言いも言ったり! 自分の顔を指さして、
「この顔が嘘をついている顔に見えますか」
だって……。
ホント、その場に居合わせたら、思わず「見えます」と叫んでいたにちがいない。
それでも選挙に勝ってしまったんだから、中曾根さんはエラかった。わたくし、これは、
「私は嘘を申しません」
という、あの池田さんの言葉に匹敵する名セリフだと思う。
されば、
「私は嘘つきだ」
と言うのが、いいかどうか。以下、雑学博士・増原良彦さんからの受け売りである。
もし、そう言った人が「嘘つきじゃなかった」としよう。すると、彼が「私は嘘つきだ」と言ったことはホントなんだから、彼が「嘘つきじゃなかった」ということは成立しなくなる。
もし、そう言った人が「嘘つきだった」としよう。すると、彼が「私は嘘つきだ」と言ったことはウソなんだから、彼が「嘘つきだった」ということも成立しなくなってしまう。
こんなふうに考えてくると、ワケがわからなくなってしまう。人間、ときに嘘をついたり、ホントのことを言ったりするから、人間なのだろう。
嘘の世の中[#「嘘の世の中」に傍点]。この世は嘘だらけだが、なかにはホントのこともあるから、ややこしい。