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無花果少年と瓜売小僧79

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  79 電話が鳴りました。自分のことを「バーカ!」と思ってポカンとしていた磯村くんは「誰だろう?」と思いました。「ひょっ
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 電話が鳴りました。自分のことを「バーカ!」と思ってポカンとしていた磯村くんは「誰だろう?」と思いました。「ひょっとして頌子かもしれない」って磯村くんは思いました。「自分の正体がバレたもんだから、それでひょっとしたら脅かしに来るのかもしれない」なんて思いました。磯村くんは、木川田くんから電話がかかって来た時の竜崎頌子ちゃんのことを思ってました。「アレはフテてたに違いない」って。「だからその証拠に、僕が�どうするの?�って訊いたら�帰るわ�って言ったんだ」って、「ザマァミロ、正体はバレてんだぞ」って、なんかそんな風に磯村くんは思いました。
この時の磯村くんにとって、竜崎頌子ちゃんというのは、ほとんど人をとり殺そうとするナメクジの化け物でした。でも、磯村くんは知らなかったのですが、竜崎頌子ちゃんというのは、ただの普通の女の子だったというだけです。普通の女の子がそういうものだと、磯村くんが知らなかった、ただそれだけです。
電話が鳴りました。
「負けないぞ」と思って、磯村くんは受話器を取りました。
緊張していたので、少し声は嗄《か》れていました。
「はい、磯村です」
そしたら少し沈黙があって、「あたし、榊原です」って、向こうが言いました。
「誰だろ?」と思いました。聞いたことのない声で、ともかく竜崎頌子じゃないことだけは確かで、「誰だろ?」と思いました。
「誰だろ?」と思って、「最近会ったことがある」って思いました。思って、「�榊原�って誰だろ?」って思いました。
「�榊原�って誰だろ?」って思った途端、「ああ!」って分りました。
「ああ」って分っただけで、結局何が分ったのかさっぱり分りませんでした。
だから磯村くんは「ああ……」って言ったんです。
「ああ……」
そう言ったら、電話の向うで、誰かが笑ったようです。笑いながらなんか言っているようです。少なくとも、磯村くんにはそう思えました。
 榊原さんが言いました。
「ねェ、木川田くんといつから付き合ってんの?」
�ククククク……�って、その後に笑い声が続いてるみたいでした。�バカヤロ�と思って、磯村くんはホントのことを言いました。「別れたよ」って——。
「別れたよ」
そう言ったら、相手の方はカウンター・パンチを喰らったみたいでした。磯村くんはそう思いました。
そう思ったら磯村くんは、「自分は本当のことを言ったんだ」って、そう思いました——「別れたんだ」って。
「あ、そう。いつ別れたの?」って、榊原さんは言いました。
だから磯村くんはそのまんまスラスラとホントのことを言いました。
「昨日」って。
「�昨日�なんだ」って、磯村くんは思いました。「昨日木川田のこと考えてたから、だから�昨日�なんだ」って、磯村くんは思いました。「じゃァ、おとついはなんなんだ?」って、遂に磯村くんはそのことを思い出しました。
「昨日の前の日、僕は何してたんだろう」って、磯村くんは思いました。
 思ったら、考えることが忙しくなって、電話の向うでなんか訳の分んないことを言ってる女がうっとうしくなって来ました。
「別れたよ」「あ、そう。いつ別れたの?」「昨日」「あ、そう」
「だからなんだって言うんだよ!」——磯村くんは思いました。
「あたしはあなたが好きなのよ」
 榊原さんが笑ったみたいに磯村くんは思いました。それまでは誰だかよく分んない�女�だと思っていたのが突然、磯村くんは「榊原が�あたしはあなたが好きなのよ�って言った」と思いました。
それだけ分って、後はよく分りません。
 笑った筈の榊原玲奈が、急に「お悔み申し上げます」って言ったと、磯村くんは思いました。「あたしはあなたが好きなのよ。——それだけが言いたくて」って、榊原さんが言ったからです。
「バカにしやがって、お前なんかに関係ないだろ」って、磯村くんは思いました。「あ、そ」って言ったら、頭より先に手の方が考えてました。
受話器を置いて、「バカにしやがって、イタズラ電話なんてかけて来んなよ」って磯村くんは思いました。
そう思ってそのことにケリをつけて、「昨日の前の日、僕は何してたんだろう?」って、考えたいと思っていたことの続きを急いで考え始めようとしました。
「木川田から電話がかかって来て、�おいでよ�って言って、泊りに来て、僕が�帰っちゃヤだ�と思って�泊ってってよ�って言って」って、そこまで考えたら、磯村くんは�ゾーッ�としました。ホントに�ゾーッ�としました。
「今、何言った?」って。
「今、気持悪いヤツが来て、すごーく気持悪いこと言ってった……」って、磯村くんは思いました。
 すごーく気持悪い。すごーく気持悪い。
すごーく、すごーく……。
気持、悪い………………………。
�好き�って、そんなに気持悪いことなんだって、磯村くんは思いました。
思った瞬間、缶ビールは引っくり返って、ほんのちょっと残っていた中味は畳の上にこぼれました。
あわててティッシュペーパーを引っ張り出して、そこを拭いて、ビールの空き缶を燃えないゴミの袋の中に放りこみました。
ペタンと畳に坐りこんで、磯村くんは、「ホントに�好き�って、そんなに気持悪い言葉だったんだ」ってそう思いました。
 もう、磯村くんの頭の中を追っかけるのはやめましょう。磯村くんがどんなに�気持悪い�と思ってどんなに�バカだ�と思って、�バカだ��バカだ��バカだ�って思い続けたかなんていうことはどうでもいいことですから。
磯村くんは立ち上りたいから、悪いものを全部吐いてしまいたいと思ったという、ただそれだけのことですから。
 磯村くんは、自分が言われたように、木川田くんにも「好きだ」って自分は言うだろうなって思いました。それしか言いようがないから。
自分の中には�好きだ�っていう感情があってもそれがどういうことだか分らないから、きっと言うとなったらあんな風に言うしかないなって、そう思いました。
ニヤニヤ笑って気持悪く、そして怒りながら——。
「俺、木川田が好きだぜ、ヘッヘッヘ」——そんな言い方しか自分には出来ないな。そんな言い方をする時だけ、自分は本当に木川田くんのことを�好きだ�って思えるんだなって、磯村くんは思いました。
どうしてだろう? どうしてそんな風にしか言えないんだろう? それを考えても、磯村くんにはさっぱり分りませんでした。はっきりしてることは、木川田くんに言えるんだとしたらそんな言い方でだけでしか「好き」とは言えないっていう、そのことだけでした。
木川田くんが可哀想だったら、「僕、木川田のこと好きだよ」って磯村くんは言えたかもしれません。磯村くんは「言ってた」って思いました。
「木川田が可哀想だったら、平気で�木川田好きだよ�って言ってた」って。「僕は、慰めることだったら出来るんだ」って、磯村くんは思いました。「でも、好きなくせに、絶対に�好きだ�って言えない」って、磯村くんは思いました。顔をメチャクチャに崩して�ヘッヘッヘッ�と笑っている自分の顔を思って、磯村くんはもう死にそうでした。「どうして自分はそんな風にしか言えないんだろう」って。
「そんなに自分が大切なの?」って、磯村くんは思いました。
自分が可哀想でなりませんでした。
そんなにまでして自分を守らなくちゃならない自分の哀れさがたまりませんでした。
「だって、誰も僕のことを愛してなんかくれなかったんだもん」て、磯村くんは思いました。
 それだけだったんです。
 誰も、磯村くんのことを愛してくれなかったって——。
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