「生まれ変わったら、もういちど現在の奥さんと結婚したいと思っていますか?」
と訊かれて、
「そんなの、愚問だ。誰だってタテマエはイエス、ホンネはノーにキマッテル」
と胸を張った男がいる。質問者がシラけて、
「いえ、だから、一般論じゃなくて、あなたのことを訊いているんです」
と言ったら、彼、細君の顔を見て、
「オレ? オレは、もちろん、イエスです」
さて、生まれ変わったら、果たして彼がもういちど現在の細君と結婚するか、どうか?
ま、こいつは「言わぬが花」だろう。なにごとも、ハッキリさせなきゃならない義理はない。
いつだったか、討論会に臨んだら、会場に、
「ホンネで語ろう!」
という垂れ幕が下がっているのをみつけ、思わず、
「こりゃあ、スゴいタテマエだ」
と口走ってヒンシュクを買ったことがある。
あ、これも言わないほうがよかったかも知れませんね。
「言わぬが花」
ということわざは、
「言わないところに味がある」
といったような意味だろう。あの『源氏物語』にも、
「言わぬは言うにまさる」
ということわざが出てくるそうな。