「相逢った時のよろこびは、つかのまに消えるものだけれども、別離の傷心は深く、私たちは常に惜別の情の中に生きているといっても過言ではあるまい」
と言ったのは、太宰治だ。絶筆となった小説『グッド・バイ』の作者の言葉の一節である。新聞や週刊誌に、
「増える妻の離婚宣言」
「流行? 妻からの三下り半」
といった見出しが並ぶもんだから、つい、その気になってしまった女性がいる。彼女、どうやら流行にはヨワいみたいだ。
理由は、性格の不一致でも、人生観の相違でも、なんでもいい。わたしなんぞは「夫婦で性格が一致していたら、キモチわるい。性格が一致していないから、夫婦でいられるんじゃないか」と思っているほうだが、ご当人は「性格の不一致っていうと、別れるのに、なにか問答無用みたいなところがあるでしょ?そこが気に入ってんだ」ということだった。
要するに、なにがなんでも離婚したいらしいのである。失礼ながら、亭主こそ�いい面の皮�だろう。
そこで、
「そんなに別れたかったら、はじめっから結婚なんかしなきゃよかったのに……」
と言ったら、笑われた。
「バカねぇ、結婚しなきゃ、離婚できないじゃないの!」