おカネにかんすることわざでは、
「有りそうで無いのが金 無さそうで有るのも金」
というのが好きである。言っちゃナンだが、これなら、わたしも安心してつましく[#「つましく」に傍点]身を処することができる。
根が貧乏性だから、貧乏であることは一向に苦にならない。それは、まあ、たまたま金持ちではないだけのことであって、いわば天の配剤である。
しかし、貧乏ったらしいのだけは、ゴメンだ。歌の文句に、
※[#歌記号、unicode303d]ボロは着てても 心は錦
というのがあるから言うわけじゃないが、
「出すのは、舌を出すのも惜しい」
といった生活には、耐えられぬ。
えてして金持ちは、ケチらしい。幸せなことに、こっちはケチになれるほど金持ちじゃないから、舌ぐらいなら、二枚でも三枚でも出してみせる。
それにしても、
「有りそうで無いのが金 無さそうで有るのも金」
ということわざは、時と場合によっては、
「有りそうで無いのが金 無さそうで有るのが借金」
と言い換えられるので、やりにくい。そういうときは、仕方がないから「借金も財産のうち」と居直るか……。