古歌に、
秋なすび早酒《わささ》の粕につきまぜて棚に置くとも嫁に食はすな
というのがあるそうな。訳せば「せっかくの秋茄子を、嫁に食われてなるものか。ひとまず新酒の粕に漬けて、棚の上にでも置いておこう」といったところか。
これが「秋茄子嫁に食わすな」ということわざの典拠だ——といわれている。ただし、この場合の嫁は、嫁が君、すなわちネズミのことである。
それが、いつのまにか、嫁、すなわち息子の細君のことになっている。この国の嫁と姑の関係が目にみえるようだ。
もっともらしく、
「身体を冷やして毒だから」
「種子《たね》が少なく、子種が減ると困るから」
と言う人もいるが、ホンネは、やはり、
「こんなにうまいのだから」
といったところだろう。母親にとって、息子の細君はそれほど憎いものらしい。
それにしても、
「身体を冷やして毒だから」
「種子が少なく、子種が減ると困るから」
とは、言いも言ったり。こういうのをオタメゴカシと称するのではなかろうか。
皆川白陀というひとの句に、
秋茄子や邪魔にされつつ婆達者
いいねぇ!