金物屋の息子だから、
「カネは売るほどある」
というのが、バカの一つ覚えみたいな、わたしの自己紹介だ。もちろん、サツはない。
「金がかたき」
ということわざには、
「人は、金銭のために悩まされ、苦しめられる。まるで金はかたきみたいだ」
といった意味もあれば、
「金は、尋ねるかたきのように、なかなかめぐりあえない。金を得るのは、いかにむずかしいことであるか」
といった意味もある。わたしなんぞは、たとえ悩まされ、苦しめられても、なんとかして(できればラクして)金を得たいくちだ。
金がないばっかりに、食事を抜いたこともある。金がないばっかりに、デートを諦めたこともある。金がないばっかりに、線路を歩いて帰ったこともある。
「金がものを言う」
とも言う。この世は、言葉や理屈で解決できないことでも、金があればナンとかなるみたいだ。マゴマゴすると、恋しい女まで金持ちに奪われてしまう。女にしてみれば、金のない奴よりは、ある奴のほうがいいだろう。
そこで、
「世の中は、金と女がかたきなり」
と嘆いた御仁がいる。そうして、
「早くかたきにめぐりあいたい」