風が吹くと、なぜ桶屋が儲かるか?
——風が吹けば、砂ボコリが立つ。砂ボコリが立てば、ホコリが目に入って、目の不自由な人が増える。目の不自由な人が増えれば、三味線を習う人が増える。三味線を習う人が増えれば、三味線がよく売れ、猫の皮が不足し、多くの猫が殺される。猫が殺されれば鼠が増え、鼠はおおっぴらに桶をかじるので、桶屋の注文が増え、
「桶屋が儲かる」
というわけだ。
「大風が吹けば桶屋が喜ぶ」
ともいうが、
「風が吹けば桶屋が儲かる」
ということわざは、思いがけないところに影響が出てくることのたとえだ。同時に、
「ひょんなことをアテにしてはいけない」
といった教訓にもなる。
白状すると、わたしは、このことわざの�由《よ》って来たる所�を十返舎一九の『東海道中膝栗毛』を読んで知ったのだ。例の弥次さん喜多さんの物語である。
一九の『東海道中膝栗毛』には、なんでも出てくる。湯がわくのではなくて「水がわく」ことも、飯をたくのではなくて「米をたく」ことも出てくるから、スゴい。
なに、わからないって! いやだなア、湯がわいたら蒸気になってしまうだろうし、飯をたいたらカユになってしまうだろうに……。