「叱《おこ》りゃふくれる。撲《どづ》きゃ泣く。殺せば夜中に化けて出る」
というんだそうな。男にとって、女ほど始末に悪いものはない。
——といったところで、これは、わたしが言ったわけじゃない。わたしは、そう言われて、ただただ「そんなものかなあ」と感心しているだけのことである。
それでも、男は女の色香に迷う。それも、性懲りなく迷うのである。どこかの誰かが、
ワカッチャイルケド ヤメラレナイ
と言っていたけれど、まさにそんな境地だ。
「女の情けに蛇が住む」
ということわざは、
「女の情愛は蛇のように執念深く、深入りすれば恐ろしいものだ」
という意味である。女のひとに言わせれば、
「ナニイッテルノヨ」
ということになるかも知れぬ。
俗に、
「蛇蝎《だかつ》のごとく」
というように、ヘビやサソリは人に嫌われる。サソリには毒があるから嫌われるのはわかるが、
「毒があるとは限らないヘビが嫌われるのは、なぜだろう?」
ナンテ考えだしたら、もう、あぶない。完全に蛇に、いや、女の情念に魅入られている証拠である。