漠なんだもん」と、黙ってその橋を見つめていました。
空は曇っているのにもかかわらず雨は一滴も降りそうにありませんでした。
 そんな夢の外で、春の雨が連翹《れんぎよう》の花を濡らしているのなんて、磯村くんには知りようもないことです。雨音だけが遠くに聞こえました。
 春は四月に変ります。
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