「イッスンの虫にも」
というのを「チョットの虫にも」と読んでしまったばっかりに、笑われた男がいる。メートル法で言うなら、
「約三・〇三センチの虫にも約一・五一五センチの魂」
といったところか。
「一寸の虫にも五分の魂」
ということわざは、
「どんなに小さく弱い者でも、それなりの思慮や根性を持っているものだ」
という意味である。
東大名誉教授だった金子武雄さんが『日本のことわざ』に「この諺は、二様の意味に用いられているようである」と書いている。すなわち「一寸の虫にも五分の魂があるのだ」という認識の上に立ちながらも、
「(1) ましてや人間ならば、たといどんな小さな存在であっても、それ相応の魂をもっているものだ。
という意にも用いられるし、また、
(2) ましてや人間ならば、たといどんなに小さな存在であっても、それ相応の魂をもっていなければならない。
という意にも用いられる」
というのである。
いっぽうは「人間においての事実の指摘」で、いっぽうは「人間においての理想の強調」なんだそうだ。いやあ、ムズカシいもんである。