タバコの箱に、
「健康のため吸いすぎに注意しましょう」
と書いてあるのが、おかしい。タバコに限らず、酒だって、ゴチソウだって、あれだって、すぎれば健康にいいはずはない。
愛煙家に、
「タバコは健康に悪いからやめたほうがいい」
と言うのも、余計なお世話だろう。彼らは、タバコが体に悪いのを百も承知で吸っているのだ。
「体に悪い」
ということであれば、わたしにとって体にいちばん悪いのは仕事である。が、誰もわたしに、
「仕事は健康に悪いから、やめたほうがいい」
とは言ってくれない。もちろん、女房が言うはずもない。
ことわざにも、
「命あっての物種」
と言うではないか。どんなに仕事が大切かは知らないが、体をこわしてまでやったところで、なんにもならない。
わたしの仕事は、原稿を書くことだ。ときに気の進まない原稿を書かなければならないこともあるけれど、そんなときは、呪文《じゆもん》のように、
「原稿より健康だ」
と嘯《うそぶ》いている。
いや、やっぱり健康より原稿かな?