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無花果少年と瓜売小僧76

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  76 磯村くんの頭は、一日に一つのことしか考えられない頭でした。もしも考えてどうにかなるというようなことだったら無理し
(单词翻译:双击或拖选)
 
  76
 磯村くんの頭は、一日に一つのことしか考えられない頭でした。
もしも考えてどうにかなるというようなことだったら無理しても一杯考えたでしょうが、考えてもどうにもならないことを考えるのは辛いので、一コのことを考えると、もう頭が疲れて真っ白になってしまうのです。
「ずーっと木川田のことをこわいと思ってたんだなァ……」ってことを発見した磯村くんは、ズーッと道路を歩いて行って、道を間違えてしまいました。真っ直ぐ行かなきゃいけないところを左に曲ってしまったもので——どちらかというと、左に曲る道が�真っ直ぐに行っている道�に見えたというせいもありますが——気がつくと、高幡不動の駅には着かず、高幡不動の駅を降りて右に行く、磯村くんのアパートとは正反対の方向にある、高幡不動のお不動様の前に出てしまいました。
「なんかヘンだなァ」と磯村くんは思いましたが、そのまんま道の続く方向に沿って、意味もなく歩き続けてしまいました。お不動様のところを右に折れてしまえばすぐに駅前に着いたのですが、頭が空っぽになっていた磯村くんはなんにも考えず、道の導くまんまに左の方へ行ってしまったのです。
気がつくと、ガソリンスタンドがあって、お腹が空《す》いていました。
そこら辺はガソリンスタンドしかなくて、他にはなんのお店もありませんでした。竹藪なんかあったってしょうがないし。
さすがにガソリンスタンドがものを食べさせてくれるお店ではないことぐらい磯村くんにも分りましたが、どうしたらいいのかは、よく分りませんでした。
ガソリンスタンドの先にある信号を渡ると、どういう訳か目の前に、橋が見える道路がありました。「ああ、橋なら川があるし、川ならもう近くだ」と、磯村くんは思いました。磯村くんのアパートは川のそばにあった訳ですし。
 その橋の方に続く道は上り坂になっていて、まるで、天に向って上って行くみたいでした。空がどんどん近くなって来て、「このまんま天国に行けちゃうんじゃないか」って磯村くんは思いましたが、結局、橋の上は橋でした。
 それは、磯村くんの住むアパートよりはズーッと上流にある高幡橋で、磯村くんの住むアパートに磯村くんが帰り着く為には、その橋を渡って、向う岸を川沿いに一キロメートルぐらい歩いて、そしてまた新井橋を渡り直して歩くっていう、とてつもなくメンドウくさいことをしなければなりませんでした。
そのことを考えると絶望的になって、とってもお腹が空いたのですが、辺りに食べ物屋さんはおろか、お店なんか一軒もありませんでした。ガソリンスタンドでガソリンを飲んでも生きて行けませんし。
磯村くんはお腹が空いたのですが、後に戻るのはいやでした。後に戻ったって結局おんなじぐらい歩かなきゃなんないし、第一、後に戻ったら、その間ズーッと、「どうして大学で飯喰って来なかったの? バカだなァ」って、来る道筋にズーッと落っことして来た�ちょっと前の自分�ていうのに言われ続けるに決ってると思ったからです。
「もう、今更バカに戻りたくないし」って磯村くんは思いました。
という訳で、ヘトヘトになって部屋に帰り着いた磯村くんは、頭とおんなじだけ体も空っぽになって、ちょうどいい按配《あんばい》にバランスをとって、そのまんま寝込んでしまいました。
バカですね。
 食欲が出れば少しだって考えは変ったのかもしれないのに。
磯村くんは、はずみがつかないと、そのまんまでどこまででも行ってしまう人だったのです。
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