日ごろから、
「万年筆と女房は、絶対に貸さない」
と言い張っている。うっかり他人に貸して、ヘンなクセをつけられたら困るからである。
この世には、貸していいものと、いけないものがある。傘やチョウチンなどは、貸してはならないものの典型だろう。
傘は急に雨が降り出したから借りてきたわけだが、返しにいくときは、たいがい晴れている。いい天気なのに、ひとり傘を持って歩くのはテレくさくて、つい返しそびれてしまう。チョウチンも、夜道が暗いから借りてきたのである。だけど、返しにいくときは、昼日中だ。外が明るいのに、チョウチンを下げて歩くのは、気がひける。
そんなわけで、傘やチョウチンを貸すときは、くれてやるぐらいのつもりで貸したほうがいい。だいたいが、モノを貸して返してもらおうなんて了見がまちがっている……。
そういうことであれば、おカネや本も同じだ。おカネや本も、借りていくときはニコニコ顔だが、久しぶりに会って、
「返してくれないか」
と言おうものなら、たちまち険悪な顔になる。それで、せっかくの友情にヒビが入る。
誰だ? 万年筆はともかく「女房のほうは、返すつもりがなかったら貸してもいい」ナンテ言っているのは! そういうことは、腹で思っても口に出すものではない。
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