「素質か教育か」
というので、ひどく悩んだ友人がいる。彼の経営する専門学校に、いわゆる進学校からの生徒がまぎれこんできたのだが、この子がまた、とてもよくできたのだ。
いまでこそ専門学校はそれぞれに特色をみせているけれど、スタートした当初は、なんとなく�大学にも短大にも行けない子供たちが、職業的な技術を身につけるために通う学校�といった印象が強かった。そこへ、家庭の事情とやらで、進学校出身のガリ勉クンが入ってきた。そうしてモーレツぶりを発揮し、たちまちのうちにいくつかの国家試験にもパスしたのだ。
「やっぱり進学校の子供はちがうのかなあ」
というのが、わが専門学校の校長の言葉であった。彼の疑問は、言ってみれば、
「氏か育ちか」
といったところであろう。
ことわざに、
「氏より育ち」
というのがある。これは「血統よりも境遇の影響のほうが大きい。素性のよさよりも育ち方のよいことのほうが大切である」という意味だ。
わがガリ勉クンも、なまじ普通の大学に進んでいたら、あんなに頑張らなかったかも知れない。そういう意味で、たしかに環境がモノを言ったような気がしている。