——与太郎が昼間っからゴロゴロしている。横町のゴ隠居がそれを叱って、
ゴ隠居「いい若いもんがなんだ! 起きて、働いたらどうだ?」
与太郎「働くと、どうなるんで?」
ゴ隠居「働けば、おカネがもらえるじゃないか」
与太郎「おカネがもらえると、どうなるんで?」
ゴ隠居「金持ちになれるじゃないか」
与太郎「金持ちになると、どうなるんで?」
ゴ隠居「金持ちになれば、つまり、寝て暮らせるじゃないか」
すると、与太郎のいわく、
「なら、もう寝て暮らしてます」
ちかごろ、こんなバカッ話がしきりに思い出される。たぶん、働きすぎて、いささか疲れてきたのだろう。働いても働いても、あんまり暮らしがラクにならないせいでもある。
「こんなことなら、いっそ怠けて、寝ててやろうか」
とも思うが、それもできない。落語の与太郎サンとちがって、貧乏性なのである。
でも、
「果報は寝て待て」
ということわざだって、与太郎みたいに「ただ寝て待てばいい」という意味ではなかろう。そこには「人事を尽くしたうえで」という意味が隠されているはずである。