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無花果少年と瓜売小僧80

时间: 2020-01-31    进入日语论坛
核心提示:  80 お父さんは、磯村くんのことを避けてました。何故か知らないけど、磯村くんには分りました。お兄さんは、磯村くんのこと
(单词翻译:双击或拖选)
 
  80
 お父さんは、磯村くんのことを避けてました。
何故か知らないけど、磯村くんには分りました。
お兄さんは、磯村くんのことをいじめてました。何故か分らないけど、そう思いました。ホントは、扱い方が分らないでいただけなのかもしれないけど、でも磯村くんには、お兄さんが僕のことを愛してなくて、いつも僕のことをいじめてたとしか、思えませんでした。
お父さんがいてお兄さんがいて、その二人の男性と付き合っていたお母さんは、男性というのはそういうものだとばっかり思っていて、磯村くんのことを決して分ってくれようとはしませんでした。
磯村くんにはそのことがよく分りました。「だから自分は遠慮してたんだ」って、磯村くんはそう思いました。「僕って、お父さんやお兄さんとは違うんだよ」って言い出してお母さんを悲しませたくないって、磯村くんはズーッと思っていたのです。
何故か知らないけど、そういうこと言ったらお母さんは悲しむんだって、磯村くんはそう思っていました。
何故かは分りません。何故か分ろうとする前に磯村くんは、お母さんの思いこんでいるお父さんやお兄さんみたいな�男の人�になっていることで手が一杯でしたから。ともかくそうしていれば、三度三度の御飯にありつけて、飢え死にしないですむことだけは確実なんだって、磯村くんには分っていました。
ズーッとそうして来たから、磯村くんにはなんにも分らなかったんです。
だから、木川田くんがお父さんと喧嘩して出て来た時、磯村くんは「力になって上げられる」って思って、それで嬉しかったんです。「力になって上げられるし、これで僕も木川田もおんなじ風になれて嬉しい」って、一人暮しの磯村くんはそう思ったんです。
磯村くんは、木川田くんと力を合わせて一緒にやってけるかもしれないって思って、助け合って生きて行けるなんて嬉しいと思って、でも木川田くんがそうしてくれないから、辛かったんです。
木川田くんは木川田くんで生きてましたし、木川田くんは木川田くんで�愛されたい�と思ってましたし、磯村くんにはそのことがよく分ってましたから。
だから磯村くんは、木川田くんから距離を置いたんです。だって、一緒になんかやってくれないなんてことが分っちゃったらつらくてしようがないって、磯村くんには分っていましたから。
磯村くんは木川田くんに好かれたくて、でも木川田くんは絶対に、磯村くんのことなんか好いてくれないって分っていたから、つらかったんです。
 磯村くんはよく考えたら、初めっからそうでした。木川田くんと二人きりで歩いた、あの九月の長い夜から。
目を伏せた木川田くんの唇が近づいて来るのを、磯村くんは見ていたのです。
「我慢出来る」と思って、磯村くんは唇を寄せて来る木川田くんの目を見ていました。睫毛《まつげ》だけあって、その下では、木川田くんの目は、閉じてはいませんでした。
木川田くんは、どこか、磯村くんのいるところではないところを見ていて、磯村くんは、そんな自分に近づいて来る木川田くんを見ていて、二人に分れました。
一人は目をつぶって木川田くんの唇を受けている磯村くんで、もう一人はそれがこわくなって、磯村くんの背中からそっと抜け出した磯村くんで、二人の磯村くんはお互いに、決して、自分とはもう一人余分の自分がいるなんてことを認めようとはしませんでした。
磯村くんは、そんなぼんやりした二人の自分の間に漂っていて、「誰か助けに来てくれないかなァ……」って、そんな風に思ってました。思ってましたけどでも、「自分は木川田から逃げてるんだから、そんなこと思っちゃいけないんだよね」って、そういう風に思ってました。自分よりも可哀想な木川田くんを助けて上げなくちゃ自分は誰からも助けてもらえないって。
 磯村くんはいつも、いいことをしてごほうびを貰うことだけを待っている優等生でした。優等生をやっているのは大変だから、だから自分からはなんにもしないんだって、そういう風に不貞腐《ふてくさ》れていたのでした。
でも、そんな磯村くんになんかしてくれる誰かがいるかどうかなんて、誰にも分りません。分らないから磯村くんは「絶対平気(多分)」って、タカをくくっていられたのです。
磯村くんを愛してくれた人は一人しかいませんでした。それは、インディアンの女酋長と牧場の牝牛が一緒になったみたいな、あのカナエちゃんでした。
カナエちゃんはとってもぶっきらぼうでズケズケしてましたが、磯村くんのことを愛してくれてました。磯村くんは、そのことをよく知ってました。
よく知ってましたけど、気のいいカナエちゃんとセックスしかしなかった磯村くんは、愛してもらえるっていうことがどれだけすごいことかよく分んなかったんです。磯村くんの知ってる�セックス�っていうのは、どうもそういうもんではなかったようだったからです。
 一体、セックスってなんなんでしょうね?
 よく分りません。
結局、木川田くんと一遍もセックスなんかしなかった磯村くんは「どうしてなんだろう?」って考えました。
考えて答の出ることなら考えてもトクになるかもしれませんが、その磯村くんの考えはどうもそうではなさそうでした。だって、磯村くんはまだ一遍も人を愛したことがなかったからです。
子供の時間が過ぎて、一人で小さな箱の中から出て行った磯村くんは、その箱の外があまりにも広すぎて「ただ広いなァ……」と言うしかなかったからです。
きっと、誰かが手を差し伸べてくれるんだ、そしたら僕だってきっとその人を愛して上げることが出来るんだって思っていた磯村くんは、その差し伸べられる手が実は色んなところから色んな風に出て来るんだっていうことを知らなかったんですね。そして、差し伸べてくれる、その相手の方だって、色々こわいから、出したり引っこめたりしてるんだってことに気がつけなかったんですね。自分だって実はそんな風にしてるのに。
手を差し伸べて、すぐ引っこめて、「ああ、気がついてもらえない」って、一々律義に傷ついていた磯村くんは、一遍ですべてが解決しちゃうって思ってたんですね。だから、その一遍で解決出来ない自分が情なくて、つらかったんですね。
木川田くんをこわがっていた磯村くんは、実は、木川田くんになんにもすることが出来ない自分の、そのだらしなさやみっともなさを見つめるのをこわがっていただけなんですね。
 磯村くんは、木川田くんのことを考えていました。「どうしてあんなに木川田は、僕に向って�磯村、俺のこと好き?�って言ってたんだろう?」って。「どうしてあんなに木川田は、�俺、磯村のこと好き�って言ってたんだろう」って。
そんな風に言ってくれた木川田くんに何をして上げられたんだろうって。
磯村くんは、木川田くんがちょっとずつしか�好き�って言えない人だっていうことに気がついてたんです。
「木川田は�好き�って言ってくれたけど、僕は、いつもそれをごまかす為にしか�好き�って言えなかった」って。
磯村くんは、自分が最後に木川田くんになんて言ったのか、思い出すことが出来ませんでした。そんなひどいこと思い出したら僕もうなんにも出来なくなっちゃうって、磯村くんはそう思ってました。

青《わか》い春は終りました。都鳥《ゆりかもめ》はもういなくなって、いつまでも降る雨の中に、すばしっこいツバメが滑るように飛んで行きました。
アパートの裏の、川の見える土手に立って、磯村くんは「濡れちゃうなァ」って思っていました。
 目の前の川原にはもう稚《わか》いとはいえない青い葦が茂って、水はとうとうと流れていました。
「あの橋を渡って、あの向う岸の土手を歩いて、ズーッとどこまでも歩いて行ったらまた�あの橋�が見えるんだけどな」って、雨の中で傘を差した磯村くんは、団地の向こうの新井橋の方を眺めていました。
「あの二つの川が一つになって�海�になっているところが見たいんだけどな」と思って、「でも、あそこまで行ったら濡れちゃうし」って、磯村くんは思ってました。
「ロマンチックやりに行くのかバカやりに行くのか分んないし」って。
「雨が降ってたら泣けるかもしれないなァ」って、およそ、泣くことの下手な磯村くんはそんな風に思ってました。
六月の緑の中で、雨だけが降っている、そんな梅雨の日でした。
「学校もないし、することもないし、一人でなにかを慰めよう」と思って、磯村くんは、川の堤に立っていました。
「いないのかなァ?」そう思って木川田くんは、磯村くんのところにかけた電話を切りました。
 だから大丈夫って言ったのに——。
「源一、あんた出掛けるところがなかったら留守番しててね」
そう言って木川田くんのお母さんは、廊下の電話のところに立っている源一くんに言いました。
「いいよォ、どこ行くのォ」
木川田くんが言いました。
「ちょっと、お芝居の切符もらっちゃってサァ」
「ふーん、いいよォ」
「また後で電話してみよう」と木川田くんは思って、お母さんにそう言いました。
木川田くんは天使で、磯村くんが何を考えているかなんて、ちっとも知ろうとはしませんでした。
「あーあ、僕ってやっぱりダメなのかなァ」
雨の中で磯村くんが呟《つぶや》きました。「お腹空《す》いちゃったァ」とか。
 身も蓋もない終り方ですいませんが、「ウチの子に限って大丈夫さ」って、どこかで誰かが言ってました。
「そうかな」って、それを聞いた磯村くんなら言ったでしょう。でも、「決ってるじゃん」て、木川田くんなら言ったでしょう。
相変らず�よく分んない�磯村くんだったのです。
「あーあ、腹減った」と言って、木川田くんは冷蔵庫を開けました。
「ねェ、ちょっとどうォ? あんたの作ってくれたこのワンピース?」
木川田くんのお母さんが、おっそろしく派手なワンピースを着て出て来ました。
初めっから「こりゃだめだ」と思っていた木川田くんは、でも、とっても心のやさしい子だったので、「あ、いいじゃん」と、無責任なことを言いました。
「似合うか似合わないか分んない人間て一杯いるんだなァ」って、木川田くんは思いました。「もっと勉強しなきゃ」って。
 バカなことをやっていた磯村くんは、知ってか知らずか、�クシュン�とくしゃみを一つしました。
ツバメがまた一羽通りすぎて、一体ツバメは鳴くのでしょうか?
「よく分らないな」と、磯村くんは思いました。
「そんならそれでいいじゃないか!」——そう神様が言ったことなど、磯村くんは全然知りませんでした。知らなくっても大丈夫だっていうのは何故かというと、その時に磯村くんは自分で、「そんならそれでもいいことにしよう」と思ったからです。
 磯村くんはまだ、木川田くんに電話をすることが出来ませんでした。しようと思うと、「自分はなんかひどいことを言ったんだよねェ」と思って、「それがバレたらあのお母さん、きっと、花笠踊りで刀持って怒るなァ」なんて、訳の分らないことを考えていたからです。
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