カゼをひいて寝込んじゃった奥さんに向かって、
「こうこうこうすればカゼをひくことがわかっているのに、こうこうこうしてカゼをひいたのは、きみがカゼをひきたかっただけのことだ。べつに同情するほどのこともない」
と言い放った男がいる。とくに名を秘すが、わたしの友人である。
失礼ながら「冷たい奴だなあ」と思う。同時に「理屈だなあ」とも思う。コトの是非はともかく、わたしも、いちど女房に向かってこれくらいのことを言ってみたい。ウソでもこんなことが言えたら、さぞかし胸がスッとするだろう。
カゼについては、
「どんなに重いカゼでも、一週間あれば治してみせる。その代わり、どんなに軽いカゼでも、治すのに七日間はかかる」
と、医者が言った——という話が好きだ。たしかダレル・ハフの『統計でウソをつく法』(高木秀玄訳、講談社ブルーバックス)に出ていた。
カゼに二種あり。流行性感冒と風邪《ふうじや》だ。流行性感冒はヴィールスがもたらすが、風邪のほうは過労が原因のことが多い。
「風邪は万病のもと」
という、このことわざは、過労を戒めているのだろう。過労には、寝るのがいちばん。そこで、
「過労は寝て絶て」