ことわざに、
「始め半分」
というのがある。物事は始めさえしっかりしていれば、もう半分は仕遂げたようなものだ——といった意味である。
東京新聞の日曜版など数紙に五年にわたって連載した「新ことわざ百科」や雑誌『さんぽみち』『Something』その他に書いたものを全面的に書き直し、あいうえお順に並べて一冊を編むに当たり、
「さて、題名をどうしよう?」
と、頭を悩ました。題名が決まれば、それこそ「始め半分」の半分くらいは仕上がったようなものだからだ。
すると、装幀の菊地信義さんがクスリと笑って、
「たとえば『ことわざ雨彦流』というのは、どうですか?」
と言ってくださった。言っちゃナンだが、これでキマリである。
この本は、コラムでもなければ、エッセイでもない。まして読みものでも「ことわざの解説書」でもない。そのくせ、その全部を兼ね備えている。そういう本に、この題名はいかにもピッタリではないか。
「話半分」
という。真実半分でもあるわけだ。この文章を書くに際しては、つとめて真実半分であるように心がけた。